読売テレビがお届けする、テレビを楽しむ読み物メディア

インタビュー:テレビを書くやつら【5】

マイナビニュース・中島優さん(前編)〜日本でいちばんテレビを書く男〜

境治 2019.05.29

正確なデータはないし、他の誰と比べればいいかもわからないが、ほぼ間違いないと思う。いま日本でいちばんテレビについて書くライターは、マイナビニュースの中島優氏のはずだ。その名前は覚えてなくても、ネットでテレビに関する記事を日々なんとなく読んでいる人なら、マイナビニュースは目にしているはずだ。そのテレビ部門の統括として、多い時は一日に十数本の記事を書くのが中島氏だ。彼は平成から令和に元号が変わるタイミングで、平成のテレビを振り返るインタビュー記事を企画している。子どもの頃からテレビっ子だったという中島氏にとっての平成のテレビ、令和のテレビについてじっくりお話を聞いた。

【聞き手/文:境 治】

テレビっ子が就いたテレビについて書く仕事

聞き手・境治(以下、S):まず中島さんのご経歴を教えてください。

中島優氏(以下、N):放送関係の業界紙で働いた後、ラジオ局で営業をやって、それからいまのマイナビに入りました。

S:マイナビニュースはマイナビの一つのセクションですよね?マイナビは就職や転職の会社だけどマイナビニュースはそれと関係なくて不思議なメディアな気がします。

N:毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)が出版していた雑誌が源流なので、ニュースサイトはその延長線なんです。

S:中島さんは、マイナビニュースに入ってから書く仕事に就いたんですか?

N:業界紙にいた時に5年間、記者をやってたのでそのベースはありました。マイナビニュースにはエンタメジャンルのテレビ部門を受け持つために入社したんです。

S:もともとテレビ好きなんですか?

N:ですね、子供の頃からテレビが好きでバラエティをよく見てきました。最初に好きになったのは「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」。その裏だったので当時一世を風靡した「オレたちひょうきん族」は意外に記憶にないですね。その後もずっと世間一般の人よりは見ていると思います。ただ小学校低学年までは9時以降は見てはダメだったんですよ。

S:ええー?!意外に厳しい家庭ですね!

N:だから8時台の「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!」と「ダウンタウンのごっつええ感じ」は見れたけど「とんねるずのみなさんのおかげです」は見れないなんて時期があって、その話を最近港浩一さんにしたら驚かれました(笑)。高学年になると9時台まで見れるようになったんですが、10時からやってた頃の「ボキャブラ天国」は見られなかった。見たくて仕方なかったですね。


S:一番強く印象に残っている番組は?

N:邪道かもしれませんがTK(小室哲哉)ブームの時、「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」を見ていて、ダウンタウンさんのトークが異様に面白くて毎回大爆笑したのが記憶に残っています。そこから松本人志さんの本を読んだり、「ごっつええ感じ」や「ガキの使いやあらへんで」を見たり、変な順番でダウンタウンを追いかけました。


S:見る時間に制限があっても乗り越えながら頑張って見ていたテレビっ子だったんですね?

N:テレビっ子だったって親に言われます。だからいま、テレビについて書く仕事ができるのはありがたいですね。

聞き手の境治氏(左)と中島氏(右)

作り手の取材が好きで会えたレジェンドたち

S:いろんな題材を書いてらっしゃいますがどんな基準でネタを決めるんですか?

N:担当してる局のリリースが出たらすぐに書いたり様々ですが、制作者の話を聞くのが好きなのでそこは能動的、積極的にやっています。

S:そう、中島さんの記事は制作者の記事をよく読んでいますよ。作り手の話を聞くのが好きなんですか?

N:好きですね。それと、何か連載を立ち上げるように言われて、他のメディアがあまりやってないので始めたのもあります。

S:作り手の話を聞く時に中心に据えていることは?

N:作り手の方って話したがりなので、質問する以上に返ってくる。だから気持ちよく喋ってくれることを意識して聞くようにしています。うちは長文記事を載せるので、それをわかって喋ってくれてるのかもしれません。

S:作り手の話で面白かったことは何かあります?

N:「家、ついて行ってイイですか?」のテレビ東京・高橋弘樹さんが「ネットに載ってない情報を意識する」とおっしゃってたことですね。その話を聞いて、我々はネットニュースだからこそ、あらためてネットに載ってない情報を書かなければいけないと意識するようになりました。

S:子どもの頃からテレビっ子だと、自分が会いたい人に会えたりしました?

N:会いたい人には会えました。レジェンド的な人たちです。フジテレビの石田弘さん、港浩一さん、三宅恵介さん、日本テレビの土屋敏男さんにも会えました。ぼくにとっては芸能人に会う感覚です。それから三谷幸喜さんのドラマのずっとファンで、大学も三谷さんに憧れて日大芸術学部に入ったくらいなので、お会いできたのは感激でした。

S:バラエティで最近推してる番組は?

