影山貴彦のウエストサイドTV 第41回 『オクトー』の飯豊まりえが見逃せない

2022.08.03

影山貴彦のウエストサイドTV 第41回 『オクトー』の飯豊まりえが見逃せない
©ytv
幼い時から空想好きでした。小学校低学年の頃には、何も言葉を交わさなくても相手の気持ちが分かったら、さぞかし便利だろうなと考えていました。頭の上に、「あなたのことが好き!」とか、あるいは反対に、「コイツだけは好きになられへん!」といった感情が文字になって出てきて見ることができれば、面倒なもめ事にならなくて済むように思えたのです。
 
ですが成長するにつれ、それは決して便利なものではなく、むしろ社会生活を円滑に営めなくなるおそれが出てくるということに気づいたのです。人間は誰しも本音で生きているものではありません。言葉とは裏腹の感情や、敢えて白、黒はっきりつけない表現をすることで、スムーズに生活できている事実を大人の私たちは十分知っているのですから。
 
少し横道にそれますが、関西では、「行けたら行くわ」という表現があります。飲み会とかの誘いを受けた時の返事として重宝されるのですが、この場合かなりの確率で、その人が飲み会に行くことはないのですね。あまり気が乗らないけど、無下に断るのも角が立つので、「行けたら行く」と答えるわけです。そして言われた方も、「あ、この人来ないな」と柔らかく理解するのです。ま、でも時に「行けたら行く」と言っていたはずの人が本当にやってきてびっくり!ということもあるものですが(笑)。
 
飯豊まりえさん主演の刑事ドラマ「オクトー~感情捜査官 心野朱梨~」(読売テレビ制作)を楽しみに見ています。飯豊さん演じる主人公の刑事は、なんと人の感情が「色」で見えるのです。これはまさに、私が小学校の頃に空想していたパターン!放送前から俄然興味が高まりました。もちろんドラマは、私が子供の頃に考えていた幼稚なレベルではありません。取調室で向き合う相手の細かな感情を「色」で感じ取り、やがて真犯人を見つけ出し事件を解決に導くのです。毎回画面一杯に張り詰める独特の緊迫感がたまりません。飯豊さんは、実年齢ではまだ24歳の若さですが、役柄の上では28歳の設定です。それに相応しい少し大人びたキャラクターが、今の彼女によく似合います。放送中のNHK朝ドラ「ちむどんどん」でもヒロインの恋敵?としての好演が光る飯豊さん、ここしばらくの間に一皮も二皮も向けたと感じているのは、私だけではないでしょう。
 
それにしても。1日でいいから人の感情が読み取れたら面白いだろうな、と60歳を前にしていまだに夢想してしまう私なのでした。


執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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