インパクトだけじゃない!ハリボー「ゴールドベア」の子どもの声に秘められたメッセージ

2021.05.31

ハリボー新CMに出演いたしました!HARIBO TVCM お相撲さんドットコム

今年になって放送されたテレビCMの中で、ひときわ「おもしろい!」という声が多かったのが、ハリボー『ゴールドベア』だろう。

4人の巨漢力士がゴールドベアを手に、

「あっ、ラズベリーある!」

「ハリボーってプニプニ」

と楽しそうにキャッキャしている、一度見たら忘れられないCMだ。

しかも力士たちの声が、小さな子どもの声だから、さらにインパクトは大。気になっていた人も多いのではないか。

ちなみにハリボーは、昨年創業100周年を迎えたドイツのお菓子メーカーで、なんと世界で初めてグミを開発した、世界最大のグミ製造会社。同社のグミが日本で販売され始めたのは1985年頃のこと。しかし、日本でのテレビCMは、これが初となる。

販売開始から35年以上がたった今、なぜテレビCMに進出したのか。この攻めた内容の理由は? 同社の日本カントリーマネージャーのポール・クラフトさん、CMを企画制作したビーコンコミュニケーションズの岡田浩二さんに話を伺った。

--放送後の反響はいかがでしたか。

ポール「視聴者のリアクションはすごく良かったですね」

岡田「オンエアの初日から『おもしろい』『かわいい』『癒やされる』といった反響をいただき、手応えを感じました。あと素直に『食べたい』や『買いに行きたくなった』などの声もいただいて、CM本来の目的が届いていたんだなと、非常にうれしかったです」

--なぜ今、日本でCMを放送することに?

ポール「おかげさまでハリボーのグミは、ソニープラザやKALDIなどの輸入食品取扱店から始まり、今ではどこのコンビニやスーパーでも買えるほど日本に浸透しています。販売から35年がたち、もっと幅広い層に知っていただくために、日本でもテレビCMを放送することにしました」

--さらに日本での人気を確実にしようという感じですね。

ポール「もっともっとたくさんの方に食べていただきたいです」

--出演されているのは本物の元力士だそうですが、なぜこのような内容に?

ポール「もともとハリボーは、世界中で“子どものような気持ちになろう”と呼びかける“キッズボイスキャンペーン”をおこなっていて、同様のテレビCMをドイツをはじめ、アメリカ、イギリス、ニュージーランド、チェコ、トルコなどでオンエアしています。このCMはその日本版なのです」

--ちなみに他の国のCMはどんな内容なんでしょう。

ポール「他の国のCMについては私もあまり詳しくありませんが、例えばニュージランドではラグビーチーム、チェコではアイスホッケーのチーム、アメリカでは会社の役員会議といったところが舞台になっています。どれも基本的には、その国を象徴するもので、出演者の声も子どもに差し替えられています」

--CMをつくる前から子どもの声になることは決まっていたんですね。

ポール「その通りです」

--出演者が力士になったのは?

岡田「製作にあたってまず考えたのは、どうすればインパクトがあり、日本らしさが出せるか、ということでした。その中で出てきたのが力士と相撲部屋という設定です。日本文化を象徴するものですし、大きな力士と小さなグミというギャップもおもしろいのではないかと思いました」
©ytv
出演は4人とも本物の元力士
--ご出演が本物の元力士というのは、こだわったポイントですか。

岡田「そうですね。できるだけリアルにしたいという点は重要視していて、撮影場所もセットではなく、本物の相撲部屋をお借りしました。4人が座っている手前には本物の土俵があります」

--撮影で苦労されたことはありましたか。

岡田「このCMはもともとつくり方が特殊で、先に子どもたちの声をレコーディングしてるんですね。そして、その中からこちらで言葉をピックアップして、ストーリーを構築し、その声に合わせて演技をしてもらっているんです」

--子どもたちに台本を渡して、先にセリフを録音したということですか。

岡田「いえ、台本ではありません。例えば『ハリボーのどんなところが好きか』とか『最近、学校で何が流行っているか』など、子どもたちにランダムに質問して、とにかく言葉を集めていきました。2日間にわたって、何10組の子どもたちに質問しましたので、録った声はかなりの量になります」

--ということは、CMでは4人以上の子どもの声が使われているんですか。

岡田「そうですね」

--それは全然気づきませんでした。見直してみます。

岡田「ですから、表情だけでなく、リップシンク(声と唇の動きを合わせること)が上手くいかないと、おもしろくなりません。元力士の方を中心に、表情豊かで、柔軟な方をオーディションで選んでいきました」

--ちなみに特に苦労された言葉はどれですか。

岡田「う~ん、あえて言えば『ジューシーです』ですが、逆に簡単な言葉はひとつもなかったです」
©ytv
「ジューシーです」を担当したのは、元幕内力士のニコライさん
--それだけ大変な撮影だったわけですね。最後にハリボーさんがCMで大事にしていることを教えてください。

ポール「もちろん、インパクトは大事ですが、それと同時にちゃんとメッセージが伝わることが重要です。ハリボーが伝えたいのは“チャイルド・ライク・ハピネス”(直訳で子どもらしい幸せの意)。このメッセージが伝わっていれば、このCMは成功だと思います」

【取材・文:井出 尚志】
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