『千鳥』の言葉。そして、漫才への思い。『ツートライブ』の15年とこれから

2023.06.14

『千鳥』の言葉。そして、漫才への思い。『ツートライブ』の15年とこれから
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結成15周年を迎えた漫才コンビ「ツートライブ」。これまでの思いを込めた初の漫才ライブツアー「闊歩旅」が6月30日の神戸三宮シアター・エートー公演から始まります。出場資格的に「M-1グランプリ」にチャレンジできるラストイヤーともなりますが、ツッコミのたかのりさん(39)、ボケの周平魂さん(39)ともに漫才へのたぎる思いを語りました。



たかのり: 15周年で何かやりたいとは思っていたんですけど、周りの皆さんのお力を借りてツアーをさせてもらうことになりました。まだまだ漫才師としての先は長いんですけど、ひとまず、ここまでの集大成になるような中身を考えています。

周平魂:今年で15年ということは「M-1」がラストイヤーになるんです。漫才師として「M-1」で結果を出すのは基本中の基本ですし、どこにいっても「M-1」での結果が評価となる部分も大きい。しっかりと結果を残したいと思っています。

―15年を振り返り、ターニングポイントとなった出来事はありますか?

周平魂:2017年にABCお笑いグランプリで決勝に進むことができました。そこをきっかけにテレビのお仕事もいただけるようになりましたし、優勝はできなかったんですけど、そこで一つ前に進めたのはデカかったと思いますね。さらに、決勝に進出できたきっかけというか、その出来事も今でも明確に覚えています。その年に作ったネタで、単独ライブでもやって「このネタで勝負するんだ」というものがあったんです。自分たちとしては面白いと確信しているものの、お客さんの反応がイマイチなところもある。

どうしたものかと思いつつ、ある日の劇場出番でそのネタをやったんです。その日の出番順的に僕らの一つ後が「千鳥」さんだったんですけど、ネタを終えて舞台袖に戻ってきた時に構成作家さんから言われたんです。

「『ツートライブ』さんのネタを見て『千鳥』さんが爆笑されてましたよ」

その瞬間、パッと霧が晴れたというか、心底「やっぱり、これは面白いネタなんや」と思えたんです。間違いないと確信を持てました。
そうなると、次の出番からそのネタがウソみたいにウケるようになっていったんです。迷いがなくなったのか、ウケなければと思う力みがなくなったのか、自分でも分からないものの、自信をもらって何かが変わったんでしょうね。その勢いのまま「ABC―」の予選に入り、決勝まで進むことができました。
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(左)たかのり (右)周平魂
たかのり:ネタの文言を変えたりしたわけではなかったんですけど、本当にウケが変わりましたね。「千鳥」さんは普段から飲みに連れて行ってもらうとか、そういうお付き合いはなかったんですけど、そんな「千鳥」さんがニュートラルに見て「面白い」という判断をしてくださったならば、より一層、ありがたいなと。その思いはありましたね。

周平魂:自分らが心から面白いと思っている兄さんが袖で笑ってくれていた。それでこんなに漫才って変わるんだと痛感しました。

たかのり:初舞台からの7~8年は本当に地獄でした。アルバイトをやって、ネタを作って、単独ライブを打つ。それだけの日々でした。でも、それがガラッと変わったのが「ABC―」以降。よく作家さんが伝えてくれたものだとも思いますし(笑)、変わることがあることを知ったので、もっと、もっと頑張らないといけないなとも思うようになりました。


―お二人の軸となるのは、やはりネタ、漫才でしょうかね?

たかのり:もうそういう体になったというか、今一番うれしい瞬間は「しっかりしたネタができた時」なんです。思っていたようなネタができた。これがあると心が落ち着くし、逆にいうと、イベントのトークでウケたとしてもネタができてなかったら落ち着かない。それがリアルな反応になってますね。

だからこそ、自分らが思う良いネタを作り続ける。そして、それでお客さんに笑ってもらう。これが幹というか、根本の話になっています。

なので、理想としては各劇場をまわって一日に何ステージも漫才をやる。自分たちの漫才を待ってくださっている場がある。これが一番うれしいことですし、そのためには「M-1」などで結果を残して皆さんに僕らの漫才を知ってもらわないといけない。シンプルですけど、それしかないと思っています。

この前も「アインシュタイン」さんのツアーに出していただいたんですけど、お二人の場合はお客さんがたくさん来られるので本当に大きな会場でされるわけです。自分たちを待ってくれている大観衆の前で漫才をやる。そのすごさみたいなものをダイレクトに感じましたし、僕らもそれができるようになりたいと強く思いました。

周平魂:そのためのツアーでもあると思いますし、なんとか自分たちが面白いと思うネタを磨いて、今年は「M-1」で最低でも決勝には進みたいと思っています。

たかのり:それが漫才師としての次につながると思いますし、本当に先は長いですからね。「M-1」ラストイヤーと言っても、30年、40年、50年と漫才をされている方々からしたら、まだ15年ですから。先の道を作る意味でも、まだまだチャレンジしないといけないなと。

周平魂:あと、僕の目標としては、今日履いてるデニムの色落ちをもう少し進められたらなと思っています。

たかのり:…急にボケたやん。あまりにも真面目に話しすぎたと思ったん?

周平魂:なんか最後に入れなアカンかなと(笑)。ありがたいことにせっかくツアーもさせてもらえるんやから、日々全力で頑張って、ツアーが終わる頃にはリアルにデニムが擦り切れるくらい頑張りたいと思っています。

たかのり:なんとなく、おさめたな(笑)。
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■ツートライブ
1984年4月11日生まれで広島県出身のたかのり(本名・井上尊教)と、83年9月11日生まれで京都府出身の周平魂(本名・池田周平)のコンビ。兵庫県立大学の同級生として出会い、2008年にコンビ結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。ともにNSC大阪校30期生。ABCお笑いグランプリ決勝進出。上方漫才協会大賞文芸部門賞受賞。初の漫才ライブツアー「闊歩旅」を開催する。6月30日の神戸三宮シアター・エートーからスタートし、広島、京都、東京、名古屋、大阪で公演を行う。


執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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