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【インタビュー:テレビを書くやつら】同志社女子大教授・影山貴彦さん(後編)〜作るのも見るのも楽しもう〜

2018.07.11

同志社女子大教授・影山貴彦氏へのインタビュー、その後編をお届けする。前編では大阪の放送局を辞めて40代で大学教授に転じた「人生二毛作」の顛末を聞いた。後編では、毎日新聞の連載「テレビ燦々」などの場で「テレビを書く」ことについてこってり喋っていただいた。大事なのは「楽しむこと」。影山氏がテレビについて書くことを通して何を伝えようとしているか、だんだん見えてくる。

【聞き手/文:境 治】
インタビューの「前編」はこちら

「仕事を超越した仕事」の魅力を伝えたい

-テレビについて書くとき、影山さんははっきりテレビを応援するポジションで書いてます。それは意識してるわけですよね。

そうですね10のうち9は褒めようとしてます。それは常に自分が持ってるルールです。10のうち1くらいは、救いのある批判にしようと思ってます。ケチョンケチョンに書かない。この人立ち直れないんじゃないか、っていう批判はしません。許せんぐらいひどいと思ったことは、書かないようにしてます。

-考えたらネットのテレビ番組についての記事はけなす方が圧倒的に多いですよね。

確かにネットは批判記事ばかりです。日を追うごとにひどくなっている。だったら褒めるタイプにはチャンスやんか、と考えているんです。
毎日新聞で「テレビ燦々」の連載を始めるときにも「基本褒めますけどいいですか?」と担当の方に確認した上で、自分で書きたいことを書いています。

-いつも感心するんですけどすごくテレビを見てますよね。ドラマを見るってかなり時間を食うじゃないですか。時間の捻出が大変じゃないですか?

それはもう、大変です(笑)。でもその甲斐はありますよ。最近は新聞社もかなりエンターテインメントの記事を扱うようになった。ある記者さんが言ってました「昔はこんなにエンタについて書いてなかった。60年代に「上を向いて歩こう」がアメリカでチャートのトップを取っても新聞は書いてない」と。それぐらいエンタに関して、新聞は軽んじてましたけど、今は扱うようになった。だから頑張ってドラマを見て書くと、今は仕事になるわけですよ。

-ドラマを批評するときに一番ポイントにしているところはどういう点ですか?

仕事だけど仕事を超越してるかどうか、っていうのかな。ドラマ作りが大好きだっていう集団が送り出してること、もの作りを楽しんでいることが滲み出てるかどうかに注目してます。例えば水田伸生さん(日本テレビのディレクターで「Mother」「Woman」などの名匠)のドラマ「ゆとりですがなにか」を「テレビ燦々」で書いたら喜んでくださって、サシで4時間テレビの話をしました。そんな人たちが集団となるからこそ送りだせる何かがある。
それを視聴者の皆さんにも感じてほしくて、チャンネル変えないで見てあげてほしくて「テレビ燦々」を書いています。

-影山さんの文章を読んでると、さっき(前編参照)おっしゃった「関西の矜持」を感じます。これは作り手が持っているし視聴者も感じてるんでしょうか。

持ってるんですね。視聴者も含めて「関西の番組がええねん」って思ってるわけです。関西の視聴者は、出張で遠くに行ったりすると「○○やってへん」と泣き叫ぶんですよ(笑)。関西の番組が生活に本当に染みついている。関西テイストの番組が日本全国どこでも見れると思っている節がある。エスカレーターもみんな右に立ってると思ってるし、関西中心で地球が回ってると思ってるぐらい。愛すべき関西人ですよね。
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関西のテレビは東京とここが違う!

-関西ローカルの矜持の中身は何でしょう?

「対東京」じゃないでしょうか。さかのぼると「11PM」も大阪制作の火曜日木曜日が面白かっ
た。「EXテレビ」に引き継がれて読売テレビさんが一番関西らしさを出してましたよね。ベルトで番組編成して、自分らにも作らせいと。その姿勢が典型的な関西の矜持かも。本気出したらこの部分では東京に負けへんで。タイガースは巨人戦だけ本気出すぜみたいな(笑)。
「秘密のケンミンSHOW」は、読売テレビ制作で全国ネットで放送、なので応援したくなる。全国ネットの放送で「秘密のOSAKA」をやるっていうところがいいんですよ。
ただ関西ローカル全体への苦言も言わせてほしいんですけど、関西のぬるま湯に浸りすぎている。だから東京よりも新陳代謝が進んでない。大師匠がいっぱいいる。ひな壇に芸人が並んだら、関西の方が平均年齢が高いと思うんですよね。関西ローカルでは作り手たちがキャスティングで冒険をしないので。それは見る側の方が気づいてます。
同じことをかぶせてかぶせて笑いを取る天丼というのがありますけど「天丼もいい加減にせえよ」と。

