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中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【9】

高学歴芸人×現役女子プロレスラーの異色コンビ「ネバーギブアップ」

中西正男 2020.03.10

名古屋大学卒業の才媛・おおのまりあさん(29)と、現役女子プロレスラー・HARUKAZEさん(31)のコンビ「ネバーギブアップ」。見る者の興味をかき立てるコントラストが魅力のコンビですが、結成のいきさつ、そして、現在の悩みまで赤裸々に語りました。

(取材/文:中西 正男)

―そもそも、なぜコンビを組むことになったのですか?

おおの:私は愛知県の出身で、地元の名古屋大学に入ったんですけど、当時、私には夢がありまして…。総理大臣になりたいという(笑)。
というのも、自分の話やアクションで人を少しでも幸せにしたいという思いがすごくありまして、その最上級が何かを考えた時、総理大臣に行きつきまして。
実際、大学入学後、愛知の議員さんのところでインターンもさせていただきました。議会を見学したり、資料作成のお手伝いをしたりしてたんですけど、やっていく中で「これは社会経験をしっかりと積んでからやる仕事だ」と思うようになりまして。いろいろな事態に対応できる蓄積が求められる仕事だと分かったと言いますか。
もちろん、企業に入って社会人として経験を重ねていくやり方もあるんですけど、いろいろな仕事を考えた時に、私の中で芸人さんという存在が頭に浮かんだんです。
当時の印象で言うと、いろいろな人間と関わって、いろいろなことをこれでもかとやる。それが私の中の芸人さんのイメージで、芸人の世界に入れば、より濃厚に社会経験が積めるのではと考えたんです。
小さな頃からお笑いが好きだったということもあるんですけど、その“濃厚さへの思い”が大きなポイントになって芸人を選ぼうと思ったんです。
東京に出てきて、アナウンス学校のタレントコースに入り、そこからコンビを組んで3年半、活動しました。ただ、その相方とは互いに別のステージに向かおうという結論に至り、去年の4月に解散しました。
次は前の相方さんとは全く違う方向性の人とやってみたいという思いも強かったので、ツイッターで広く相方を募集したんです。そこで、今のコンビを組むことになるんですけど、はい、ここでバトンタッチ!

HARUKAZE:私はプロレスラーをしてるんですけど、人前でしゃべるのが苦手と言いますか、マイクパフォーマンスもNGにしていたり…。ただ、このままではレスラーとしてもダメだなと思っていたんです。
もちろん、リング上での強さが大切なんですけど、うまく自分をアピールすることも選手としてステップアップするにはすごく大切なことですし。
もともと運動能力がそんなに高くないということと、自らを表現するのが得意じゃないということも重なって、なかなか結果が出なくて。
これまで7年プロレスをやってきて、シングルマッチでは一回も勝ったことなくて…。戦績で言うと0勝400敗くらい…。逆ヒクソン・グレイシーみたいな感じです(笑)。
なんとか自分を変えたい。感情を表に出したり、表現する部分をもっと伸ばしたい。そう思って、2年ほど前にワタナベコメディースクールに通うことにしたんです。
もちろん、お笑いはとても難しいんですけど、通いだすと、仕組みが少しは分かると言うか、何をどう努力したらいいかがおぼろげながら見えてくると言いますか。
そんな感覚を掴んでスクールを終えた時に、たまたままりあさんのツイッターを見て「これだ」と思って連絡したんです。

―HARUKAZEさんはもともとプロレスラーになりたかったのですか?

HARUKAZE:もともとは地下アイドルになりたくて東京に出てきたんですけど(笑)、とにかくオーディションに落ちまくりまして。
16回連続で落ちた時、あまりにもむしゃくしゃして、気晴らしにプロレスを観に行こうと思ったんです。それまでプロレスなんて観たこともなかったですし、知識も全くありませんでした。でも、その時はなぜか「プロレスに行こう」と思ったんです。
そんな感じで普通にお客さんとして観に行ったんですけど、会場で「キミ、ウチの団体でプロレスラーにならないか?」と団体の幹部の方から声をかけられたんです。
運動経験もほぼなかったですし、プロレスのことも何も知らなかったし、普通だったら迷うこともなく「できません」という答えが出るところなんですけど、そこまでオーディションで落ちまくってましたから。でも、プロレスからは声をかけてもらった。
そんな流れもあったので、誘われるままに一回練習に行ったんです。じゃ、またその時の練習が前転とか後転とか器械体操的な動きで、私、中学3年間は器械体操をやっていたので、その日の練習は結構ついていけたんです。そこで「あ、これはもしかしたらいけるかも」と思って、なんと、入団することになったんです。
…ただ、本格的に練習が始まると、当然なんですけど、腹筋、背筋、スクワットとか体を作る基礎的なトレーニングもこれでもかと入ってきますし、いきなりすごくしんどくなりまして。すぐに「これは、大変なことを始めてしまった…」とは思いました(笑)。
でも、もう16回オーディションに落ちたし、やっていくならばここしかない。そう思って、そこからは意地でやり通しました。

―コンビを組むことはすぐに決まったのですか?

