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「せばだばまいねびょん」は青森市では通じるが八戸市では通じない?どうして?

境治 2020.09.04

「せばだばまいねびょん」は青森市では通じるが八戸市では通じない?どうして?
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小さな島国日本だが、多種多様な方言が各地で育まれてきた。若い世代は共通語をマスターしている一方で、地元民同士の日常会話では方言が飛び交う。日本語は多様で豊かなのだ!

中でも東北は方言の宝庫、独特の訛りが聞いてて楽しい。「年がばれるべなさ」と笑う青森県民のおばちゃん、「スーッとするべっちゃ」と話す山形県民のおばちゃん。「べなさ」ってなに?「べっちゃ」って言うの?ちょっとした語尾がなんだか面白い。
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だがお年寄りが話すディープな東北弁は何を言ってるのかまったく聞き取れず、もちろん意味もわからなかったりする。他県民からするとまるで外国語。適当に相づちを打つのが精いっぱいだ。

そこまでディープじゃなくても、東北人と話していると「おや?」と思うことがある。例えば青森県民はトウモロコシのことを「きみ」と呼ぶのだが、「きみ」と言ってるはずのおばちゃんが「ちみ」と言ってるように聞こえる。聞き間違いかと聞き返してもやっぱり「ちみ」と聞こえてしまう。

東北大学大学院文学研究科の小林隆教授によると、「東北の人の“き”の発音は“き”と“く”の中間のような発音」だと言う。ええー?そんな発音できない!「それにさらに“し”とか“す”が加わったような独特な発音をする」とまで言うのだ。なんじゃそりゃ?小林教授は「きすい」(“すい”は小文字)と表現する。いや、そんな発音できないっしょ!どうやらそれが結局は「ち」に聞こえるらしい。秋田県や山形県の内陸部で使われることが多いと言う。
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取材班がその地域に行き「き」と言ってもらうと本当に「ち」と言っている。「ちがちに聞こえるんでしょ?」はいまったくその通りです。「黄色いシャツ」は「ちいろいシャツ」、「キッチン」は「チッチン」、「金庫」は「○んこ」と大きな声で読むではないか。「き」だけが「ち」になるなんて不思議で、面白い!

楽しい東北訛りだが、中でも津軽弁はお手上げだ。お年寄りがしゃべるとまったくわからない。若者たちだって今も方言を使い続けているので地元民同士の会話はちょっとついていけない。単語からしてそもそも違うのだから。

で、この津軽弁は青森県の方言だが、あくまで津軽、つまり青森県の西半分の方言だ。青森市や弘前市などはこっち。奥羽山脈を境に、東半分の南部地方はまた別の方言。八戸市を含む一帯は、文化圏が違うのだ。そもそも江戸時代までは別々の藩だったのがひとつになって青森県が誕生した。言葉が違うのは当然だ。他県民からすると、同じ県内でそんなに方言が違うなんてと不思議になる。だが津軽の人に言わせると津軽と南部は「90%通じねぇんでねぇべか」なのだそうだ。
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津軽弁で「せばだばまいねびょん」と言われてわかる他県民は少ないだろう。もちろん津軽の人びとは理解する。誰に聞いても「そういうことじゃダメでしょ」という意味だと即答される、津軽弁の日常会話だ。「せばだば=それじゃあ」「まいね=ダメ」「びょん=だよね」という構造なのだそうだ。
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これを南部地方の人びとに聞くと「うーん・・・」と考え込んで「全然わかんねえ」と答えるではないか。「これ海外ですか?」と外国語のように当惑する人までいた。では南部弁で同じ意味を言うとしたらと聞くと「それだばわがねべ」。「わがね=ダメ」の意味で、単語そのものがまるっきりちがうのがわかった。

逆に南部弁で「んがでーんだっきゃ」と言うと「あなた誰ですか」の意味だそうだ。「んが=あなた」「でーん=誰」「だっきゃ=ですか」の構造だという。南部では普通の会話らしい。これを津軽地方に行って聞いてみると「あぁ?」とさっぱりわからない。意味を教えると「ええ?」「どこが?」と大いに驚く。津軽弁で同じことを言うと「なだだば」になるそうだ。
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うーん、奥が深いぞ東北弁!そして同じ日本で言葉の違いに驚く、そこが面白い。つくづく日本の文化は奥が深く、まだまだ知らないことだらけだと思う。コロナで出かけにくい分、いろいろ調べると楽しいかも。そしてコロナが明けたら東北に行って方言の楽しさを実際に聞きたいね!

【文:境 治】
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