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長谷川朋子の世界とコネクトテレビ論【6】

日本のドラマから恋の心理戦を学ぶ中国人~『LINEの答えあわせ』日中共同展開事情~

長谷川朋子 2020.02.13

2月1日(土)から読売テレビにて放送がスタートした 連続ドラマ『LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~』は日本と中国の合同プロジェクトである点も注目すべきでしょう。ジェネレーションZ世代の若者から支持される中国の大手配信プラットフォーム・bilibili(ビリビリ)との同時配信が展開され、第1話放送開始から16時間で100万再生を突破。日本の恋愛ドラマからSNSを使った恋愛Tipsを学びたいというニーズが満たされている様子です。「世界とコネクトテレビ論」の第6回目は連続ドラマ『LINEの答えあわせ』を事例に日中共同の番組展開事情を解説します。

東京の「一日料理教室」で出会った男女7人の恋愛模様が描かれるドラマ『LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~』

MAU1億ユーザーを抱える中国動画配信プレイヤーのbilibiliと

日中共同制作による番組事例がここにきて増えつつあります。連続ドラマ『LINEの答えあわせ』もそのひとつ。中国では韓国ドラマなども人気がありますが、日本好きな若者も一定層います。『LINEの答えあわせ』が同時配信されているプラットフォームbilibiliはそんな日本のアニメやドラマが好きな若者に向けた正規コンテンツが多く提供されています。

bilibiliの月間アクティブユーザー数(MAU)は1億人に上ります。米国では1990年代後半から2000年代に生まれたデジタルネイティブの若者を「ジェネレーションZ」と呼び、中国では「90後(ジョウリンホウ)=1990年代生まれ」と表し、bilibiliはそのジェネレーションZ=90後世代がメインターゲット。ちなみに、中国3大動画配信プラットフォームと言われるバイドゥ傘下の「iQIYI」とアリババグループの「Youku」、中国最大のコミュニケーションツールWeChatを展開するテンセントの「テンセントビデオ」のそれぞれのMAUは5億、6億の規模です。これらジャイアントメディアとは並ばずとも、ターゲットを絞った戦略で成功させているのがbilibiliです。

放送・配信に先駆けてbilibili本社がある中国・上海で『LINEの答えあわせ』のプロモーションイベントが行われた時も日本のコンテンツに対する熱狂ぶりを間近で感じることができました。そのプロモーションイベントはbilibiliが年に一度のお祭りとして 開催している「bilibiliworld(ビリビリワールド)2019」(2019年10月4日~6日)内で行われ、中国の長期休暇のひとつ、国慶節の時期とあって会場はbilibiliユーザーで溢れかえっていました。10代後半から20代前半がメインユーザーと言われている通り、会場内は若者だらけ。好きなキャラクターのコスプレ衣装に身を包んだ来場者も多く、目当てのステージイベントやコンテンツブースを巡ることもでき、コミコン中国版のようなイベントです。昨年は3日間で延べ16万人の動員を記録しました。特徴的なのはやはりジャパニーズ・コンテンツが多いこと。昨年までにはアニメ等二次元の内容がメインでしたが、昨年は日本ドラマに関するイベントや展示も一角を占めており、俳優・山田孝之のステージイベントが話題を集め、中国でも人気のドラマ『孤独のグルメ』や『深夜食堂』のセットを再現したブースで撮影を楽しむユーザーの姿もありました。

そんななか、ドラマ『LINEの答えあわせ ~男と女の勘違い~』のステージも大盛り上がり。1000人を超えるbilibiliユーザーが集まっていました。多くは主演俳優の古川雄輝に会いたいファンで占め、中国版ツイッター・Weiboのフォロワー数400万人以上を抱える古川の中国での人気ぶりを見せつけていました。古川が一言発するたびに歓声が起こり、イベントの様子を生配信で伝えたニコニコ動画形式の画面も興奮の様子を示したファンの言葉でぎっしり埋め尽くされていました。中国での初回配信の再生数がわずか16時間で100万回再生を突破したことも納得できます。

