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【連載】放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

コロナ禍の代役で見えてくる国民的司会者のスゴさ

2022.03.11

鈴木しげき
コロナ禍の代役で見えてくる国民的司会者のスゴさ
©ytv
情報番組やバラエティーの司会者が新型コロナウイルスの感染者になったり濃厚接触者になったりして、急きょ代役を立てているケースをよく見る。今、テレビ司会者の多くはお笑い芸人さんが占めているので、代役も芸人さんが務めることが多いが、みなさんしっかりこなしていて、私などは「大したもんだな」と感心してテレビを観ている。

感染した博多華丸さんの代役で司会を務めた今田耕司さんへは、「ピンチヒッターですぐに司会できる人って本当に才能ある」「やっぱり司会うまい」「絶対的安心感ある!」といった声が寄せられたという。もちろん、代役を後輩が担うこともあるが、そんな時も「結構よかった」「フツーに見れた」なんて意見が寄せられて、好評を博したりしている。

そう、この代役という仕事、タレントにとってはチャンスなのだ。

昔、土曜8時のバラエティー『オレたちひょうきん族』の人気コーナー「タケちゃんマン」で敵役「ブラックデビル」を最初に演じていたのは高田純次さんだった。が、その高田さんが病欠して代役として演じたのが明石家さんまさんというのは有名な話だろう。代役がそのまま本家になった例だ。

芸能界は椅子取りゲームだ。とくにテレビは放送枠が決まっているので、ひとつの席に対して激しい奪い合いが起こる。たとえコロナ禍のようなやむを得ない事情でも、ひとたびその席が空くと代役をこなせる人は結構いるのだと気づく。芸人の層はかなり厚い。

実際、コロナ感染で帯番組の司会を休養していた麒麟の川島明さんも復帰の際には、代役をつとめてくれた芸人らに感謝しつつも、「川島よりも代わりの方がええんちゃう? と言われるかもしれない」と、不安がよぎったという旨のコメントをしている。

昔、ビートたけしさんが「代役はね、やっぱりいつものアノ人でなきゃダメだねと思わせるくらいにやるのがいいよね。その人が帰って来やすいように」というような発言をしていて、さすが芸能界を戦い抜いている人は思慮深いなぁと感心した記憶があるが、いずれにせよ、代役が実力を見せるチャンスであることに間違いはない。

ただ、「いくらできることを見せた」としても、その人の番組を視聴者が末永く見たいかというのはまた別の判断だったりする。シビアにいうと、視聴率が取れるのか? 大げさにいうと、国民の日常の一部にそのタレントがなり得るかどうか? が問われていると思うのだが、その域に達する人というのはやはりわずかでしかない。それくらい視聴者に根付いている司会者というのは、よくワカラない魅力や技術を身につけていたりするのだ。

大物司会者は不思議なところがすぐれている

今、旬な人気司会者と言えば、マツコ・デラックスさん、サンドウィッチマン、有吉弘行さん……など挙げられる。そもそもテレビ司会者は狭き門なのでその立場になるだけでもスゴいのだが、そこから場数を踏んでいくと、何百万、何千万人といる“視聴者”というものをつかみだし、国民的な領域に到達していく。例えば、タモリさんがそうだろう。

博識なタモリさんだが、ご本人はハッキリと「俺にはなりすましの能力がある」と言っている。どんな話題に対しても知識を持ち出して話す司会者はいるが、タモリさんほどの親しみを感じる人が、歴史・文化・料理などの専門家と話していても私たちは違和感を持たない。とにかく、番組に違和感をつくらないから老若男女が見られる。

違和感を作らないという意味では、司会を務めていたお昼の番組に一般の高齢者が出てきた時も、その方たちへの配慮は素晴らしかった。他のコメディアンが高齢者を茶化すような発言をした場合でも上手に注意して、ごく自然に年配者への敬意を貫いていた。とにかく、その場の空気をわるくさせない。国民的な存在になるというのは、MC能力以上に何かが必要だが、タモリさんが見つけた何かとはコレだったのかもしれない。

そして、国民的な司会者といえば、黒柳徹子さん。昔、こんなツッコミネタがあった。「黒柳さんはゲストに質問して、その答えまで言っちゃうからゲストのしゃべる部分がない」という指摘。確かにそういう部分はあるかもしれないが、『徹子の部屋』のような長寿番組を続けていくには、どんなゲストでも成立させなければならないわけで、となると、トークがうまくなかったり、無口なゲストの場合はすべてこちらでしゃべって成立させるという少々強引なワザが有効になってくる。

今の感覚では信じられないが、昔の大物俳優なんて「ええ、まあ……」「そうですね……」しか言わないような人は結構いた。そんな俳優さんは無口も絵になるからそれでいいのだが、さすがにエピソードは紹介したい。それで、黒柳さんのような、質問しておいて答えまで言っちゃう司会に辿り着いたのだろう。いわば、長寿番組を作り出す高等テクニックと言ってもいいかもしれない。徹子さんの場合はコレが許さているので、どんなゲストでも成立してしまうのだ。

コロナ禍の代役で司会をこなす芸人さんの層は想像以上に厚いとわかった。ネット記事では「アラフィフ芸人たちの実力が再注目」などと書かれている。きっと、彼らには何かしらの機会が訪れると思う。実力は証明済みだから。さて、その中から国民的な司会者は現れるのか?

進行に定評のある上田晋也さんはゲストとの打ち合わせが入念であることが知られている。司会を続けていくうちに見つけた上田さんなりの方法で、上の世代とも一線を画するやり方だ。今、国民的司会候補たちが新たなレースをスタートさせているが、誰かがきっと次の一手を見つける。それは誰だろう。そして、どんな一手なのか。私もテレビの仕事をしているがさっぱり想像できない。それくらいテレビの司会者は独自な感覚と思いがけないワザで進化しているのだ。

【文:鈴木  しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。
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