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インタビュー:テレビを書くやつら

ザテレビジョン統括編集長・内山一貴さん(後編)〜テレビに熱い男が熱く語る「視聴熱」とは?〜

境治 2019.12.24

「ザテレビジョン」の編集者としてテレビを熱く語る内山氏。後編では、「ザテレビジョン」が推すテレビ番組の新しい指標「視聴熱」を語ってもらう。ツイッターの盛り上がりをベースに数値化した「視聴熱」はデイリーで更新され、業界内でも浸透してきた。視聴率とは別の見方を提示する指標として知られるようになった。そこにはどんな考え方があるのか。そしてターニングポイントを迎えたテレビと「ザテレビジョン」はどう変化していくのか。前編に続いてのマシンガントークが炸裂する。

【聞き手/文:境 治】

「視聴熱」がコミュニティのきっかけになれば

聞き手・境治(以下、S): 「ザテレビジョン」が「視聴熱」を掲げるようになったのはいつからでしたっけ?

内山一貴氏(以下、U):2016年3月です。SNSはテレビと相性がいいと登場時から言われていました。SNSには情報発信の側面と共感の側面があり、テレビをリアルタイムに見ながら盛り上がることができる。これを使ってテレビに新しい尺度が作れないかという議論が社内で起こって角川アスキー総研(グループ内のシンクタンク)の人たちと話していて出てきたのが「視聴熱」です。

S:会社としてエンタメツイートに取り組むことになった、とアスキー総研の方たちに聞いたことがあります。総研がはじめたなと思ったら、「ザテレビジョン」もフィーチャーしたなあと横から見ていました。

U:クリエイターにとってもユーザーにとっても面白い指標になるかなと思ったんです。

S:番組ごとにキーワードを辞書登録してツイッターを解析しランキング化しているわけですか?

U:視聴熱はSNSなどを元にしてつくっている独自指標で、進化させているところです。

S:視聴熱をドラマとバラエティで出して、デイリーとウィークリーそれぞれのランキングを見せていますね。

U:そうです。リアルタイムでも面白いのですが、視聴率が放送翌日に出るのでそれと合わせて見てもらえるのでは、と考えました。

視聴熱のデイリーランキングとウィークリーランキングは、ザテレビジョンのWebサイトでも公開されている。
S:視聴熱を記事の題材にもしていますよね。

U:視聴熱はユーザーが作品に持つ愛の尺度。その作品を好きな人は、その気持ちを共有したいという思いが生まれる。ドラマのおかげで「気持ちが救われた」「おかげで辛い仕事も乗り切れる」とツイートしていたり。本当にその作品への愛をつぶやくこともあって、そこまで来るとある種、布教活動のような。自分自身にはなんの得にもならなくてもツイートする。自分ごと化されている。
僕たちは視聴熱を通じてコンテンツのファンのコミュニケーションを後押ししたいと考えています。交流が生まれるきっかけの一つになる。そこが自分の居場所になる人もいます。素晴らしい作品はコミュニティを生みますから。

S:作品がコミュニティを生む、というと直近ではどんな番組がありますか?

U:「あなたの番です」の仕掛けがまさにそうだと思います。伏線が張り巡らされたミステリーだからファンを巻き込み、考察をしたくなります。これはSNSと相性がいい。ぼくたちが子どもの頃に学校でテレビについてしゃべってたことがSNSで展開されます。昔の学校より盛り上がってるとも言える。本当の自分の思いを交し合える場所ができる。そういうキッカケに視聴熱がなればいいと思ってます。

S:最近は業界内でも浸透してきましたね。

U:鈴木おさむさんも自分の番組が視聴熱が1位になったとつぶやいてくれました。プロデューサーさんも喜んでくれます。「おっさんずラブ」が視聴熱1位になったことを、プロデューサーさんも大いに喜んでくださいました。

S:「ザテレビジョン」のブランドがユーザーとクリエイターをむすぶ

U:視聴熱の高いおっさんずラブ特集を誌面でやったら読者の方にご好評をいただきました。視聴率の高いドラマが視聴熱も高いだけなら面白みがないですが、「カルテット」が視聴熱で1位だった時に、本当に濃いファンがついている作品が高い視聴熱をとるのだなと実感しました。「きのう何食べた?」もそうです。

テレビは今、準備期間が終わったところ

S:視聴熱を日々見ていて今のテレビに思うところはありますか?

