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金沢カレーの中にカツカレーがあるのではなく、金沢カレーとはカツカレーなのだ

境治 2019.08.16

金沢カレーの中にカツカレーがあるのではなく、金沢カレーとはカツカレーなのだ
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金沢といえば、京都に並ぶ伝統の都市。町を歩けばそこここに歴史を感じ、深い文化を堪能できる。食文化も豊かで多彩、品がある落ち着いた食事が楽しめる。その金沢独自のメニューで、歴史もないしあんまり上品でもないものがある。金沢カレーだ。そういえば金沢のカレーは独特だと聞いたことがある気がするが、具体的にはどんなもの?

金沢の町で人びとに聞いて回ると「母さんのカレーよりおいしい」とか「カレーの概念が変わる」などとみなさん大好きなのがわかる。最近の流行りかと思いきや「若い頃から当たり前にあった」のだそうだ。実際、石川県内には金沢カレーのお店が100軒以上あるという。もはやこの地に根付いた食文化なのだ。

そこで金沢カレー発祥のお店と言われる、「カレーのチャンピオン」本店に行ってみた。「Lカツカレー」として登場したのは、確かにカツカレーだが普通のカツカレーではない。ライスが見えないほどたっぷりかかったカレールーの上にカツが乗っているのだがソースがかかっている!そしてなぜかキャベツの千切りがどっさり添えられているではないか。なんじゃこりゃあ?!カツカレーの概念を超えたカツカレー!びっくりするけど、おいしそうだ。

お客さんは次々にこの常識破りのカレーをおいしそうに食べはじめる。カツとキャベツが特徴に思えるが、何と言っても濃厚なルーがポイントだそうだ。具が入っていないのに味わい深く、奥行きがあるという。カツはわかるとしてキャベツは何のために入っているのか不思議だが、これがルーの濃厚さを和らげてくれて時々頬張るといいのだそうだ。と言われても正直、なんだかよくわからない。別皿でサラダではダメなの?
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「カレーのチャンピオン」の工場で、カレーの作り方を見せてもらった。まずカレー粉と小麦粉に、ジンジャーパウダー、ガーリックパウダーを混ぜ、ラードを加えて機械で焙煎。3時間焙煎するとベースとなるカレーペーストが出来上がる。このペーストに炒め玉ねぎと牛こま切れ肉、ケチャップと牛豚鶏の旨味が溶け込んだガラスープ、そして特製ミルクを加えて混ぜ込めばできあがり。具がなくてもいろんなものが溶け込んだ濃厚ルーが完成する。

別のお店「ターバンカレー」ではお客さんが「Lセット」を注文している。これがなんと、カツだけでなくハンバーグとウィンナーまで乗っているではないか。これも金沢カレーの類型なのだ。しかしいくらなんでもこんなにあれこれ乗せるってどうなの?「ガーッと食いたい時にはこれ!」とドヤ顔で金沢市民が言うのだが、歴史とか品とかはいいの?ところが「カレーの市民アルバ」に行くと「満塁ホームランカレー」というメニューがあって、カツとハンバーグ、ウィンナーに加えてクリームコロッケまで乗っている!いくら松井秀喜の母校、星稜高校の近くにあるからって、乗せすぎでしょう!

それにしても、この金沢カレーはどうやって生まれたのか?「カレーのチャンピオン」3代目社長・南恵太氏によれば、創業者・田中吉和氏が開発したビーフカレーが始まりだという。1960年代に独立した田中氏は独自の濃厚なカレーを開発して大好評になった。「そこで当時人気のあったトンカツ定食とカレーライスを合わせて金沢カレーのスタイルを完成させました」そうなのかあ、トンカツ定食だからソースをかけるしキャベツも入ってるんだなあ。ただ南社長のお話、「そこで」ってさりげに言ってたけど、どうしてトンカツ定食とカレーライスを合わせようと考えたのか、そこはよくわからない。うーん、不思議だなあ。

謎は残るが、この金沢カレーを出してくれるお店は、調べると石川県以外にもあるようだ。今度食べに行ってみて、トンカツ定食とカレーライスを合わせた発想の謎を考えてみたい。まあ結論はわかってるけど。おいしいから、以上!ってことだろうね!

【文:境 治】
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