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影山貴彦のウエストサイドTV【3】

「過激さ」から「やさしさ」へ。テレビの曲がり角

影山貴彦 2019.06.04

 大学で学生たちと接していると、こちらが教えられることが少なくありません。
「センセイ!どうしてテレビって、刺激的なことばかり追い求めるんでしょう?ワタシたち、別にそんなに望んでないのに・・・」
 矛盾するようですが、教え子の言葉はボクには、とても刺激的に響きました。関西のみならず、今のテレビは「過激さ」を売りにする企画が目立ちます。そしてその種のバラエティ番組を多くの視聴者は喜んで見ているという認識でした。そして、ボク自身正直申し上げて「嫌いでない」人間のひとりです。だからこそ、彼女の言葉に心が動いたのです。
 続きです。
「もういいよ、ってこっちは思っているのに、これでもかとガンガン押してくる番組が多くて。見ていて、とっても疲れるんです」
 目からウロコ、とはこのことでしょう。自らが作り手の時代を含めて、テレビは視聴者が飽きないよう、「もっともっと」と演出を過激にしてきた歴史があります。もちろんすべての番組に当てはまるわけではありませんが、視聴者がそれを求めているのだ、と思い込んできた部分も否定できません。
 でも、どうやら今、受け手側、特に若者を中心に価値観の変化が見られるのではないでしょうか。先だって、某所で今の社会のキーワードは、「やさしさ」と「仲の良さ」ではないか、と述べたところ、かなりの方々から賛同のコメントを頂戴しました。大手広告会社も、まさに「やさしさ」や「仲の良さ」を意識してコマーシャルを作っているのだと教えてくださった方もいました。確かに、携帯会社の人気コマーシャルなど、ユーモアにあふれた友情ぶりが前面に出ていますし、コンビやユニットを組む芸能人たちにおいても、互いの仲の良さがにじみ出た面々が人気を博しているともいえるでしょう。
 そういえば、ひと昔前までは、「仕事は一緒でも、プライベートは全く別」と言い切る芸人たちが目立っていましたが、今では「休日も一緒に遊びに行く」とか、「コンビで飲みに行く」という声を若手を中心に聞くことも増えてきました。ボクが作り手の頃は、コンビ芸人たちは必ずといっていいほど、それぞれ別々に局に入り、収録後は個々に帰っていったものです。時の流れを感じます。
 そんなエピソードを紹介すると、「だから今の若者は頼りないんだ!」「仲良しこよしで仕事してどうする!」などと、彼らを批判するネタにもなりそうですが、少し冷静に考えてみることも必要でしょう。おっさんど真ん中世代のボクとしては、もちろんそんな批判にも一理ありとは感じてはいますが、もしかしてその考えは、既にアウトオブデイトなのかもしれない、そう自問自答してみることも大切でしょう。
 未来を担う若者たちに無条件に迎合する必要はありませんが、こうした彼らの嗜好性は、これからのテレビを考える上で、大きなヒントになると思うのです。
執筆者プロフィール
影山貴彦 かげやま・たかひこ
同志社女子大学メディア創造学科教授(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビのゆくえ」「おっさん力(ぢから)」など
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