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インタビュー:テレビを書くやつら

T部長・土屋敏男さんに聞くテレビ(後編)〜「こんなもんテレビじゃない」が次のテレビだ〜

2020.10.29

T部長・土屋敏男さんに聞くテレビ(後編)〜「こんなもんテレビじゃない」が次のテレビだ〜
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「電波少年」のT部長こと土屋敏男氏にテレビ論をお聞きするインタビューの後編。前編ではテレビの本質とは「これから起ころうとする何かを映す」ことだと論じた土屋さんだが、ではこれからのテレビはどうなるのか?インターネットとの関係は?といったところを聞いていく。前編としっかり繋がった話なので、読んでない方はぜひそちらから読んでほしい。
(前編はこちら
【聞き手/文:境 治】

テレビ局がスマホで何をするかが問題

境治(以下、S):今度はこれからのテレビについてうかがいます。

土屋敏男氏(以下、T):それはテレビは何か、テレビをどう定義するかによります。映画は映画館に行ってお金を払ってみるものだった。そこにテレビが出てきて映画の人たちからは「あんなもんだめだよ」と言われたけど、結局テレビがメインになりました。次にネットが出てきてPCだったのがスマホになった、というのが今の状態です。
いまでも映画があるようにテレビはなくならないだろうけど、映画館にある映画、家にあるテレビ、シームレスに繋がるネット。そこでテレビ局が何をするのかが問題です。「テレビ局はこれやらないの?」という話。スマホが出てきた十年前にこんなちっちゃいもんで何見るんだよと言われたけれど、そこで何をするか。コンテンツクリエイティブをするのがテレビ局だとすればテレビ局はネットで何するのというだけの話。そう考えるのが、ぼくは当たり前だと思う。

S:つまり番組を作ってた人はここでもあそこでも作ればいい、ということでしょうか?

T:テレビでは30分とか1時間、長くても2時間だったけどNetflixのドキュメンタリーは6時間で作ってもいいわけです。しかも世界に向けて見たことないものが作れる。ネットではコンテンツクリエイティブの作り方がより自由。自由になるんだからいいに決まっている。そういうことが起きていますね。

S:土屋さんがやってる企画塾もそういう考え方なんですね?
土屋氏が鎌倉市の「まちの大学」の一環で行っている「世界向け番組企画」ゼミのこと

T:世界というマーケットがあるのに出て行かない馬鹿がどこにいるんだと(笑)Disney+もあるしAppleTV+もあるし、プラットフォームはいまたくさんあるでしょう?そこにコンテンツ供給者として日本のクリエイティブが行かない手はない。だったらやるべ、ということですかね。
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ミステリアス・リアリティショーを日本は作れる

S:インターネットで何やるか発見できてないとさっきおっしゃった、それを発見する場でもある?

T:そうなんですけどNetflixは発見しかけている気がします。イギリスのリアリティショー「ラブアイランド」で自殺者が何人もいるとか、日本でも「テラハ」での痛ましい事件があった。作り方で何が問題なのか、ぼくらはドキュメントバラエティをやってきているのでどうすればいいかわかるかもしれません。

S:そういえば別のnoteで、ドキュメントバラエティとリアリティショーはルーツが違うと書いてましたね。
T部長のピックアップ「ドキュメントバラエティとリアリティショー2」
ぼくはわかってませんでしたが、リアリティショーは日本で言うとヤラセっぽいこともありみたいですね?

T:そうそう、演出あり、日本で言うとプロレスなんですよ。見る側もそういう姿勢。でもドキュメントバラエティはガチです。猿岩石やなすびには「これは放送していない」と言っていました。現場のDは「土屋さんに言われて撮ってるけど使われるのは年に何回かの特番で2~3分だと思う」と彼らに言っていた。そうするとカメラを忘れるわけですよ。そこからはじまる。リアルな人間がでてくる。
ドロンズは第2弾だったので、使われるのは知っていました。そうすると最初の一カ月くらいはガチじゃないから実際には使えないわけですよ。一泊した家で「どうもありがとう」と抱擁してると、カメラがそこに居る。これは使えないわけです、使われるなって顔してるから(一同爆笑)。ホントにメシが食えなくなってきてから使えるようになってくる。
なすびも部屋で懸賞ハガキを書いているだけだった。カメラはあって2時間ごとにテープを変える際、「これ放送できるんですか?裸で一日ハガキ書いてるだけですよね」と彼が言うと、「放送できるわけないだろ?半年に一回くらい2~3分かな」とこちらは言います。彼は使われると思わないから伊勢エビや米がきたら踊るわけでしょ?(爆笑)これが面白いわけです。放送されると思わなかったから面白いのがドキュメントバラエティ。

S:リアリティショーはガチじゃないわけですね?