-影山さんの学生さんたちはメディアに興味があってテレビをよく見てるようですが、それでもやっぱりネット中心にはなってるんでしょうか。

それは明らかになってます。ただ東京に行くと、そっちが主流じゃないですか。関西がある意味、遅れているのかもしれませんけど「TVer使ってる?」って聞いてもパラパラとしか手が挙がらないんですよね。
東京は1人暮らしの方が多いせいもあるんじゃないでしょうか。関西が東京と明らかに違うのは、お父さんとお母さんと仲いいのか、リビングルームで「相棒」がついていても一緒にいる。娘はしゃあないなというとこでYouTubeを見ている。空間は共にしてるんですよ。「だから先生、相棒に詳しくなっちゃって」と言う教え子もいます(笑)。
自分がいま見たいものをガツガツと見るわけでもないという接し方、それもテレビかなという気がしますよね。だから関西の若者はネットが一番っていうほどのものでもない。「テレビはオワコンですやん」という感覚ではなさそうです。
逆に作り手の方が卑屈になってるかもしれない。関西メディアの作り手は卑屈が過ぎるぞ、というのも言いたいとこかな。「どんだけ卑屈やねん」みたいな(笑)。
「調査によるとテレビ見てませんからね、若者は」と言うけど、東京の標本で関西もそれに当てはまると思ってるかもしれない。数字だけ見てどうとった数字かは見てないんじゃないか。グループインタビューで「さあ、今日は思う存分メディアを語ってください」と言われたらそれは構えたことを喋りますよ。
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作り手の楽しさは視聴者に伝わる

-最後に、最近の影山さんはテレビ全体について、厳しいニュアンスを出している気がするんですけど。

まだバレるほど厳しさを表に出してないはずだったんですけど(笑)。在阪局の、ある全国ネットを作ってるようなプロデューサーが「影山さんは楽しそうな時代でよかったですね。僕は番組を楽しいと思って作ったことが3回しかない」と言うんです。彼が真面目すぎる部分があるのかもしれないけど。番組作りは面白いよねっていうのに、もっともっと作り手のみんなに気づいてほしいし、楽しんでる姿に視聴者は気づくはずだと僕は信じている。もちろん身内ネタや楽屋オチになってはいけませんけど。わからんけど楽しそうよね、というのは伝わる。
「ブラタモリ」でタモリさんが言ってる地形のことなんて半分以上わかんないでしょ?わからんけどタモリさんが楽しげな感じでいいな。それでテレビはいいと思うんです。いろんなことを吸収したいと思えば本読めばいいわけです。テレビは、エモーション。今日もしんどかったけど明日楽しく生きていきたいよね。
そういうテレビはこれからも続いてほしいし、それが減ってる。減ってるけどまだどうにかなるんちゃうかなと思うから、辛口入れてみた。もうどうしようもないと思ったら辛口入れないし。
ボチボチ褒めるもんが少なくなってきたな、ていうのも正直あります。なんとかなるんじゃないかっていう愛情を込めて、辛口をまぶしていったら効果があるんじゃないか。

-最近は知識系情報系の番組が増えたなっていう気がします。それに関してはどうでしょう?

それに関しては、嫌ですね(爆笑)。
古巣の話で恐縮ですが、昔の同僚たちから聞いた話も含めてお話しますと、MBSで「ちちんぷいぷい」を始めるときに、メインパーソナリティの角淳一さんが「情報はあんまりやりたくない」とおっしゃったらしいんです。元々角さんはラジオ畑の人ということもあり、「テレビでラジオをやる」っていうコンセプトでスタートしました。MBSはラジオ好きの社員が伝統的に多く、スタッフも皆モチベーションが高まっていたはずです。情報を控えめにして、人間味溢れたエモーショナルな部分を前に出す番組として「ちちんぷいぷい」は始まりました。ただ実はしばらく視聴率が伸びなかったんです。
それで情報を少しづつ多めに入れるようになると、数字もじわじわ上がったんです。もちろん、基本のコンセプトは変えることはありませんでした。「人」を前に出す番組のエッセンスを、情報にまぶして制作していったんです。
「私は角淳一です。あなたはどなたですか」と角さんがオープニングで言って番組が始まっていました。「これがラジオなんだ。”あなたがた”に向けるのはテレビ。あなたに向けて放送するのがラジオだ。1人のあなたに向けて番組を作る」それが「ぷいぷい」コンセプトだと思います。
今は出演者やスタッフの多くが変わりましたが、角さんの思い、番組当初から関わってきた人々の気概は今も受け継がれてるんじゃないでしょうか。


テレビの作り手だったからこそ、作り手へのエールをこめて書いている影山氏。最近、少し辛口なのが気になっていたが、その裏にも思いがたっぷりこもっていたことがわかった。エンターテインメントを見る楽しさ、作る楽しさを学生たちにも業界の後輩たちにも明るく伝える影山氏の記事を、みなさんもぜひ楽しんでもらえればいいと思う。
影山貴彦 プロフィール
かげやま・たかひこ 同志社女子大学メディア創造学科教授
1962年生まれ 早稲田大学政治経済学部卒 毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職。MBS在職15年半、テレビ・ラジオの編成・制作畑を歩む。代表プロデュース番組に「MBSヤングタウン」。著書に「テレビのゆくえ」、「影山教授の教え子が泣きにくる。」など。「影山貴彦のテレビ燦々」(毎日新聞)、「影山貴彦のテレビのホンネ。頑張れ!関西ローカルTV」(関西ウォーカー)コラム連載中。「カンテレ通信」(関西テレビ)コメンテーター。ABCラジオ番組審議会委員長も務める。
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