店頭でも宅配でも入手困難に…「Yakult(ヤクルト)1000」、「Y1000」CMがヒットに与えた影響

2022.08.10

ヤクルトから発売されている乳酸菌飲料「Yakult1000」、「Y1000」が大きな話題だ。「Yakult1000」は宅配によって購入できるほか、スーパーやコンビニなどでも店舗向けの「Y1000」が販売されているが、あまりの人気ぶりに「Y1000」は入手困難な状況。宅配向けの「Yakult1000」でも注文が相次いだことにより、新規の申し込みは停止中だ(2022年7月14日現在)。

【ヤクルト公式】Yakult1000「辻󠄀井伸行:追求」篇30秒

そんな「Yakult1000」、「Y1000」のテレビCMは、ヤクルトの家庭的なイメージの中ではかなり異色な作品となっている。例えば「追及」篇と題したシリーズでは、ピアニストの辻井伸行さんが出演。音楽についての想いを語る辻󠄀井さんとピアノを演奏するシーンで構成されており、CMの前半ではYakult1000にはまったく触れない。そして商品が登場するのは最後のほんの一瞬だけ。CMというより、辻󠄀井さん自身のドキュメント番組のような構成なのだ。
そこで今回はこのCMに注目。ヤクルト本社広告部の久松一正さんに伺った。

--ヤクルトといえばどちらかというと大泉洋さんが出演している家庭的で楽しいCMのイメージが強いですよね。Yakult1000、Y1000ではまったく違うアプローチですが、その狙いは?

「Yakult1000、Y1000はストレス緩和と睡眠の質向上の機能を持つ、今までにないエビデンスに基づいた新規性の高い商品です。当社にヤクルトという名を冠した商品はたくさんありますが、その中で個性をどうやったら立たせられるか? それには、今までとは打ち出し方を変える必要があると考えました」

--あえて商品名を全面に押し出さないことで、個性を立たせたということでしょうか?

「Yakult1000、Y1000のターゲット層は30代から50代のビジネスパーソンですので、ビジネスパーソンの方々にとって見応えのあるコンテンツを作ることを意識しました。いかにも広告と感じるようなCMでは、観ていただけない現実もあります」
Yakult1000が登場するのは最後のこのシーンのみ!
--シリーズのCMに出演されているのは辻井伸行さんほか、MISIAさん、蜷川実花さん、貴景勝さんなど。皆さん一流のプロフェッショナルの方々ですが、人選の基準はありますか?

「一番のポイントは“今もチャレンジし続けている人”です。成功しただけではなく、現在も切磋琢磨している。そんな一流のプロフェッショナルの方々が今何を考えて、何をしたいのか? それを表現する作品として成立させたいというこだわりはありました。メインとなるのは商品ではなく、あくまでも出演者のチャレンジ。Yakult1000、Y1000はそれをサポートするという構図をつくるのが狙いでした」

--現在Yakult1000、Y1000は入手困難なほどに大ヒットとなりました。この結果は予想していましたか?

「正直、これほどの大反響は想定以上でした。一時期は我々社員でも手に入らなかったほどでしたが、現在急ピッチで生産体制を整えているところです。店頭向けのY1000に関しては7月と、年内にもう一度増産体制を整える計画です。宅配向けのYakult1000に関しましても秋に向けて増産体制を整える計画をしておりますので、しばしお待ちいただければと思います」

--商品も大ヒットし、結果的にこのCMの狙いは成功といっていいでしょうか?

「そうですね。認知度の高いタレントさんを起用したCMと比べると、今回のような各分野のプロフェッショナルを起用したテレビCMのリーチ効率は決して高くはありません。しかし各出演者を知る人にとっては、たとえ1回のCM接触であったとしてもインパクトは大きいはず。数多くの出演者とテレビCMで地道に少しずつ商品認知と購入意向を引き上げていったことが、現在のヒットにつながったと考えています」

--今回のCMではそれぞれの方の仕事風景が描かれていますが、撮影はどのように行われたのでしょうか?

「リアリティを重要視していますので、基本その人が作業している現場にお邪魔する形で撮影しています。辻󠄀井伸行さんでしたらコンサート会場などで撮影しました」
--CMというよりドキュメントの撮影ですね。よく考えてみればヤクルトさんのCMの歴史を振り返ると、伊東四朗さんの「タフマン」や、とんねるずさんの「珈琲たいむ」など、出演者の方々の個性が強く印象に残っている作品が多い気がします。

「節目節目で他社がやらないことをやっているかもしれません。広告に対する姿勢として商品よりも先に人に対する興味から入っていくスタンスは、ずっと共通しているような気がします」

【取材・文 高山惠】
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