アニメ『MIX2』の宣伝が何だか楽しそう。そのワケを女性3人組の宣伝チームに訊いてみた

2023.07.18

アニメ『MIX2』の宣伝が何だか楽しそう。そのワケを女性3人組の宣伝チームに訊いてみた
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毎週土曜日17時30分から読売テレビ系で放送中のアニメ『MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~』(以下、『MIX 2nd SEASON』)。
アニメに限らず、今や番組の宣伝にはSNSを使うのが当たり前だが、それを担当しているのが「宣伝」の人たちだ。
以前から『MIX 2nd SEASON』の宣伝は楽しそうだと感じていた。「どこが?」と聞かれると具体的にはよくわからないのだが、何となく自由な雰囲気が伝わってくるのだ。
そこでエンディングにクレジットされている3人にお話を聞くことにした。

部署が違う3人で組んだ『MIX2』宣伝チーム

――まずは自己紹介からお願いします。

福士 2015年入社、ビジネスプロデュース局・コンテンツビジネスセンターの福士まりかです。今の部署では2年目になります。

江坂 2016年入社、編成局東京編成部の江坂友希です。今の部署で3年目です。

大津 2020年入社、プロモーション部の大津結花子です。1年半前から今の部署で、他に『大阪ほんわかテレビ』『カミオト』の宣伝も担当しています。

――意外だったんですけど、皆さん部署が違うんですね。番組の宣伝って全部プロモーション部でやってるのかと思ってました。

福士 そうなんですよ、じつはみんな部署がバラバラで。でも、こういう形で宣伝チームを組むのは今回が初めてです。

江坂 近年、宣伝の形がだいぶ変わって。今まではキービジュアル(ポスターなど)をつくって、取材会を開いて、媒体に売り込んで、というのが基本だったんですけど、今はSNSの運用とか、けっこう手数を打つので、人手が必要な部分がありまして。DVD化や商品化も含めた全体の利益のことを考える宣伝担当と、地上波の視聴率を考える宣伝担当と、2人立てたほうが人手も2倍ですし、そういう体制でやっていこうという会社の判断だと思います。


――3人の中でリーダー的な役割は福士さん?

福士 そうですね。“宣伝プロデューサー”という立場になります。どういう形で宣伝をしていくのか、宣伝の全体の方向を決める役割なんですけど、宣伝を担当するのは初めてです。

江坂 私も初めてですね。でも、編成部にいながらも「宣伝ってこういうことするんだな」というのは何となく横目で見ていたので、「こんなことやりたいな」とか「こんなこともできるかも」みたいなことは思ってました。

大津 私はこの中でひとり大阪本社の勤務なので、本社周りのことをいろいろお手伝いしてる感じです。本社でないとできないこともあるので。
左から江坂さん、福士さん、大津さん
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左から江坂さん、福士さん、大津さん

――『MIX 2nd SEASON』の放送は今年の4月からですが、宣伝担当になることを聞いたのはいつですか。

福士 去年の5月ぐらいです。

――あ、そんなに早いんですね。

福士 『MIX 2nd SEASON』の情報解禁が去年の8月だったので、それに合わせて6月ぐらいから動き始めたという感じです。

――宣伝を担当するのが初めてというのも含めて、『MIX 2nd SEASON』の宣伝を担当することが決まった時はどんな気持ちだったんですか。

福士 やっぱり「大丈夫かな」っていう不安はありました。それこそ、どうやってリリースを出すのかとか、基本的なことも何も知らなかったので。

江坂 私は『タッチ』も『MIX』も好きだったから嬉しかったです。叔父が『タッチ』が大好きで全巻持ってましたし、学生時代に『MIX』の連載が始まって、その時から読んでいたので。

大津 私はプロモーション部内の“アニメ担当”なので、毎週土曜17時30分のアニメ枠を担当するのは基本的に決まっているんですね。だから、『MIX 2nd SEASON』に関わることに驚きとかはなかったんですけど、私の中ではこのお2人と一緒っていうのが大きくて。
――と言いますと?

大津 入社1年目の時に同じ部署で、メチャメチャお世話になったお2人なんですよ。で、2年目になる時に、お2人が東京支社に異動することになって、大号泣するぐらいの、ホントに大好きなお2人で。もう一緒にディズニーランドやUSJに行くぐらいの仲良しで。

福士・江坂 あははははは。

大津 だから別々の部署になってしまったお2人と、仕事でまた合流できるのが、私はすごく嬉しかったです。


――そうですか。じつはツイッターとかYouTubeとか、『MIX 2nd SEASON』の宣伝を見ていて、「すごく楽しそうだな」「仲良さそうだな」って思ってたんですよ。

福士 ええっ、ホントですか?  

