●絵本作家として受賞多数。ピン芸人・ひろたあきらが示す芸人の可能性

2023.03.10

●絵本作家として受賞多数。ピン芸人・ひろたあきらが示す芸人の可能性
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絵本作家として「MOE絵本屋さん大賞」新人賞などを受賞してきたピン芸人のひろたあきらさん(33)。3月1日には5冊目の絵本「ちんぽうがき」が出版されました。芸人と絵本、二刀流を進める中で見えた芸人という仕事が持つ可能性とは。



―今回の絵本を出すことになった経緯は?
地元の愛知県額田郡幸田町で絵本大使という仕事を一昨年からさせてもらっていて、その流れで幸田町をテーマに絵本を作れないかという話をいただいたんです。

ただ、それ以外は特に指定や要望はなく、こちらのフリー演技みたいな形で絵本を作ることになりまして。それはそれでありがたいんですけど、何をとっかかりにしようかと迷うところもありつつ(笑)、だったら幸田町が全国の95%くらいを作っている「珍宝柿(ちんぽうがき)」を題材にしようと思ったんです。

以前から架空の昔話を作ってみたいという思いはありまして、今回はまさに珍宝柿という題材でそれを作らせてもらいました。それと、誰にでも地元があって、そこが題材になっている絵本があったらうれしいだろうなと。そんな思いも加わり、ご当地絵本みたいなものを今回をきっかけに作っていけたらなとも思っているんです。

―絵本作りとお笑い。リンクするところは?
今回はこれまでとは少し違うアプローチで絵本を作ったんですけど、それでも、基本的には絵本作りとネタを作るのは同じだと感じています。

何かしら発想のタネになるものを見つけて、それをどう味付けしていくか。そして、どういうものを入れていったら見てくださった方により楽しんでいただけるか。

最後の形がネタか絵本かだけで、途中までは一緒。ジャガイモをゆでて潰すまでは一緒で、出口がコロッケなのかポテトサラダなのか。その違いなんだろうなと。

それとね、これは絵本を描き始めて感じたことなんですけど、絵本もかなり自由な表現物ですけど、お笑いのネタはどこまでも自由だなと思いました。

ネタは考えるのは自分だし、演じるのも自分。作家さんや先輩など周りに相談していたとしても、最後に演じるのは自分なのでステージで「こうだ」とひらめいたら、いきなり変えることもできます。

一方、絵本は編集者の方とか工程ごとにいろいろな方の目が入って練り上げられていく。その面白さもあるんですけど、必ずしも自分の思いだけで全部を作り上げられるものではない。そう考えると、笑いというものの自由度は改めてすさまじいなと思ったんです。
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―絵本を描くことでの気づきもあったんですね。そもそも芸人さんを目指そうと思ったきっかけは?
テレビを見ていると、売れている芸人さんは紅白歌合戦に出たり、映画に出たり、アマゾンの奥地に冒険に行ったり、活動の幅がすごいなと思ったんです。となると、芸人になって売れたら楽しそうなことができるはず。そう思って飛び込んだのが最初の思いでした。

そうやって芸人をする中で絵本を描くことになり、絵本を描くことで今回のように自治体からお話をいただけるようにもなりました。まだ芸人として僕は売れてはないですけど、それでも自分が思ってもみなかったところに仕事が広がる。それが芸人という仕事の面白さなんだなと感じています。

これからも頑張って絵本は出していきたいですし、さらに欲を出すなら、自分の絵本をテーマにした舞台ができたりしたらうれしいですね。あとは、絵本の読み聞かせ会もやってるんですけど、そこで流すような曲も作れたら楽しいだろうなと思っています。

もともとあった芸人という幹から伸びた枝葉が新たな栄養を幹に与えてさらに新しい枝葉を伸ばす。そんなイメージが今は見えています。

僕が読み聞かせように作った曲が評価されて、音楽フェスの「サマーソニック」に出られたりしたら、これはもうたまらなく面白い話ですしね(笑)。

芸人という仕事の幅広さ。そして、生命力。そんなところを絵本を描くことから学ばせてもらってもいるなと感じています。
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■ひろたあきら
1989年5月8日生まれ。吉本興業所属。高校時代からお笑いを始め、名古屋吉本でキャリアをスタートさせる。2015年に上京。コンビ解散を3回経験した後、18年からピン芸人として活動する。絵本作家としても活動し、19年に刊行した処女作「むれ」(KADOKAWA)で「第12回MOE絵本屋さん大賞2019」新人賞、「第7回積文館グループ絵本大賞」、「第3回 未来屋えほん大賞」など多くの絵本賞を受賞。地元・愛知県額田郡幸田町の名産品である珍宝柿を題材にした絵本「ちんぽうがき」が3月1日に発売された。



執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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