桜の開花発表について

2024.04.01

2024年東京の桜は、今か今かと待ちわびて3月29日にようやく開花の発表となりました。靖国神社の標本木がつぼみの状態から、各テレビ局がほぼ毎日中継をしていましたが、個人的には心の中で「いくら見たって咲かへんもんは咲かへんで。ほっといたらいずれ咲くがな」と思いながら、天気コーナーを担当していました。

 皆さんは今年の当初の桜の開花予想を覚えていますでしょうか?実は、年明け頃には平年よりだいぶ早い開花を見込んでいましたが…、結果大幅に外しました。申し訳ございません!2月暖冬の影響で極端に暖かくなったので、3月も平年より気温は高めを予想していましたが、開花数週間前にして雨の日が多く、気温も低くなり、桜の成長は足踏み状態となってしまいました。開花予想は、休眠打破や積算温度を計算していく式があるのですが、直前の天気が予想より大幅に変わってくると、今年のように予想が大きく狂ってしまうこともあるのです。

 桜の開花定義は、標本木が5~6輪咲いたのを気象台の観測課の方が目視で確認できた時とします。冗談みたいに観測はきちんとやっていて、例えば4輪なら発表しません。僕なら「もういいかな…」なんて思ってしまいますが。

木の枝にある花なら開花判定となりますが、木の幹から咲く胴吹き桜は判定しません。木の幹とは別に根元から伸びた枝、ひこばえから咲く花もカウントしません。

 また、せっかく咲いた花を鳥がついばんでしまったら、それも数に数えません。雨風で落ちても同じです。このように、とにかく何十年も、観測者は変わっても条件は変えずに、真面目に取り組んでいるのです。

 満開の定義は、標本木にある花が約80%以上咲いたらとなります。満開は目安として、開花発表してからだいたい1週間後です。今年は、4月1週目の後半からがちょうど満開になりそうです。入学式の頃には桜吹雪が始まったくらいではないでしょうか。ここ数年、早すぎる開花だったので、入学式に桜という昔では当たり前の風景にちょっと違和感を感じてしまいます。

 桜の観測は、日本だけでなくアメリカでも行っています。ワシントンD.C.には100年以上前に東京市長が贈ったソメイヨシノの桜があり、満開予想と発表を行っています。標本木5~6輪の開花発表はありません。公園内のポトマック川の入り江(タイダルベイスン)の周りの木々が約70%以上咲いた状態を満開(peak bloom)とし発表しています。ちなみに、ワシントンの桜は、今年3月17日に満開を迎え、日本よりだいぶ早かったようです。ソメイヨシノは、接ぎ木で増やすクローンなので、気象条件が同じなら同時に咲きます。つまり、アメリカは今年、日本よりだいぶ暖かかったというわけです。

 日本も満開予想と発表だけでもいいような気がしますが、これまで継続してきた技術とデータは無駄にはしたくありません。東京では1953年から統計データがあり、これを長期間観測したことによってわかったことは、ヒートアイランド現象と地球温暖化によって、桜の開花は50年前よりも5~6日早まっているということです。このようなことは気候変動の対策を考える上で役に立つ資料になるので、桜の開花観測もないがしろにはできません。今は人間が目視で観測を行っていますが、将来はAIカメラが標本木を定点でとらえて、自動に開花発表などを行う時代がくるかもしれませんね。

 花が咲いてトップニュースになるのは、世界的に見ても日本は特異みたいです。それだけ平和な世の中ということでしょうか。そう考えると、桜の開花ニュース狂騒曲も悪くありません。
2023年平野神社にて
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