江坂 どこでですか(笑)。


――ほんとに何となくです。だから、その理由を知りたくて今日はお話を伺いに来たんですが、やっぱり仲良しだったんですね。

福士 そうですね。もし、楽しい雰囲気が伝わってるなら良かったです。

宣伝のセオリーがわからず思いつくままに

――『MIX 2nd SEASON』の宣伝担当に決まって、「さあ、じゃあ、どうやって宣伝していこうか」という具体的な話になると思うんですが。宣伝方法は3人でアイディアを出し合うんですか。

福士 番組プロデューサーもいますし、製作委員会の意向もあるし、原作者のあだち充先生の思いもありますから、皆さんに相談しつつではあるんですけど、基本的には私たちで考えて、「こんなことやりたいんですけど」って提案しています。いちばん確認するのは「これってMIXのためになってますか」っていうことですね。

――宣伝方法としていくらおもしろくても、MIXのイメージや世界観を壊してしまったりしたら、逆効果ですもんね。

福士 そうですね。やっぱり製作委員会のお金を預かって宣伝しているという部分もあるので、おもしろければ何でもいいってことにならないですね。  

――そんな中で『読売テレビ アニメチャンネル』などで公開している“名シーンの切り抜き動画”というのは、どういうところから出てきたアイディアだったんですか。

江坂 あれは『MIX 2nd SEASON』の放送決定を発表した時にTVerでシーズン1の全話を配信することが決まったんですね。

福士 もちろん、シーズン2から見ていただいてもおもしろいんですけど、どうせならシーズン1を見ていなかった方にも、見ていただきたいなと。

江坂 それでシーズン1の名シーンの切り抜き動画を上げて、MIXに興味を持っていただいて、TVerに流れていっていただければと思ってました。


福士 それでTikTokにもアカウントを開設して、YouTube、TikTok、ツイッターに切り抜き動画を上げていった感じです。

江坂 公式で切り抜き動画を上げるのは、読売テレビでは初めてだったと思います。TikTokにはアニメの切り抜き動画が割と上がっていて、そこからアニメを知るっていう人がたぶんいると思ってたんで「それをやりたいね」って言って、切り抜きを出した感じです。


――どのシーンを切り抜くかも3人で決めたんですか。

福士 そうですね。それぞれが全24話を見直して、「ここがいいんじゃないか」「ここも絶対入れたい」みたいな感じでリストアップしていきました。

江坂 でも、それぞれが出したリストのままだと、さすがに多すぎて、かなり減らしましたし、「TikTokに出すならもっと短くしたほうがいい」っていうアドバイスをもらって、短くしたりもしました。

福士 最終的には1,2分の動画にしたんですけど、最初は5分ぐらいあったりしたんですよ。

--19本の切り抜き動画が上がってますけど、決めた基準はあったんですか。

福士 いちおう1話で1シーンみたいなイメージではあるんですけど。

大津 野球シーンあり、ラブコメシーンありで。

江坂 あだち先生ならではのお約束シーンみたいなものも入れつつ。私たちの中で“青春エモ”がテーマだったんですよ。だから“空”とか“校庭”とか、あだち先生の“間”みたいなものが伝わるシーンを選びました。  

福士 3人ともそんなに「野球大好き」って感じではないので、ちょっと野球のシーンは少なめかもしれないです。
TikTokで展開する切り抜き動画
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TikTokで展開する切り抜き動画

――ツイッターでは「MIX大喜利」でフォロワーの方からの回答を募集してますね。  

福士 ツイッターのアカウントはシーズン1の時からあったので、それを引き継ぐ形だったんですけど、シーズン1が放送されたのが2019年で、もう4年経ってたのと……。

江坂 その4年間で宣伝におけるツイッターの重要さ、ポジションっていうのもかなり違うので、「まずフォロワーを増やさなきゃね」っていう話をしました。

福士 やっぱりフォロワーの方がいないところで発信しても広がりがないですから、とにかく発信する媒体としての基礎体力作りみたいなところから始めないとっていう感じでしたね。で、放送は毎週ありますから、放送に向けてのツイートだったり、放送後のツイートっていうのはもうルーティーンであるんですけど、それ以外にも何か遊べるものがあるといいねっていう。そこから「MIX大喜利」を始めて。やっぱりフォロワーさんを増やすには発信し続けることが大事だったので。
ツイッター上で展開している「MIX大喜利」
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ツイッター上で展開している「MIX大喜利」

――その他にツイッターを運用する上で考えていたことはありますか。

江坂 ツイッターのアイコンも、普通は主人公の画像を使ったりすると思うんですけど、私たちは「パンチ」にしていて。パンチならタッチ世代の人たちにもわかると思いましたし、ツイッターに限らず、基本的にSNSの運用はパンチが遊んでるみたいな雰囲気を目指してて。

――パンチが発信してるみたいな?

