テレビっ子・戸部田誠さん(後編)〜テレビはめちゃめちゃ不便だと思う〜

2019.04.03

「テレビを書くやつら」のインタビュー、テレビのスキマこと戸部田誠さんの後編をお届けする。前編では戸部田氏の2つの著作から、90年代のテレビ史と、フジテレビと日本テレビの違いについてお話を聞いた。後編では、戸部田氏の溢れるテレビ愛をさらに掘り下げながら、これからのテレビの姿についても聞いていく。テレビを愛するからこそ考える、テレビに変わってほしいこと、そして変わる必要のないことを語ってくれた。本当につくづく、テレビが好きな人なのだと再認識できた。
(このインタビューは2018年10月24日に行われた)

【聞き手/文:境 治】
インタビューの前編はこちら

テレビ東京の番組は作為性がないのがいい

聞き手・境治(以下、S):戸部田さんは毎日変わらずテレビを見てらっしゃいますよね。それは90年代に好きだったテレビと同じですか?

戸部田誠氏(以下、T):根本的にはそうだと思います。いつの時代にもつまらないのもたくさんあるし面白いものもある。今だって面白い番組はすごくいっぱいあると思います。

S:ご著書『1989年のテレビっ子』では「平成のバラエティ」が2014年の「笑っていいとも!」終了で終わったニュアンスで書いてらっしゃいましたが、これで僕のテレビは終わったということではないわけですか?

T:全然ないです。その時代ごとに面白いものが生まれていますから。

S:あくまでそこで終わったのは「平成のバラエティ」。90年代のフジテレビ的なスタイルってことなんですかね?

T:また時期が来れば往年のフジテレビのようなタレントバラエティが復活する可能性は全然あると思います。今は無くなったというだけ。

S:今好きな番組はありますか?

T:これ聞かれるとベタな答えしか言えないのですが(笑)。それこそ「水曜日のダウンタウン」とか「ゴッドタン」とか「家、ついて行ってイイですか?」とか、本当に定番の。

S:でもバリエーションは豊富!例えば水曜日のダウンタウンでいうと、ダウンタウンは『1989年のテレビっ子』の主役ですけど。それとはまた違う意味で今面白い?

T:そうですね。ダウンタウンっていまだに全然面白い。トップだと思うんですね。「水曜日のダウンタウン」ではいじられても全然平気でちゃんとそれに対して受身を取っている。本当にすごいですよねあんなに大御所になっても全然弱い部分を見せる。

S:「家ついて行っていいですか」は今のテレ東らしさの象徴だと思うんですけど、テレ東の魅力っていうのはどういうところでしょう?

T:うーん、やっぱり何だろうな、生っぽいというか、生々しいというか。「YOUは何しに日本ヘ?」もそうですが、作為性があまりない。テレビ的にいい感じにしようみたいなところを極力排しているところですかね。テレビの新しい魅力を見つけている。
写真左側から 戸部田誠氏と聞き手の境治氏
S:戸部田さんのお話にはバラエティーばかり出てくるんですが、ドラマは?。

T:ドラマも好きなんです。ただドラマについて書くとなると、ドラマ評になりがちじゃないですか。そっちの方向はあまり得意ではない。ドラマに関して書くんだったらどう作られて行ったのかを書きたいんですけどね。

S:ワイドショーも見てますか?

T:ワイドショーは見ないです。唯一テレビの中で苦手で。ほぼ見ないですね。どうしても見なきゃいけないところは見ますけど。スキャンダルに対して語るとどうしても偉そうになっちゃいますから。

S:番組も嫌いだけどコメンテーターがいや?

T:いや、コメンテーターでも別にワイドショー以外の番組に出てるのは全然見ます。ただ、ワイドショーでのコメントはそれを求められているんだと思うんですけど、それを思えば思うほどツラいですね。それにうまく抗っている人もいると思いますけど。


S:大げさに言うと、今のテレビは24時間ワイドショーじゃないですか。

T:そうなんです、その流れは早く終わって欲しいなって個人的には思います。

ネット番組もテレビと同じ人たちが作っている

S:ネットでの番組、例えばAbemaTVとかYouTuberの番組なんかはご覧になるんですか?

T:本当に話題になったのは見ますけど。なかなか追いつけない。

S:それはネットは好きじゃないから見ない?

T:僕、PCの画面で見るのが苦手で、AbemaTVもテレビで見ますね。

S:じゃあAbemaTVはそこそこ見るようになったんですか。

T:それなりには。Amazonプライム・ビデオの方が見ます。

S:へー、Amazonで海外ドラマとか?