上海で行われた「bilibiliワールド」での「LINEの答えあわせ」PRイベントに出演した古川雄輝

勉強熱心な中国人にも刺さる恋愛ドラマ

古川人気もさることながら、いまどきの恋愛あるあるを扱った内容にも関心が寄せられていることがイベントから感じ取れたことのひとつにあります。同ドラマは、東京カレンダーWEBで17年4月から連載されている人気企画を原作に、LINEのメッセージに対する“男女の捉え方の違い”をエピソード仕立てで描いていくものです。

毎話、後半部分でその捉え方の違いをプレイバックしながら解説していく演出は、男女間で感じるモヤモヤ感を打ち消してくれる効果もあります。「なるほど、そういうことだったのか」と種明かしをしてくれるのです。20代男女の恋愛だけを対象とせず、40代男女、アラサーと40代といったバリエーションのある恋愛劇を描いていることも、何かと勉強熱心な中国人のニーズを捉えていると思います。

「LINEの答えあわせ」中国版のキービジュアル
恋愛や飯テロ、成長ストーリーは中国でドラマ化されやすく、東京カレンダー発の『東京女子図鑑』の中国版も人気を得ました。そんな東京カレンダー企画から新たなドラマが発信され、日本、中国のみならず世界も視野に話題化を狙っています。日本では「LINE」、中国では「WeChat」、 北米では「メッセンジャー」や「WhatsApp」と、世界中でメッセージアプリが浸透し、テキストを送るタイミングやスタンプの選び方が恋愛を成就させていくカギになっているほど。メッセージアプリでの恋の心理戦に面白さを見出し、ドラマ化を発案したことも日本らしい発想力なのかもしれません。ドラマの英語タイトルは ”Texting in Tokyo”です。中国でも話題になった東京のSNS恋愛心理劇として、海外の広い地域で展開されていく期待も高まります。

地上波放送の初出しだけにこだわる時代ではない

『LINEの答えあわせ』は地上波の読売テレビで放送され、中国ではbilibiliで独占配信、日本ではTSUTAYAプレミアムで独占配信されています。1週間見逃し配信ではTver、GYAO、ytvMydoなど。さらに本編とは異なるサイドストーリーもTSUTAYAプレミアムで独占配信されるなどコンテンツが展開される出口にこだわらず、いかに広げて話題を集めていくか。という点に挑戦しているドラマでもあります。

そのため制作段階から計画的に進められていました。中国で海外ドラマの配信を実現するためには通常、センサーシップ事情から数か月前に全話完パケ納品が求められています。撮影スケジュールを前倒し、『LINEの答えあわせ』も撮影は9月初旬から10月中旬にかけて行われたと聞きます。国内外の配信を前提に制作されるドラマはまだ数は少ないものの、ケースバイケースで増えています。地上波放送の初出しだけにこだわる時代ではないことを物語っています。こうした手法も駆使していく柔軟な発想を持つことで、新たな視点のコンテンツが作られ、結果、新たなファンを獲得していくことは世界中で広がっています。

上海で行われた「bilibiliワールド」での「LINEの答えあわせ」PRイベント
以前、カンヌの世界最大級のコンテンツマーケットMIPTVの関連セッションでbilibiliのコンテンツプロデューサーが登壇し、こんなことを話していました。

「bilibiliを知る上で3つのキーワードがあります。それは『スモール』『ニッチ』『ロンリー』。他の中国動画プレイヤーに比べて小規模ながら、日本のアニメなどニッチコンテンツを揃えて特徴を出し、スマホにアクセスするジャネレーションZ世代を味方にファンを
作り、bilibiliそのもののブランドイメージを構築しています」。

弱みと強みを売りにし、コンテンツビジネスを戦略的に攻めるメディアの姿は日本も刺激になる話です。『LINEの答えあわせ』の国際共同プロジェクトも多面的に効果を得られるものになるだろうと期待しています。
【文・長谷川朋子(はせがわ・ともこ)】
執筆者プロフィール
テレビ業界ジャーナリスト。放送業界専門誌のテレビ、ラジオ担当記者。仏カンヌで開催されるテレビ見本市MIP現地取材歴は10年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に、多数媒体で執筆中。「Yahoo!個人ニュース」「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「オリコン」「WIRED」など。国内外で番組審査員や業界セミナー講師、ファシリテーターなども務める。
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