おおの:ツイッターで相方候補として応募してくださった方が8人いらっしゃったんですけど、一人一人とお話をしていく中で(HARUKAZEと)一番気が合ったんです。しかも、会ってすぐに。
ツイッターの自己紹介欄に“プロレスラー”と書いてあるので、さぞかしいかつくて、屈強な人が来るのかと思いきや、この上なく、ポワーンとした人で(笑)。
そして、初めて会ったのに、ウソみたいに会話が全部漫才みたいになっていくんです。
例えば、最初に互いに自己紹介をして、そこで名前を言ったら、ま、もう名前を言う流れは終わりじゃないですか。
それなのに、ずっと「あ、私、(本名は)ハルカって言うんですけど、ワタナベのスクールに通ってまして」「あ、私、ハルカって言うんですけど、プロレスは見たことありますか?」みたいな感じで、話し出すたびにいちいち名前を告げてくるんです(笑)。「もう、分かってますから!」ということを何回も繰り返して。
他にも「私、今朝、納豆とニラとスルメを食べてきたので、すごく口が臭いと思うんですけど…」とこれも何回も繰り返し言ってくるんです。こちらがナチュラルにつっこみたくなることを次々にナチュラルにやってくるというか。そこで「この人だ!」と思いました。

HARUKAZE:私は特にボケてるみたいな感じはなかったんですけどね(笑)。でも、私もまりあさんの空気感と言いますか、こちらをすごく気遣ってくれる雰囲気に、スッと距離感が縮んだというか。組むということは、本当にスムーズに決まりましたね。

写真左からHARUKAZE 、おおのまりあ
おおの:正直、現役のプロレスラーというのは、非常に強いアピールポイントだと思いますし、コンビ名もプロレスにちなんだものにしようと。
そして、彼女はプロレスで勝てないけど、なんとか頑張ろうとしている。私も一回コンビ別れを経験して、そこからもう一度、なんとか頑張ろうと思っている。その思いもコンビ名に乗せて「ネバーギブアップ」にしたんです。
去年の6月に組んで、今の事務所(ライジングアップ)のオーディションに受かって、秋から所属。今で半年くらい経ちました。まだテレビ番組などには出る機会はないんですけど、活動実態としては月に数回ライブに出ている感じです。

HARUKAZE:そうやってコンビとして場数を踏んでいく中で、ずっとNGにしてきたマイクパフォーマンスにも今は取り組むようになりました。
この間も、メインの試合に出してもらったんですけど、そこでもマイクを握ってアピールしたんです。じゃ、ネットで試合のことを書いてくださっている方の中に、そのマイクパフォーマンスで「ファンになった」と言ってくださっている方がいらっしゃって…。それは、本当に、うれしかったですね。
今までマイクをやってこなかったので、まだ“伸びしろ”が残っていて、これはこれでラッキーなことだなと。そんな感じで、考え方もかなり前向きになってきました。

おおの:ただ、最近は新しい流れもできたみたいでして…。

HARUKAZE:私が芸人の仕事をやっているということが浸透してきて、例えば、対戦相手が私に足四の字固めをかけている状況で「お前、面白いことをやれよ!そうしたら、技を解いてやるよ」みたいな流れもできまして。
ただ、ほとんど身動きが取れない中で言われるんで、全身が完全に動ける状況でも難しいのに、その状況でギャグ的なことをやるのは非常にハードルが高くて(笑)。
大概は思いっきりスベって、より強く締めあげられるみたいな流れになるんですけど…、でも、それは新しい一歩を踏み出してのことなので、うれしい痛みでもあるんですけどね(笑)。

■取材後記
プロレスラーとは思えない、のほほんとした空気のHARUKAZEさん。チャキチャキと話しつつも、細かくHARUKAZEさんの表情を伺い、サラリとフォローをするおおのさん。
まだコンビを組んで1年も経っていませんが、この空気感というか、互いにガッチリとピースがハマっている感というか、それはなかなかないことだと感じました。
コンビとしての実績、お笑いのスキルなどはまだまだ発展途上ではありますが、オンリーワンの可能性を秘めたお二人だと強く思いました。
執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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