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中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【12】

青春を賭けた野球にお笑いで恩返し!「孝行球児」

中西正男 2020.06.11

野球に青春をかけた得コータロー(30)とメイデン古茂田さん(34)のコンビ「孝行球児」。特に、古茂田さんは愛知の愛工大名電高校、創価大学、Panasonic電工SUNXと野球エリートの道を歩み、プロで活躍する直属の後輩も多数います。ネタにも野球の要素を盛り込み、とことん野球に特化した活動を展開しますが、二人に大きな希望を与えたのが昨年の「キングオブコント」だったと言います。

(取材・文:中西正男)

―コンビ結成のきっかけは?

得:出会いはワタナベエンターテインメントのお笑いスクールでした。在学中は別々のコンビだったんです。ただ、個人的に仲も良かったし、卒業したタイミングで互いのコンビが合体して4人でカルテット的に活動をすることになったんです。
そこからそれぞれの相方が抜けて、結局、残ったのが僕らだったという流れでした。この二人で正式にやっていこうとなったのが2016年10月でした。
二人とも野球をやってたんですけど、最初は「果汁」という野球に何の関係もないコンビ名でコントをやってたんです。
当時は事務所に入ってなかったので、ある日、サンミュージックのオーディションを受けに行ったら、そこで審査員の方が相方の経歴を見て「エッ!?甲子園に出たの?じゃ、それを生かした方がいいと思うよ」とアドバイスをくださいまして。
それを機に、一回思い切って“分かる人には分かる”かなり入り組んだ野球ネタをやってみたんです。それが、思いのほか、手ごたえありまして、そうなると、名前もしっかりと野球に寄せた方がいいなとなったんです。
コンビ名の候補をいくつか考えて、最終的に、誰かに判断をしてもらおうと。そこで、ジャッジをお願いしたのがプロ野球選手の皆さんだったんです。
相方は、今も学生時代の関係とかでプロ野球選手とお付き合いがあるので、その関係で聞いてもらいまして。

古茂田:高校の後輩にあたるのが西武の十亀剣投手とか、大学の後輩はヤクルトの“ライアン小川”こと小川泰弘投手とかソフトバンクの田中正義投手だとか。そういう繋がりで、コンビ名を選んでもらったんです。

―構成作家さんとか先輩芸人とかではなく、プロ野球選手に?

古茂田:そうなんです、プロ野球選手と同じ意識で動きたいなと(笑)。野球選手の感覚で決めてもらおうと思って、頼みました。まさに、コンビ名選びもそうですけど、本当に野球を通じていろいろな人にお世話になってきましたし、何とか、恩返しをしたい。そういった孝行ができるようにという思いを込めて、この名前は考えたんです。じゃ、これを選ぶ選手が一番多くて「孝行球児」に決まったんです。
―お二人とも野球に打ち込む日々から、なぜお笑いの世界に?

得:高校1年までは本気でプロ野球選手になれると思ってたんです。奄美大島の小さな学校だったんですけど、ずっと四番バッター。でも、高校(鹿児島県立大島高校)の野球部になって、人が集まってくると、いかに自分に才能がないかを痛感しまして…。
僕らの時は甲子園には行けなかったんですけど、6年前に母校が21世紀枠で甲子園に出場しました。後輩たちが頑張ってくれました。
ただ、僕は高校卒業してからも進学もせず、宙ぶらりんな生活になってしまっていたんです。そこで、小さい頃から好きだったお笑いの道に行こうと思って、東京にいる親戚を頼って上京し、ワタナベのスクールに入ったという流れです。

古茂田:小学校の頃にいわゆる“ボキャブラブーム”があったんです。テレビでその人たちを見た時に「世の中には、こんなに楽しい仕事があるんだ」と思いまして。
昔から、目立ちたがり屋ではあったので、体育館に同級生を呼んでコントをしたりはしてまして。なので、本当は中学を出たら、すぐに地元の愛知から大阪に行って吉本興業に入りたいと思っていたんです。だけど、当時、ちょうど松坂大輔さんが甲子園で大活躍した時で。ずっとやっていた野球で甲子園に行きたいという思いも強くなって、愛工大名電に進学して、実際、甲子園にも出ることができました。そこから、大学、社会人と野球をやることになったんです。
でも、ずっと、お笑いへの思いは野球をそれだけやりつつもありまして、ありがたい話、社会人でも僕にキャプテンをやらせようと会社は思ってくださっていたそうなんですけど、どうしてもお笑いがやりたいという思いを伝え、東京に出たんです。

―お笑いをやっていく中でも、野球が役立つことはありますか?

得:これはね、相方はしっかりあると思います。なんといっても、草野球を10チームほど掛け持ちで所属してますから(笑)。

古茂田:これは本当にありがたいことに、いろいろな方のチームからお誘いを受けまして。中山秀征さんが持ってらっしゃるチームとか「ロッチ」の中岡さんのチームとか。中山秀征さんに関しては息子さんのクラブチームのコーチもやらせてもらっているので、幾重にもお世話になっています(笑)。

左から得コータローとメイデン古茂田
―高校野球と言えば、今年は新型コロナウイルス禍で春も夏も全国大会ができなくなりました。

得:これは本当に難しい話です。致し方ないけど、やりきれない。かける言葉もありません。甲子園に挑戦して散るならば、まだあきらめがつきますけど、その場がない。これは、本当に気持ちの持って行きようがないと思います。

古茂田:高校で野球を辞める人が大半だと思うんです。そして、その辞める節目が甲子園を目指すというところ。あきらめがつかないと、次の一歩も踏み出せない。そこは本当につらいと思います。
また、僕は特別コーチとして、立正大学付属立正高校の野球部で指導もさせてもらっているので、実際、選手たちに何と声をかけたらいいのか、本当に難しいです。
ただ、今は地方大会を独自にやる流れもできているので、なんとか、自分たちの中で区切りをつけて、人生を進めてほしい。そんな簡単なことじゃないのは分かっていますけど、それでも前に進んでほしいと思います。

―今後の目標は?

古茂田:芸人である以上、やっぱり大事なのはネタだと思っています。そして、僕らはそこに野球という要素が強く乗っかっているので、全国の学校の野球部の名前を入れたネタを作ったり、野球選手を入れたネタを作って、それで一人でも多くの人に笑ってもらう。
それが僕らの特徴を出すことでもあるし、ひいては、今、少なくなっていると言われる野球人口を増やすことにも繋がればうれしいですし、何とか、僕らなりの野球への恩返しもできればなとは考えています。

得:野球に特化したネタで賞レースを勝つのは、難しいと言われてきました。好きな人は好きだけど、最初から興味がない人は受け付けないネタでもあるので。でも、去年の「キングオブコント」で「どぶろっく」さんが優勝されたのは、勝手にですけど、僕らにとってはすごく希望を感じることでして。
下ネタ系を打ち出すネタでも、しっかりと結果を残すことはできる。ある方向に特化していても、賞レースで勝つことはできる。下ネタと野球ネタ、これもまた全然違うものですけど、貫くことで道がひらける。そう信じて、僕らもこの道を突き進みたいと思います!

■取材後記
コロナ禍の時節柄、今回もリモート取材をしましたが、二人とも真剣に野球に打ち込んでいただけに、画面越しにも全ての言葉に“熱”がこもっているのが分かり、非常に気持ちのいい取材となりました。
「貫くことで道がひらける」。このことは全てのジャンルに通じるものだと思いますし、なんとか「道をひらく」二人が見てみたい。
接する者にそう思わせる人間性もまた、二人の大きな武器だと強く思いました。
執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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