【連載】ここがオモロイ!「秘密のケンミンSHOW」
こんなおでんも、おでんなの?青森・長崎・沖縄、ケンミン熱愛おでん祭り!
2019.03.01
境治最初に登場したのは、青森県民が熱愛するおでん。まず謎めくのは、タレだ。普通、おでんは出汁と一緒に味わうものだ。だが青森おでんは出汁をあまりよそわない。ほぼ具だけを器に入れて謎の濃い茶色のタレをかけるのだ。これはしょうが味噌、そのうまみを楽しむのが青森おでんなのだそうだ。出汁は脇役に過ぎないので、醤油などの調味料を入れずに超あっさりに仕上げるという。
さらに具も独特。まず目を引くのはつぶ貝だ。陸奥湾で獲れたつぶ貝を、肝の味をトロッと楽しみながらしょうが味噌で食べる。それにやけに細長い具は、根曲がり竹。さらに妙にうすーいさつま揚げ、大角天。他県では見られないオリジナルな具が使われている。

「たまごに、大根、あとかまぼこ」と言う。・・・かまぼこ?
そう、長崎おでんのメインの具は、彼らの言う「かまぼこ」なのだ。ただこのかまぼこは、板についてる紅白のあれではなく、練り物のことをそう呼ぶ。多種多様な「かまぼこ」が長崎には存在し、それを煮て楽しむのが長崎おでんなのだった。
だから鍋のふたを開けると、一面茶色。バリエーション豊富な練り物で埋め尽くされている。茶色を食べるのが、長崎おでんの醍醐味だ。定番は、イカ天。円形の練り物の中に刻んだイカが入っている。さらに謎の球体は竜眼。ゆで卵が練りこまれていて、二つに切ると竜の目のようだとこの名になったそうだ。

最後は、沖縄のおでん!沖縄にもおでん、あるのは知らなかった!だが鍋に盛られているのは緑色の謎の野菜やウインナー、崩れかけたような得体の知れない肉も入っていて、怪しい。これ本当におでんなの?
沖縄おでんの老舗「東大」に取材すると、おでんを煮込む大きな鍋に仕切りはない。どこに何があるのかわからなくなりそうだが、これについておかみさんは
「そうですねえ、捜索願を出さないといけないものがあって、探し続けて26年程経ってます」と、面白いことを言う。

「テビチは飲み物!」と言い切るウチナンチュもいるほどだ。
そして一番気になった謎の緑色の野菜。常連のお客さんに、この野菜は何なのか聞いても堂々と
「わからない」と答えるだけ。メニューにも“葉野菜”としか表記されていない。なんかざっくりしている。これは複数の野菜の総称で、レタス、からし菜、白菜を混ぜて使うのだそうだ。
さらに、串に刺したハツ、砂肝、セセリなど焼き鳥的な具が煮込まれて出てくる。テビチやウインナーを含めて肉がおでんの主役なのだ。そしてさっきから気になるのが、練り物が登場しないこと。そう、沖縄おでんは、長崎おでんでは主役だった練り物をまったく使わないのだ。それが同じおでんという名称でいいのだろうか?
こうして見ていくと、各県で独特のおでん文化が育まれ、まったく別々の食べものとして歩んできたことがわかる。そこがまた、面白い!あなたが食べてるおでんも、他県民から見ると「そんなおでんあるの?」と驚かれるかもしれない。などと感慨に浸りながら、今夜はおでんで一杯やって、身体を温めたくなってきたなあ。
【文:境 治】
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