バスにシャチ、うどんにシャチ、社名にシャチ!そんなに好きなの?名古屋人の金シャチ愛!

2021.04.16

バスにシャチ、うどんにシャチ、社名にシャチ!そんなに好きなの?名古屋人の金シャチ愛!
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日本にはその土地なりの守護神がいる。名古屋では、あのお城にそびえる金のシャチホコが守り神として愛されているようだ。金色のシャチホコなんて、派手好きな名古屋人のシンボルでしょ?と思ってしまうが、街の人に「名古屋といえば金シャチですか?」と聞くと「当たり前だがや!」と怒り気味で返される。それにただのお城の飾りではなく、火除けの守り神なのだそうだ。鯱は胴体が魚、頭が龍の空想の生き物で、口から水を吐いて火を消してくれる、まさに守護神なのだ。名古屋城の金シャチも、徳川家康が築城の際に金227キロを集めて城を火事から守るためにつけたという。ありがたがるのもわからないでもないね。
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それにしても、名古屋人の金シャチ愛はディープだ。街の女子が「シャチホコをモチーフにしたシャチホコがいろんなところにある」とややこしい言い方でドヤ顔で言うほどだ。少し歩くだけで、バスに金シャチのエンブレムを発見、その名も「鯱バス」。ふと見ると「鯱タクシー」があり、城北線の電車のヘッドマークがファミコン風ドット絵の金シャチだ。名古屋の交通網は金シャチが守ってる!
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名古屋市北区の東志賀小学校に行くと、壁にドカンと金シャチの校章が!校歌でも「♩輝く太陽〜 光るしゃち〜」と歌われている。人気のカレーうどん店はその名も「若鯱家」。一押しメニューは海老フライをシャチホコのように対で立てた「金鯱カレーうどん」だ。
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シャチは社名にも使われる。なんと株式会社シャチラインと株式会社シャチというシャチ入り会社が看板を並べているではないか。前者は運送業、後者はフォークリフトで荷物の積み下ろしをする会社だそうだ。「素敵な社名ですねえ」という社交辞令に「最高でしょう?」とうっとり顔で返されて何も言えない。
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他にも、靴屋さんのシューキーパーが金シャチ、駅ビルには金シャチベンチ、市営住宅の外壁に金シャチエンブレムと、くどいと言うかしつこいと言うか。名古屋の人たち、金シャチ愛しすぎじゃない?「すごく愛着ありますし、金シャチを馬鹿にされるとイラッときます。」「金鯱を見ると落ち着きます。ここ名古屋だなあって」あんまり言われるとだんだんこっちは引いてしまう。なんでそんなに金シャチが好きなの?

京都市国際日本文化研究センターの井上章一所長に聞いてみた。
「明治になって、新政府の方針で金シャチは財源にするため溶かされることになりました。最後の華にと、明治5年に湯島聖堂で行われた初めての博覧会で展示したら大人気になったそうです。その後も、全国の博覧会で引っ張りだこになり、明治6年にはウィーンの万国博覧会でも展示され好評を博しました。明治12年に名古屋城に帰還したのですが、この時に名古屋の宝だとみなさんが気がついたのでしょう。以後、いろんな機会に使うようになりました。そういうことが積み重なって、名古屋にいろんな形の金シャチが溢れ出すようになったんじゃないかと考えています。」

正直、名古屋の人たちの金シャチ愛にはついていけないものを感じていたのだけど、この話を聞いてグッと来た。明治になって金シャチを失いかけたからこそ、ありがたみにみんな気づいた。新時代に揺れた名古屋人のアイデンティティを、もう一度取り戻して自信をつけるシンボルが金シャチだったのかもしれない。いま名古屋では、「名古屋城金シャチ特別展覧」(2021年4月10日〜7月11日)と題して、城から降ろして市民の前に金シャチが展示されている。
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この苦難の時期に、人びとの気持ちを癒やし心を安らかにするために寄り添ってくれているのだ。ありがとう、金シャチ!いつまでも名古屋を守る守護神として、上からみなさんを見守ってあげてくれ!

【文:境 治】
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