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影山貴彦のウエストサイドTV【15】

コロナ禍、芸人にはもっと笑わせて欲しい

影山貴彦 2020.05.27

 「アフターコロナのテレビはどうなる?」と、メディアからコメントを求められることがたびたびあります。このコラムでもよく記している通り、「これからのテレビのテーマは人に優しくがキーワード」と答えるようにしています。かなり希望的観測を込めて申し上げているわけですが、新型コロナウイルスのため、私たちの生活が大きな影響を受ける以前から、テレビを見るたびにイライラ感を募らせ、不愉快な思いをする視聴者が目立って増えていたことに危機感を抱いていたのは、私だけではないでしょう。
 2019年10月に当コラムで記した「テレビはイライラ社会を増幅させていないか?」を読んでくださった方も多く、今、「影山貴彦」で検索すると、一番に関連ワードで出てくるのが、「イライラ」となる程です。当時悪質な「あおり運転」の映像をこれ見よがしに何度も放送する番組が数多くあり、私たちの気持ちは、どんどん「負」の感情へと導かれていたことを覚えていらっしゃる方も多いはずです。
 「緊急事態宣言」は5月25日に全国的に解除となりました。ただその有無にかかわらず、新型コロナウイルス第2波の訪れに最大限の注意を払いながら、日々の生活を営んでいく必要のある私たちは、ここのところテレビに触れることが多くなりました。学校が休校となったり、テレワーク勤務のため在宅率が高まったことで、昼間の視聴率の高まりが顕著だとする調査結果が、ビデオリサーチにより数日前に発表されたところです。時間帯によっては、昨年の同時期に比べ10ポイントもスコアを伸ばしているそうです。民放の多くが情報ワイド番組を放送している時間がそれに符合します。
 まさかとは思いますが、念のために申し上げておきましょう。情報ワイド番組関係者は、ゆめゆめ「自分たちの番組が支持されている」と、性急に思わないでいただきたいところです。もちろん、見応えのある企画も中にはあることでしょうが、等身大の実態としては、さまざまな不安を抱えた視聴者が、藁にもすがる気持ちでチャンネルを合わせる頻度が高くなったということでしょう。ですが残念ながら、その結果見せられるのは、人々が安心感を得られる内容とはなっておらず、よりマイナスな気持ちが心の中に澱んでいくとことに繋がる番組が目立っているように思えてなりません。受け手の不安や怒り、悲しみをより煽ることで視聴率を稼ごうとしている、と表現すると少し言い過ぎでしょうか。
 私たちが今一番必要とするのは、確実な情報です。思い込みや、当てずっぽうで司会者やコメンテーターが井戸端会議のごとく長々と喋ることに付き合わされるのはもう勘弁いただきたいのです。特に関西では、芸人がコメンテーターの役割を演じる番組も多くあります。私は芸人はこの上なく大好きで、リスペクトしていますが、芸人の「単なる感想」に過度に依存した情報ワイド番組は、最近見ることが減りました。もちろん司会者、コメンテーターとして有能な芸人も確実にいらっしゃいますので、その全てを決して否定するものではありませんが、コロナ禍の今、視聴者が芸人たちに求めるのは、「明るく笑わせて欲しい」という思いが最優先なのだということに、作り手はもっと気づいて欲しいのです。芸人が大好きだからこそ、より強くそう思うのでしょう。芸人が芸人らしく振る舞える受け皿となるような番組を今こそ各局はしっかりと企画していただきたいところです。実は、それはコロナ以前からテレビの課題として言われてきたことなのです。多くの芸人たち自身が「テレビで視聴者をもっと笑わせたい!」と強く望んでいるのです。
 いずれにせよ、テレビがよく見られるようになっていることは、まぎれもなく業界にとって好機ではありましょう。「チャンスカード」を手にしている間に、改革できることは他にも数多くあるはずです。テレビに関わる全ての人にエールを送っています。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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