【広島県】呉市ではメロンパンがコッペパンで、メロンパンはクリーム入りで、コッペパンはただのパン？

特殊詐欺の容疑者がアパートに隠れているとの情報を得たケンミン刑事・神宮寺剣と部下たち。張り込み中に若手刑事・安井蓮が勝って来たのは牛乳となぜかメロンパン？「おいしいと評判なんですよ」と嬉しそうに言う安井に「張り込みは牛乳とアンパンと決まってるんだよ」と主任刑事・田中三郎が不満げに言う。ここで容疑者がアパートから出てきた！

逮捕する刑事たちに、自分は主犯ではなくボスの名前も教えるから罪を軽くしてくれと懇願する容疑者中本。ここで「では出身県を教えろ」と迫る安井刑事に「それだけは言えねえ」と黙秘する中本。そう、ケンミン刑事の世界ではなぜか刑事たちが出身県を言えと迫り、なぜか容疑者は絶対に言わない。他はベラベラ喋ってるじゃん！

連行する刑事たちに「その前に何か食わしてくれよ」と図々しい中本に、「しょうがねえな」とさっき安井が買ってきたメロンパンを渡す田中。手にした中本が「コッペパンじゃん！俺の好きなやつ！」と喜ぶ。いやいや、それメロンパンですけど。そこで神宮寺の目がキラーンと光る！「ふるさとは、ただ一つ！」出たー！ケンミン刑事・神宮寺のプロファイリング！

「そこは路面電車編成数・輸送人員日本一、スポーツ観戦率日本一、そして中本という苗字が日本一多い県！君は、広島県民だ！」「なんでわかったんだー」と叫ぶ中本に神宮寺が追い打ちをかける。「まだ終わりじゃないぞ。」一同固唾を飲んでいると「呉市の出身だ！」とトドメを指す。「なんで呉市まで分かったんだ！」と崩れ落ちる中本。県名からさらに出身市まで言い当てた、すごいぞケンミン刑事！

メロンパンを手に神宮寺が解説する。「これは一般的にはメロンパンと呼ばれる。だがコッペパンと呼ぶのは、広島県の中でも呉市民だけだ！」ええー？メロンパンをコッペパンと呼ぶだけで驚きなのに、それが呉市だけって、どういうこと？

そこで広島県呉市に行って聞き取り調査してみた。まずはいかつい感じのお花屋さんにメロンパンを見せると「コッペパン」と即答。「でもこれメロンパンですよね？」と聞くと鼻で笑いながら「メロンパン違うよ」と全否定。「47年コッペパン！」とダメ押しのように言う。

商店街にいた呉レディに聞いてもやはり「コッペパン」と回答。「いえこれはメロンパンですよ」と迫ると「コッペパンですよ」と大混乱。「急に不安になるね」惑わせてすみません。

次にメロンパンとコッペパンの写真を並べたボードを見せて聞いてみた。農作業中のご家族に「コッペパンはどっち？」と聞くと全員が「こっち」と指差すのはメロンパンの方。コッペパンの方を「ではこっちは？」と聞くと「ただのパン」と言う。

他の呉市民に聞いても全員がメロンパンをコッペパンだと言い張る。ではパン屋さんはどうだろう。お店の人が「コッペパンです」と指差したのはやはりメロンパン。札にはご丁寧に「コッペ」と表示されている。「昔からずっとコッペパン」

しかも「メロンパンといえばラグビーボール型」と言う人も出てきて何が何だかわからない。どうやら鍵を握るのは「メロンパン」という名のパン屋さんにあるらしい。そのメロンパン本店に行くと、メロンパンと表示された楕円形のパンを発見。中にはクリームが入っており、我々の知るメロンパンとは程遠い。

お店の人の話によると、ラグビーボール型のパンは昭和11年からあり、マスクメロンが日本に入る前だった当時はマクワウリがメロンと呼ばれていて、形状が似ていることからメロンパンと呼ばれるようになった。

同じ頃登場した他県で言うメロンパンは、すでにラグビーボール型パンがそう呼ばれていたので、コッペパンと呼ぶことになったそうだ。老舗だったメロンパン本店は多くのお店にパンを卸していたため、このお店での呼称が呉市中に伝わった。かくて、我々で言うメロンパンをみんながコッペパンと呼ぶようになったのだ。

メロンパンの謎は解決し、部下たちに諭す神宮寺。「自分の知識に頼らず常に疑うのが刑事だ。ただ一つだけ間違いないことがある。このメロンパンは絶品だ」とカッコいいようなピントがずれたようなことを言って終わった。確かに、日本中がメロンパンをメロンパンと呼ぶわけではないのはよーくわかったけど、なんか変なの！

【文：境治】