元国税職員のピン芸人・さんきゅう倉田が語るお金、そして、芸人の本質

2022.03.10

元国税職員のピン芸人・さんきゅう倉田が語るお金、そして、芸人の本質
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元国税職員のピン芸人・さんきゅう倉田さん(37)。経歴を生かしたメディア出演、そして、講演活動などで職員時代を大きく上回る収入を得るようになっていると言いますが、新著「お金持ち・貧困芸人 両方見たから正解がわかる!元国税職員のお笑い芸人がこっそり教える世界一やさしいお金の貯め方増やし方たった22の黄金ルール」も版を重ねています。オンリーワンの道をいく中でたどり着いた思いとは。



―国税職員から芸人さん。なかなかない経歴だとも思うのですが、以前からお笑いは好きだったのですか?

小さな頃からお笑い番組は見てましたし、面白いなぁと思ってはいました。ただ、わざわざライブを観に行ったりとか、特にお笑いが好きで詳しいというほどのことではなかったんです。いわゆる普通の学生ぐらいの好き具合だったと思います。

大学に入ると公務員を目指そうと思い、中でも自分に合いそうなと国税職員を目標に勉強をしていました。幸い、試験に受かり、税務調査などをする部署に配属となりました。

仕事にやりがいも感じていたし楽しかったんですけど、ずっと自分の中で「仕事を選ぶなら、楽しいものがいい。その方が力も伸びるだろうし、結果、お金も稼げるだろうし」という思いがあったんです。

そんな基本的な思いに加え、税務調査をしていたのでいろいろな職業を垣間見ることにもなり、その中で芸人という仕事に魅力を感じるようになっていったんです。いろいろな仕事を見れば見るほど、テレビに映る芸人さんが神さまのように輝いて見えてきまして。そして、2年1カ月働いて国税職員を辞めてNSCに入りました。

―実際に入ってみていかがですか?

これがね、本当に毎日楽しいんです。楽しいから続いているとも思いますし。最初は収入がなかったのでアルバイトもしてましたけど、それも苦じゃない。周りは本当に面白い人ばっかりだし、何をしていても面白い。本当に良い世界だと入ってからさらに思いました。

芸人の世界で、新たな刺激もたくさん受けました。仕事がなくて収入もない中でも、200万円ほど借金がある人もザラにいます。

借金って、僕の中ではすごく不幸な印象があったんですけど、それでも借金のある芸人さんは借金の圧に負けてないんですよね。

今に至るまで僕は借金をしたことがないので、どうしても心配になるじゃないですか。特に近い先輩だったりすると「大丈夫ですか」と尋ねたくもなります。すると決まって「大丈夫だろ」という答えが返ってくるんです。

「大丈夫かな?」じゃなくて「大丈夫に決まってるだろ」という意味の「大丈夫だろ」が返ってくる。そこに何とも言えないカッコ良さを感じたんです。

自分は面白いからなんとかなる。だから大丈夫。これって、何も客観的な担保はないのかもしれませんけど、そう信じてやってらっしゃる人が多い。これが一般の人ではなかなかそうはいかない。ここの違いは芸人の世界に入って痛感したところでした。
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―企業経営者など堅実な仕事の人たちと、ある意味、奔放さが芸につながる芸人さん。両方を見てきたことがご自身の幅をさらに広げたのかもしれませんね。

不安より勇気が先に立つ人が多いんですよね。もちろん“石橋を叩かずにガンガン渡る”スタイルでいくと、橋から落ちることもあるんです。

でも、日々そんな歩みをしているので、尋常じゃないくらい足腰が強くなっていて、落ちた川底からもう一回這い上がってくる。この流れもまたすごいなと思うんです。だからこそ、この世界はどこまでも面白い。そう感じています。

―あらゆる経験を積んで、今ご自身が考えるお金をためるコツは?

毎日やっている“なんとなく”を把握する。これが一つだと思います。なんとなく毎日コンビニに行って、なんとなくカフェラテを買う。でも、そのカフェラテがないとどうにもならないのかというと、そんなことないんですよ。

なんとなくをなくして、自分の行動を認識する。そこで必要なのが家計簿なんです。今はわざわざ書き留めなくても家計簿のアプリがたくさんあるので、まずはそれを携帯に入れてみる。そこが第一歩だと思います。

カードの引き落とし額を見て「今回、多かったな」と思っても、そこで逐一何に使ったかを覚えている人は少ないと思います。だからこそ、家計簿で確認する。それを見て「あ、あの時にあれを買ったのか。でも、別に要らなかったもんな」と思い返すことができる。その時の感覚が未来の自分に節約を促す。そうなると思うんです。

ナニな話ですが、国税職員時代と今だったら、今の方が収入は完全に上です。その意味でも、本当にありがたいと思いますし、あらゆる方々を見てきたから、より一層、自分のお金への感覚が研ぎ澄まされた感じもあります。

―お世話になっている先輩はいますか?

千原せいじさんに本当にお世話になっています。こんなことを言うと、逆に嫌がられるかもしれませんけど(笑)、お笑い界で一番の人格者だと僕は思っています。

すごくシンプルなことですけど、約束の時間にどんな状況でも遅れない。せいじさんの収録終わりに食事に行くとかいう時でも、収録だし押すこともあるだろうけど、絶対に遅れないんです。人を待たせない。そこにあらゆるものが表れていると思います。

お金の使い方は、典型的な芸人さんの使い方だと思います(笑)。普通ならバイクを一台買ったらもうそれで満足するところだと思うんですけど、立て続けに大きなバイクを買ったり。本当に、心底芸人だなと(笑)。

なので、せいじさんのことはすごく尊敬しているんですけど、お金のことで影響を受けているところは全くないですね。こればっかりはマネしようたってできないですから(笑)。
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■さんきゅう倉田(さんきゅうくらた)
1985年2月11日生まれ。神奈川県出身。東京NSC15期生。ファイナンシャルプランナー。日本大学理工学部建築学科卒業後、国税専門官試験を受けて合格し、東京国税局に入局。約2年、税務調査などを行い、NSC東京校に入学。経歴を生かしたメディア出演や講演が殺到している。新著「お金持ち・貧困芸人 両方見たから正解がわかる!元国税職員のお笑い芸人がこっそり教える世界一やさしいお金の貯め方増やし方たった22の黄金ルール」が版を重ねている。




執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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