大学講義と番組制作の類似性

2020.10.27

大学講義と番組制作の類似性
©ytv
多少の前後はありますが、各大学で後期の授業が始まっておよそ1か月が経ちました。新型コロナウイルスへの対応に、それぞれの大学が知恵を絞っています。ほぼ全面的にオンラインの講義が行われていた前期とは異なり、後期は対面型が徐々に増えてきました。もちろん、地域によってばらつきはありますが。
 
文部科学省が全国の国公立私立大学や短期大学など1060校を対象に行った調査によれば、学生のほぼ全員が週に2日以上、キャンパスに通うことができると回答した割合は、「北海道・東北」が75%、「関東」が38%、「中部」が64%、「近畿」が63%、「中国・四国」81%、「九州・沖縄」が62%となっています。「中国・四国」が最も高く、「関東」が最も低いという結果は、新型コロナ感染者数との関連性が高いことがよくわかります。
 
いまさらながらこんなことを書かなくとも、読者のみなさんはよくご存じかとも思う一方、「対面」、「オンライン」、「オンデマンド」講義の違いって何?と感じておられる方もいらっしゃるかもしれません。私のところに、「どういうこと?」と聞きにくる友人・知人もいるので、少しだけ拙い説明をしておきますね。 

「対面講義」については、説明は不要でしょう。いわゆる従来型の教員と学生が同じ空間、すなわち教室・演習室などに集い、行われる講義のことです。
「オンライン講義」ですが、こちらはZoomやTeamsなどのツールを使って、遠隔で行う講義です。社会人のみなさんは「オンライン会議」ですっかりなじみ深い存在となっていることでしょう。「Zoom飲み会」も一時期流行りましたね。今はどうやら少し下火のようですが。分からなくもありません。なんだか逆に気遣いがしんどいですもんね(笑)。要するに遠隔ながら、相手の顔を確認しつつ、ライブで相互にやり取りができるスタイルの講義が、「オンライン講義」といえるかと思います。

さあ、そして「オンデマンド講義」です。実は私、後期からこのスタイルで受講生の多い講義を行っています。「オンデマンド講義」を一言で説明すれば「動画配信の講義」ということになるでしょうか。遠隔講義のひとつのパターンではあります。ただ「オンライン講義」が、パソコンやスマホの画面を通じて学生たちとライブで繋がっているのに比べて、「オンデマンド講義」は受講生たちがそれぞれ都合のいい時間に再生して講義を受けるのです。

たとえば、木曜日の3時間目に開講されている講義を週末に学生が「受講する」ということが可能なのですね。学生にとってはいい面もありますが、つい油断するとまだ見てない(受けていない)講義がどんどんたまっていくというリスクもあるようです。教員サイドにとってみれば、「対面講義」以上に魅力的な講義をしないと、学生がしっかり受講しないということにもなりかねません。

「オンデマンド」の講義を5回ほど経験して改めて感じることがあります。これって「番組」にすごく似ていると思うのです。「対面」以上にテンションを上げても、学生にはせいぜい70~80%ほどが伝わるくらいかな?と、毎回声を張っている私ですが、それでも「熱量」多く語った後は、数日経ってから大学の研究室に「センセ、この前のオンデマンド響きましたっ!」と、教え子が時にわざわざ言いに来てくれたりします。とても嬉しいです。自分の制作した番組が、放送後に褒められる、そんな経験に似ているでしょうか。まあ、放送マン時代、あまりそんな事ありませんでしたが(笑)。

「対面講義」では、学生たちと「生番組」を制作、放送している気持ちだとよく例えるのですが、「オンデマンド講義」の方が、もしかするとより番組に近いかもしれませんね。さぁ、今日も汗を流してまいります!

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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