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【連載】中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【34】

上方落語の正統派ホープ・笑福亭喬介が語る葛藤、そして師匠への思い

2022.04.11

中西正男
上方落語の正統派ホープ・笑福亭喬介が語る葛藤、そして師匠への思い
©ytv
文化庁芸術祭新人賞など数々の賞を獲得してきた上方落語の正統派ホープ・笑福亭喬介さん(40)。女流落語家の笑福亭喬明さんを弟子に持つ立場でもありますが、さらなる飛躍のために笑福亭鉄瓶さんや笑福亭生寿さんらと落語家5人のユニット「五楽笑人(ごらくしょうにん)」を結成。様々な動きを見せていますが、その根底にある思いとは。


―なぜユニットを組むことになったのですか?
一人一人いろいろな思いもある中ではあるんですけど、共通しているのは「もっと伸びていきたい」ということだったんです。

皆さん、それぞれに賞も取っていたりもするけど、そこから世に出る術がなかなか難しい。こうやってユニットなどの動きをやったからといって必ず結果が出るものではないんですけど、動かないとゼロはゼロのまま。そんな思いから動いてみたというところです。

―師匠である笑福亭松喬さんからの教えは?
修業中は毎日師匠の家に通うんですけど、今考えると、師匠は本当に毎日部屋にこもってけいこをしていたなと。

僕もやってない方ではないと思うんですけど、やっぱりけいこはしんどいんです(笑)。それでも師匠はずっとそこと向き合っていた。改めて、その姿が自分の背中を押してもいますね。

それと、自分が弟子を持つようになって、これはもう日々いろいろなことを感じています。

自分が師匠の立場になったら、弟子の嘘はすぐにバレるもんやなと思いました(笑)。「けいこしてきました」と言っても、してへんかったら一瞬で分かりますしね。我が身を振り返って「アレもバレバレやったんやろうな」と思うことも今さらながら出てきました。

あとは、弟子も師匠といたら気を抜けないとは思いますけど、実は、師匠の側もしんどいということを感じましたね。

なぜかというと、この子をここから10年、20年と育てていかないといけない。さらに、もしこの子が弟子を取る日が来るなんてことを考えたら「ここで厳しく教えておかないと、その時にこの子が教えられない」となりますしね。

だから、一緒にいるだけで正直な話、疲れるんです(笑)。常にいろいろと気を張っておかないとダメですし。イライラもします。

ただ、今思うと自分もずっと師匠と一緒におらせてもらった。それ自体が実はありがたいことやったんやなと思います。
©ytv

―今後への思いは?
大阪、関西だけでなく、全国でできるようになったらいいなと思っています。自分の落語をもっと広めていきたいなと。

自分の落語の特徴は「絶対に古典の形を崩さない」ということだと思っています。もともとの噺の世界観を壊さない。そこは心がけています。

そして、できるだけ“ほんわか感”を出したいとは考えています。聞いているお客さんは人間ですから、こちらの言い方一つで「ほんわか」したり「きつい」と感じたりもする。

同じ「アホ」という言葉でも「アホ!」ときつく言い放つのではなく「アホか」とほんわかした言い方で言う。ものすごく細かいことですけど、一つの噺を通じて、そういう言葉の印象がどこかでお客さんの頭の中に残って、ほんわかと笑いやすい空気になるんやろうなと。

もちろん、これは人それぞれ考えがありますし、何が良くて、何がアカンのか。決まった正解はないとは思いますけど、僕はそこを大事にしているんです。

―同年代の漫才やコントの人たちをどう見ていますか?
「かまいたちさん」なんかは一つか二つ先輩で近い年代だったりもするんですけど、なんでしょうね、純粋にすごいなと思います。そして、別物というか別世界とも思ってます。

でも、それも今回の5人ユニットをやる中で、別物と考えるのではなく、そういうことにも何かしら踏み出していかないとダメなんじゃないか。広く知ってもらうためにはそこの領域も意識しないといけないのではないか。それをまさに今感じてもいます。

TikTokに短い落語をアップしたり、これもどこまでどんな反響があるかは分からないですけど、動かない限りは何も始まりませんからね。いろいろな手を打っています。

そして、賞が全てじゃないですけど、これまでも賞を取る度に師匠がものすごく喜んでくれたんです。なので、そうやって喜んでもらえることをたくさんして、いつか師匠を超える。それが最大の恩返しやと思っています。

…あまりにも真面目なことばっかりしゃべり過ぎましたかね?なんとも、なんとも、スミマセン(笑)。ただ、ホンマに思ってることでもありますし、なんとか頑張っていきたいと思っています。


■笑福亭喬介(しょうふくてい・きょうすけ)
1981年7月22日生まれ。大阪府出身。本名・川崎直介。松竹芸能所属。近畿大学在学中は落語講談研究会に所属。1年先輩にあたる旭堂南青(現・旭堂南龍)が講談師になったことからプロを志すようになり、2005年に笑福亭三喬(現・七代目笑福亭松喬)に入門。なにわ芸術祭新人賞、繁昌亭大賞奨励賞、咲くやこの花賞大衆芸能部門、文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞など受賞多数。女流落語家の笑福亭喬明を弟子に持つ。笑福亭鉄瓶、笑福亭生寿、桂咲之輔、笑福亭呂好との上方落語ユニット「五楽笑人(ごらくしょうにん)」を結成。また毎回ネタおろしをする落語会「スタディ喬介超(スーパー)」を開催。会場は大阪・DAIHATSU心斎橋角座で、開催日は4月19日、6月23日、8月25日、10月20日、12月22日の予定。


執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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