T:欧米のリアリティショーでは撮影期間が終わったあと、グッズを作れば売れると知っているのでスターになろうとしちゃう。そうすると「こうしたら使われるだろう」ということをやるんです。プロレスのスターになろうとするわけだから。こうしろとDが言ったかはわからないけど、作る側と出る側の「あうん」みたいなことがある。
女の子が泣いてるんだけど彼女が見えるところでカメラが回ってる。カメラがあることを意識して泣いてる女の子を、良い絵なんだからと撮っているわけですね。そこは撮り方としてちがう。そっちのほうがラクでしょう。ぼくらは教えないで撮る。その違いはあります。
「テラスハウス」は欧米の人たちが見たことがなかったタイプなので、ニッチな人気がある。何も起きないからいいということです。欧米のリアリティショーでは彼氏をとったと殴り合いが始まるのだけど、「テラスハウス」は何も起きない、わびさびみたいな。そこがいいという評価がある。
その違いが自覚できた時、ぼくらは作り方がわかる。自覚的にやれば作れる自信はありますね。ミステリアスリアリティショーを作れるはずなんですよ、日本人には。

S:ミステリアスリアリティショー?つまり欧米のものとは違う、日本的わびさびに満ちたリアリティショー、ということですね?

T:そうそう。わあ深いなあ、みたいな(爆笑)。
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「電波少年」の延長線上に見える世界向け企画

S:あれ?じゃあ結局繋がっていく感じが見えてきましたね。日本人の海外に向けた企画は、ドキュメントバラエティの延長線上にある。

T:作れる自信はありますよね。コンマリの「片づけの魔法」がNetflixで配信されてますね。ただあれはリアリティショーの方なんです。コンマリがこうしてこうやってくれて私の人生サイコー、みたいに、本人が言わないとわかんない文化で作っている。そうではなく日本と欧米の違いを自覚的に作るやり方はわかってるから。

S:「元気が出るテレビ」や「電波少年」から繋がっていってNetflix配信で世界に出すコンテンツも作れるわけですね!

T:そう。「懸賞生活」だっていまリメイクするぞ!あれは世界のリアリティショーの歴史の中でものすごく特異なものなんですって。欧米の人がYouTubeであれを見て「これは何だ?」と20年経ってるのにぼくのもとに6本くらい映画の企画が来ている。

S:えー?!ほんとに?

T:ほんとに!頼むからうちでやらせてくれというオファーがいま6本、過去にも何本か来ましたから、ていうくらい・・・

S:オリジナリティがあるってことですね!

T:というか、よくこんなひどいことやったなっていう・・・(爆笑)ぼくとなすびが今も時々旅してるって知ると「お前ら日本人はほんとにわからない」って思われる。できると思ってるから企画塾をやってる。

S:あそこから世界に持ってくぞ、というおつもりですね?!

T:そうそう。

S:土屋さん、まだレジェンドじゃないですね、現役!まだやるよ、ということですね?!

T:ねえ、悲しいことにねえ・・・

S:ちなみにお名刺では「R&Dラボ」という部署になってますが、企画塾もR&D(調査・開発)と関係あるんですね?

T:ない・・・ですねえ・・・(爆笑)
外でやったことを社内で「そんなこともできるんですね」とフィードバックすれば、まあ役に立つ・・・のか立たないのかわかんないけど、まあ、ありかなあ?

S:ははははは。そんなこと言っていいんですか?

T:ぼくとしてはやりたいことをやらせてもらえるところを見つけて、やろうというだけです。テレビ局って現場は毎日の編成とか個人視聴率とかビジネスとか大変で、それが今のめしじゃないですか。今のめしも大事だと思うんです。若い人はそこでジタバタしているべきでそれがいいと思うんですよ。
35歳で「電波少年」やった時、個人的な妄想とかこだわりで作ったんですけど、テレビ局の中で「こんなもんテレビじゃない」って言われたのをすごく覚えてるんですよね。それが大事だと思うんですよ。「こんなもんテレビじゃない」って言われるのが次のテレビだと思う。「こんなもんテレビじゃない」を作ってない限り、テレビ局はテレビじゃないんですよ。いまこういうの当たるよねって作ってるものは、本質的にはテレビじゃないと思うんです。
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インタビューの冒頭で「最近、レジェンド的インタビューが多くて」とぼそぼそおっしゃってたので「いや、レジェンドですから」と言ったのだが、なぜ不服げなのかがよくわかった。土屋さんの頭の中はやりたいことでいっぱいで、実際にどんどんやっている「現役」なのだ。土屋さんが面白いのは、自分のやってることを論理立てて語りつつ、その理論に沿ってむちゃなこと、新しいことをやっていることだ。「こんなもんテレビじゃない」をテレビ局がまた開拓できるかは、いまの若い作り手たちにかかっている。土屋さんに感心してないで、自分たちも挑んでほしいと思う。それを見守る私たちも、テレビじゃないテレビを楽しむ良き観客でありたい。これからテレビは、また面白くなりそうだ。
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