U:ぼくはテレビがダメだとはまったく思わないです。「ザテレビジョン」もこれまでが黎明期でここから始まるんだ、いままで準備期間中だったという感じになれたらいいなと思うんです。テレビも、これまでは準備期間で、新たな時代が始まる、と捉えるといいんじゃないでしょうか。

S:テレビはまだこれからなんだ、ということですね?

U:ぼくは作り手の人たち、スタッフのみなさんを見てきて、リスペクトしてるしカッコいいと思ったんです。これからそんなみなさんが、より最強のドラマ作りをしていく時に、ファンの巻き込み方がますます重要になると思います。「水曜どうでしょう」も藤村ディレクターがHPの掲示板で全部コメントを返していたそうですよね。一人一人のお客さんに届ける気持ちが、これからもっと大事になると思います。

S:ファンと距離を近づけることが大事ですね。

U:あるコンテンツを好きな人はずっと好きです。ぼくでいうと「白夜行」みたいに。そのコンテンツはファンの中では残り続ける。テレビは最強のクリエイター軍団だからこそ、一回の放送で終わるんじゃなくてファンと交流するとかグッズ販売とか配信してとか永続的にそのコンテンツの価値を保ち続けるにはどうしたらいいか考えたほうがいい。我々もそのお手伝いを考えたい。

内山編集長(右)と聞き手の境治氏(左)
S:そんな風に長く愛されるような視聴熱が高い番組はどんな番組でしょう?

U:やはり役者さんや作り手が熱を入れてる作品、と言うときれいにまとまっちゃいますけど、そう思いますね。「カルテット」の時にそう感じました。「きのう何食べた?」も「3年A組」も「はじ恋」も。単純に面白いということと・・・分析していけばいろいろ言えて、ネタを仕込むとか、旬な役者出すとか、視聴率の取り方と同じになるかもしれません。だけどそれだけではない何かがやっぱりあるだろうなと思います。

S:分析はあまりしたくない?

U:表現者が好きだから叩きたくないですし。「ザテレビジョン」は「コンテンツと表現者の魅力を最大化する」のがミッションと言ってます。だから不倫も取り上げないし、おべんちゃらも書かない。これはWEB版を立ち上げる時に議論して決めました。

トーナメント1位が出るテレビと濃いファンがいるネット

S:WEB版を作る時にいろいろ議論したんですね?

U:転換点が来ています。デジタルによって芸能界が雲の上から降りてきて、ある意味、ユーザーは芸能人とYouTuberや配信者たちを隣に置いて見ている。垣根が崩れてきている気がする。

S:タレントさんにとってもテレビとネットの垣根がなくなるわけですね?

U:テレビって、いろんな分野の全国トーナメント1位の人が出てるわけですよ。「面白い」も「かっこいい」も「運動神経いい」も「変な奴」もそれぞれ1位の人が出てる。熾烈な戦いで敗れたら出られなかった世界です。でも今は濃いファンが1000人いればある意味生活できるようになった。SHOWROOMの前田さんは誰でも表現者になれると言っています。濃いファンがいれば活動はできるし、少ないファンの方がエネルギーも投下できます。ただテレビのタレントさんはトーナメント1位の人だからYouTubeで戦ったらやっぱり勝つ。やはりテレビは強いんじゃないかとも思うし、小さいサークルでも戦える環境でもあるし。M1で優勝しなくても動画がバズればいける。すごく変わりますよね、これから。

S:「ザテレビジョン」もWEB版が伸びてるようですしね。

U:そうそう!おかげさまでWEB版が月間1億PV行きました。メジャーサイトの仲間入りできた感じです。

S:それはすごい!内山さん自身もネットで顔出しの発信してますよね?

U:視聴熱を広げていきたくてやってます。いろんなことをやれるだけやってみようということで動画はその一つです。「ザテレビジョン」と視聴熱の拡散を狙ってます。危機感の表れでもあります。動画もやってないとやばいかなと。

S:視聴熱を語る内山さんも熱が高いですよね(笑)
ザテレビジョンの公式Twitterでは内山編集長による「視聴熱ウィークリーランキング」の解説動画が配信されている。
「視聴熱」を語る内山氏自身が発散する熱がまた高い。そしてテレビの世界を深く愛しつつ、変化の方向性も鋭く洞察している。それはもちろん、雑誌メディアである「ザテレビジョン」がここ数年でメディアの垣根を超えた存在になるのを体感しているからだろう。自らも変わりながらテレビの変化の行く先を見据えている。内山氏は「ザテレビジョン」のツイッターアカウントで自ら喋る動画を配信しているので、見てもらうといいだろう。ほとばしる熱と愛があなたにも伝わってくるはずだ。
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