江坂 そうです、そうです。だから、事務的な連絡みたいにならないようにっていうのは気をつけてますね。

福士 たぶん、宣伝のセオリーみたいなものってあると思うんですけど、それを知らないからこそ思いつくことは何でも言ってましたね。

豪華な声優陣だから実現させたかった『MIXラジオ』

――今回の宣伝の目玉は「MIXラジオ」だと思うんですが、これ、実現させるの大変ですよね。

福士 そうですね。やっぱり皆さんすごくお忙しいので。最後、ちょっとホントに諦めかけましたね。

江坂 ホントに最後ギリギリまで、バタバタしたんですけど、「やっぱりやりたいです」って、いろんな方にお願いして。

福士 めっちゃギリギリだったよね。

江坂 けっこうあのスケジュールで動き出そうっていうのはムチャだったんですけど、諦めきれなくて出演者、制作スタッフ、製作委員会の皆様にお願いして、何とか実現させた感じです。

――ラジオをやろうっていうのは、どういう理由だったんですか。

福士 やっぱりMIXってホントに豪華な声優の方が揃っていて、その声優ファンの方たちもたくさんいらっしゃるので、そういうコアな方々に向けて何かできないかなって考えた時に、「ラジオやりたいね」って。これはかなり初期の頃から言ってましたね。

江坂 今までMIXを知らなかった方にどう広げていくかも、もちろん大事なんですけど、一方でコアなファンの方たちも絶対大事にしなきゃいけないなと思っていて。声優のファンの方もそうなんですけど、やっぱりMIXって50代、60代の『タッチ』世代の方々に支えられてる部分も大きいんですよ。で、その方々はラジオ世代でもあると思うので、そういう方々に向けてもラジオがいいんじゃないかと思いました。


――基本的に出演されるのは2人の声優さんで。毎回いろんな組み合わせが楽しめるようになってますけど、あれはどういう意図なんですか。

福士 どなたか1人にMCを固定でお願いするっていうことも考えたんですけど、それだと皆さんお忙しいし、やってるうちに厳しくなるだろうなっていうのは思っていて。それで、「いろいろな組み合わせが楽しめるラジオっていいよね」っていうところで今の形になりました。

――内容についても3人で考えるんですか。

福士 いえ、そこまではさすがにできないので、ラジオ制作のプロの方にお願いしています。方向性とか「この回はこのキャラクターがポイントになる話数だからこの2人の組み合わせでいきましょうか」みたいな提案や相談はさせていただくんですけど、基本的にはお任せです。

――収録現場はどんな雰囲気ですか。

江坂 皆さんすごく楽しんでやっていただいて。打ち合わせの時にかなり盛り上がっちゃって、「もう早くラジオブースに入ってください」って思う時もありますね(笑)。今、分散収録だから、同じ作品に出ていながら、例えば会うのがシーズン1以来みたいな組み合わせもあるんですよ。

――へぇ。

江坂 そうすると、「久しぶりだね」みたいなところから始まって、結構盛り上がってしまって「あ、その話はぜひブースの中で」みたいなことはあります。

――今、MIXラジオのフル尺が聴けるのは、18時30分から配信が始まるツイッターのスペースだけですよね。あとでダイジェスト版がYouTubeとかに上がりますけど。あれはなぜなんですか。

福士 やっぱり、いちばんはオンタイムで見ていただきたいっていう理由です。もちろん、見逃し配信でもいいんですけど、放送が終わった30分後に、その回について好きな声優さんが話していたら、「これはオンタイムで見なきゃ」って思っていただけるんじゃないかと。

江坂 17時30分からオンタイムで『MIX 2nd SEASON』、そのまま『名探偵コナン』を見ていただき、データ放送のプレゼントにも参加していただいて、18時30分からMIXラジオを聴いて、もう一回配信で「MIX」を見てもらうのが理想です(笑)。


――例えば『MIX 2nd SEASON』の全話が終了したあと、MIXラジオがフル尺で聴けるようになることはあるんですか。

福士 何かの形に残したいなと思ってるんですけど。メチャクチャもったいないので。何かしらできたらいいなと。

江坂 そうですよね。出演者の中にはは「フル尺じゃないと俺のおもしろさは伝わらないから」とおしゃっている方もいました(笑)。

江坂 これから『MIX 2nd SEASON』がクライマックスに進んでいくなかで、多くの視聴者に見届けてもらいたいので、ラジオのフル尺を大放出してもいいのかなと。出し方含めて、やり方がいっぱいあるので、また皆さんに相談しないとですね。
人気声優たちが出演するMIXラジオ
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人気声優たちが出演するMIXラジオ

【取材・文 井出尚志】
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