T:いや、「ドキュメンタル」とか、日本のものですね。

S:やっぱバラエティですね。テレビのコンテンツとネットのコンテンツと戸部田さんにとって何か違いはありますか?

T:よく地上波ではできないという謳い文句を掲げてますけど、あれってすでにダサいですよね。今後SNSを考えると地上波並みか、それ以上ににクレームが来やすくなってくると思うんです。ネットの監視がきつくなるのは目に見えてます。だから、その方向でいっても未来はないなと。

S:メジャーになるほど、結局、地上波と同じようにコンプラみたいな話になっちゃう。すでに炎上した番組もありますしね。

T:ああいうのは本当にものすごく増えていくと思います。

S:そうすると、あまり違いを言ってもしょうがない感じですねえ。

T:ただもちろん、もっとニッチな部分をフォローするのは全然いいと思います。最近ちょっと話題になった、プロ野球中継をパワプロ風に放送する、ああいうのはネットじゃないとできないでしょう。あともう結構前ですけど、元SMAPの三人がやった72時間テレビは、時間に縛られないのがネットの強みだと思うので、そういう方向は全然ある。地上波では、いくら森君との再会だって6時間はかけられないですから。

S:戸部田さんにとってテレビ受像機で見てれば同じなんですか?

T:そうですね。自分としては、おんなじですね。実際、出てる人も作ってる人も、テレビの人なんでそんなに変わんない。それを誰に向けて作ってるかっていうだけの話。

S:そのうちそういう本を出すかもしれないですね(笑。

T:それにはもうちょっとちゃんと見ないとなあと思います。番組ごとに書くことはありますけれども全体的にちゃんとは見れてないですから。

テレビは便利になればコンテンツとして圧倒的に強い

S:テレビは今変わりつつあるような、次に進もうとしている気がするんですけど、どうなんですかね。

T:変わるのって、システムに合わせてのことだと思うんですよ。ハード面とかで今や視聴率の指標もだんだん変わってる。タイムシフトを入れたり。TVerのような見逃し配信がどういう評価基準になっていくかとか。それがどんどん発展していけば、よりテレビ好きの人が満足できるようなコンテンツも増えていくと思います。
今までは視聴率だけだったからマスに向けるしかない。そうでないと評価もされないし、経済的にも、ビジネス的にもダメだった。そうじゃない部分もビジネスとして成立できるような指標ができるのであれば、そういう方向になっていけばいいなって。

S:賛成!(笑)いや僕もそういう変化が起きそうだなと思っていたので。ではテレビはこれからどうなると思いますか?

T:テレビはこれからも、別に王様ではないと思うんですけど、変わらず続いていくとは思うんです。重要なインフラだと思う。

S:ではテレビは変わらなくていい?

T:変わるべきところはあると思います。それこそラジオもradikoでだいぶ変わったじゃないですか。テレビもスマホで普通に見れるようになるだけで劇的に変わると思いますよ。だから僕はテレビが便利なものになれば、コンテンツとしては圧倒的に強いと思っていて。だからハード面を整備してくださいっていうだけですね。

S:ネット時代にもっとちゃんと合わせて

T:ですね、本当にテレビってめちゃくちゃ不便なので。

S:めちゃくちゃ不便!(笑)

T:スマホで普通では見れない。全録とかありますけど、基本的には事前に録画しないと消えちゃうじゃないですか。そんなの今の時代に合ってないでしょう。地域格差もあるし。ハード面でいうともう完全に時代遅れになってます。そこを変えていけば、おのずとコンテンツも広く見られるようになるし。時代遅れの部分のあるコンテンツもどんどん時代に合ってくると思います。

S:なるほど。そうですね。その通りですね。


やり取りを記事で見るとポンポン言葉を交わしているようだが、実際には質問すると「うーん」と考え込む。ゆったりしたキャラクターに思えて、考え込んで出てきた言葉は本質をぐさりと突き刺している。ペースのゆるさと言葉の鋭さのギャップが面白かった。戸部田氏はこれからも変わらずテレビを見続け、その面白さを文章にしていくのだと思う。きっといつまでも面白いと信じてくれている戸部田氏を裏切らぬよう、テレビに関わるみなさんは頑張って欲しいと思う。そうすればまた、我々も戸部田氏の文章に触れることができる。そんな風に支えてくれる、テレビにとっていちばん大切なファンが“テレビのスキマ”なのだ。

写真左側から 戸部田誠氏と境治氏
てれびのスキマ(戸部田誠)プロフィール
ライター。著書に『売れるには理由がある』、『タモリ学』、『1989年のテレビっ子』、『笑福亭鶴瓶論』、『全部やれ。』など。
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