N:ベタですけど「水曜日のダウンタウン」。あれは制作者の人もみんな面白いっておっしゃいますね。演出や見せ方、あとパッケージとして素晴らしい。

S:今の作り手にとって大事なところが入ってるわけですか?

N:土屋さんがおっしゃっていた「塀の上を歩く」感じでしょうか。ギリギリを歩いて、時に壁から落ちてもTBSが守ってくれてる感じもいいですね。そういう周りの状況も含めていいと思います。

「平成テレビ対談」で見えたテレビの進化

S:ここで今回いちばん聞きたいことを。この4月、平成が終わるタイミングで「平成テレビ対談」という労作を連載してらっしゃいました。バラエティ、クイズ、ドラマ、ドキュメンタリー、音楽番組、アナウンサーの6つのテーマで2回ずつ、それぞれの分野のレジェンドたちに対談してもらう濃い企画でした。ライター陣も中島さんだけでなく木村隆志さんや戸部田誠さんが担当した回もあって力が入ってましたね。

N:平成があと一年となったころに、平成のはじめの頃から今も頑張っている番組のキーマンを取材する「平成を駆け抜けた番組たち」という企画があって、その中で88年にスタートした「月9ドラマ」も扱おうと木村隆志さんに相談しました。そしたら、どうせならドラマ全体を振り返っては?と木村さんが提案してくださった。それに乗ってスタートした連載です。フジテレビとTBSのレジェンド、山田良明さんと八木康夫さんが出てくれて。それとは別にてれびのスキマさん(戸部田誠氏)に平成のバラエティを振り返るコラムをお願いしたら、彼が対談取材を発案されたので、木村さんの企画と合体してクイズとバラエティをやってもらい、だったら他のジャンルもカバーしようとドキュメンタリー・音楽番組・アナウンサーまで進んだのです。だから全然計画的じゃなかった。

S:でも結果、貴重なシリーズになりましたね。みんな読んでますよ。

N:まあ業界の人向きかもしれませんね。クイズの回で王東順さんと五味一男さんが初対面だったのは驚きでした。業界のみなさんにも感心してもらえたようです。

S:一通りやっての感想は?

N:そうですね、ドラマでは今の作り手を厳しくおっしゃってるのが印象的でした。志が感じられない、テレビは文化のつもりだったのにと。バラエティの方が規制でつまらなくなったと言われがちですけど、レジェンドたちの意見はそうでもなかった。テレビはつまらなくなったと言いますがと聞くと、今の方が面白いと言う。ドキュメンタリーの方はまた悲観的で、ジャンルごとに違うんだなと。

S:バラエティは今も元気と受け止めていいんですかね?

N:ぼくが話を聞く人がヒット番組を作っている方ばかりだということもあるかもしれませんが、そう思います。八木亜希子さんが、昔のご自分の出演番組を見たら全然面白くなかったとおっしゃっていて。いまは演出技術も進んでいるし、面白くなってるんじゃないかと思います。

S:なかなかわからないけど、進化してきたんでしょうね。

N:とくに、各局を俯瞰している作家さんはそう言います。そーたにさんとか中野俊成さんは、より強調しておっしゃっていた。ドラマはマーケティング志向になってつまらなくなったとよく言われますけど、作ってる人たちは楽しそうに作っていてマーケティングで苦しいとは言わない。自由にのびのびやってますね。マーケティングでがんじがらめでも立ち回れる人は立ち回れるということだと思います。

S:年配層を意識してゴールデンタイムでも温泉や健康の話ばっかだとよく言われますが。

N:割り切ってるんじゃないですかね、そういうことはそういう人に任せて。「水曜日のダウンタウン」なんか世帯視聴率を取らなくてもコアなとこ取れればいい、という姿勢でやってるみたいですし。


中島氏は、常に前向きだ。テレビっ子が、テレビを信じて、テレビを応援したくて書いている。テレビは子どもの頃も面白かったし、今だって面白い。記事の背景にそんな信念が潜んでいるから、作り手たちを勇気づけ励ます力を持っているのだ。紹介した「平成テレビ対談」シリーズはもちろん今も読めるので、ぜひ目を通してもらえればと思う。後編では、令和のテレビはどうなるかをお聞きする。
プロフィール
中島 優(なかじま・ゆう)
1983年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部卒業後、制作会社、放送業界紙、ラジオ局を経て、15年にマイナビ入社。マイナビニュースでテレビ・ネット配信番組関連などの記事を担当。
読みテレ 公式SNSアカウント
この記事を共有する