【高知県】「日本の夜明けぜよ!」の「ぜよ」は土佐でも絶滅危惧種なのか?

2022.12.26

【高知県】「日本の夜明けぜよ!」の「ぜよ」は土佐でも絶滅危惧種なのか?
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高知県の方言、つまり土佐弁というと坂本龍馬の「日本の夜明けぜよ!」を思い浮かべるだろう。他にも『鬼龍院花子の生涯』の「なめたらいかんぜよ!」、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』の「おまんら許さんぜよ!」などの決め台詞でも「ぜよ」が印象的だった。

高知県出身の演歌歌手、三山ひろしさんも「ぜよ」をよく使っている。高知の人はみんな、力強い語尾に「ぜよ」を使うのだろうと他県民としては思い込んでいるが、実際どうなのか。そこで高知県に行ってみた。県庁所在地・高知市の商店街を歩くと、お店の看板やPOPに「好きな色とサイズを選ぶぜよ」とか「旨い地酒があるぜよ」などと「ぜよ」使いまくり。
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やはり日常会話で使うのだろうと、高知駅前にいた五人づれの土佐JKに聞いてみた。
「ぜよ?」「ぜよ?」「ぜよは使ったことない」との返答。ええ?使わないの?「高校生は絶対言わない」と言うので、電話でお母さんに確かめてもらった。

「土佐弁でぜよを使いゆう人を探しゆうらしくて」と「ゆう」は土佐弁ではないか。「ぜよ話しゅう人知っちゅう?じいちゃんはぜよって言わん?」おお、バリバリの土佐訛り!だがお母さんの答えは「言わんでえ〜」だった。
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さらに三山ひろしさんのけん玉仲間だという土佐お兄さんたちが言うには「ぜよはネタで使いますね。」つまり自然に使う言葉ではない?「あえて高知感を胡散臭い感じで出す時に“ぜよ”。おふざけぜよ。」でも三山さんはよく「ぜよ」を使うが?「申し訳ないけどキャラづくりですね、キャラぜよ。」これには仲間が「言い過ぎぜよ」と突っ込む。

居酒屋で別のお兄さんたちが言うには「ぜよは昔の土佐弁ながですよ」「土佐弁も新しくなっちゅう」他はバリバリの土佐訛りなのに「ぜよは死語」とまで言うのが不思議だ。

そこで高知市を離れ、南端の漁師町・土佐清水市へ行ってみた。絶景・足摺岬を有し、ジョン万次郎の出身地でもある。方言も強そうだ。

ところが土佐清水で「ぜよ」について聞くと、やっぱり使ってないとの答え。「言葉がちゃいますから。幡多弁やから。僕らは土佐弁、何言うてるかわからへん時ある。」ええー?方言が違うの?「例えば“行くから”は土佐弁では“行くき”と言うけど幡多弁では“行くけん”といいます。」と、関西弁と九州弁が混じったような訛りで解説してくれた。

高知県は今は一つの県だが、長曾我部家が統治した東部、一条家が治めた西部の二つに分かれていた。東部では土佐弁、西部では幡多弁が使われ、全く違う方言として今も残っているのだ。

取材陣は一縷の望みをかけて東部の安芸市に行ってみた。お城もあり土佐の歴史が色濃く残るこの町ならひょっとして?

のどかな道を歩くシニアに話しかけてみた。「おまん何しにきたがぜよ?」おおー!ぜよ、発見!「今ぜよって言いました?」「そらぜよ使うわ今でも」これは間違いない!安芸市はぜよの町だ!「友だちに会うたら“どこ行きゆうがぜよ”とスッと出らあ。ぜよは使う!」と言い切ってくれたではないか!
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そこで、町の数カ所に定点カメラを据え付けて観察してみた。喫茶店では「薬飲まないかん」「そうぜよ」「いかんぜよ、悪いとこばっかり」素晴らしい!極めて自然な「ぜよ」を採集!

別の喫茶店ではおばあちゃんたちが集う。「早いぜよ!明日雨じゃ!」さっそく「ぜよ」。「野村先生死んじょった」「だいぶ歳じゃったもんね」「だいぶじゃない80歳ぜよ!」話題はアレだが、ここでも「ぜよ」。
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でも「ぜよ」は男性が使うイメージだったが?一人だけいたおじいちゃんが「土佐の女性は強いき。男言葉使っても平気なの。」と解説してくれた。するとおばあちゃんの一人が「この中見よっても女っぽい人おらんやろ。」で、一同爆笑。

「ぜよ」はなくなってない。こうして安芸市にしっかり生き続けていた。なんか嬉しくなるなあ!おじいちゃんたちも、そしておばあちゃんたちも、いつまでもお元気で、「ぜよ」を使い続けてくださいね!

【文:境治】
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