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【連載】影山貴彦のウエストサイドTV【33】

「二月の勝者」から考える本当の勝者とは

2021.11.30

影山貴彦
「二月の勝者」から考える本当の勝者とは
©ytv
ドラマ「二月の勝者」に、どっぷりはまっています。中学受験をテーマにしたドラマの主人公・黒木蔵人を演じているのは、柳楽優弥さんです。柳楽さんのスーパー塾講師ぶりが、この上なく魅力的で、「子供を合格に導くのは、父親の経済力と母親の狂気」など、大いに刺激的なセリフも飛び出しますが、デフォルメの中にある真理を感じることも多く、私も教育者のひとりとして、時に深く頷かされています。
 
原作は、高瀬志帆さんが描く同タイトルの漫画で、現在も連載中です。原作とドラマで異なる部分もありますが、それも含めて楽しんでいます。番組のホームページでは、「柳楽さんに『黒木』を演じて頂けるなんて、人生何が起こるか本当にわかりません。毎日ご飯が美味しいです」と語っているほど、高瀬さんは柳楽さんの大ファンのようです。原作者から最大級の賛辞を受ける柳楽さんも、役者冥利に尽きる思いかもしれません。
 
タイトルの「二月」は、中学受験がこの月に集中しているからでしょうし、「勝者」とはそのまま捉えれば「合格者」ということになるのでしょう。作品のなかでも黒木先生は、「全員合格させます!」とタンカを切っていました。誰もが「不合格」よりも「合格」の方がいい。確かにそれは当たり前ですが、勝者イコール合格者という図式では、高瀬さんもドラマも最終的には描かないような気もしています。
 
私自身、受験や就職試験など、失敗を重ねてきた人間です。その時はこの上なく辛かったのも事実です。けれど、負の感情が時間を経ても昇華されず、今でも嫌で仕方がないかというと、そうでもありません。振り返ってみて、まんざら悪くなかったかなとも思うのです。もちろん、「あの時不合格で良かった!」とまではゆめゆめ思えませんが(笑)。
 
放送局から大学に職を移して、若い人からの悩み相談を受けることが格段に増えました。そんな時、学生たちの心に響いているのは、こちらの成功談よりも失敗談だなとつくづく感じます。関西という土壌がそうなのかもしれませんが、自らの失敗を笑いに転化できる人が、他の地域よりも多いようにも思います。
 
だからといって、「失敗してもいいんだよ」と受験生たちにメッセージするのもまた違うでしょう。「合格」したいですよね、そりゃそうです、当たり前です。皆さん、本番まで1日、1日 、どうか体に十分気をつけて頑張ってくださいね。そして、ドラマがどんな結末を用意してくれるのか、今後の展開を楽しみにしておくことにします。


執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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