風に向かって生きている。からっ風がビンビン吹きつける群馬県は、大きな「風の谷」だった。

2022.03.01

風に向かって生きている。からっ風がビンビン吹きつける群馬県は、大きな「風の谷」だった。
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北風がつらい冬の日本だが、ひとまわりレベルが違うほど強く風が吹く県がある。そう、からっ風の群馬県だ。お笑いコンビ・宮下草薙の宮下兼史鷹は群馬県民。彼が言うには、「高校の同級生でチャリを一漕ぎもせずに学校に着いた人もいた」そうなのだが、ホントにそこまで強いのか?

そこで1月中旬、群馬県をからっ風取材で訪れた。だが、ちっとも風なんか吹いていないぞ。群馬県民に聞いてみると「赤城山の方から通ってくる人は、前橋高校まで漕がないで着いた」。宮下の証言は事実のようだ。様々な人々にからっ風について聞くと「お布団が竿ごと飛んでいく」「赤城おろしがビンビンくる」と、多様な表現でその厳しさを語ってくれた。

ではどんな時にからっ風が吹くのか。「天気図が西高東低で日本海側に雪が降る時」さらに「赤城山に雲がかかる時」との声もあった。数日後、まさに強い西高東低の気圧配置の日がやって来た。再び群馬に行くと、おお!赤城山に濃く雲がかかっている!
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街を歩くと、こないだはそよ風に吹かれていたお店のノボリが、まるで台風の時のようにバタバタと大暴れ状態!これだ、これがからっ風だ!確かにすごいぞ!より強烈な風を体験したいと群馬県民に聞くと「橋の上が強い」と教えてくれた。「立ってられない」「目を開けられない」と口々にその恐ろしさを語る。
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そこで利根川にかかる南部大橋に行ってみた。うわ!これはきつい!さらに強い風で本当に立ってられない。計測すると、最大風速15m!時速54kmに相当するからバイクで走ってる時の風と同じと言っていい。強烈だ!
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自転車を押して渡るおかあさんも大変そう。「風に向かって生きているから」と言う、そこにたくましく生きる群馬の女性の生き様が見えた!下校ラッシュ時は、高校生女子たちが自転車を押しながら大切な髪を乱しまくっている。ひとり、前髪だけは死守している高校生は「風しか気にしてない」と語っていた。
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すると取材スタッフにも大変なことが起こった!なんと、メガネがふっ飛んだのだ。川に落ちてしまい大事なメガネを失ってしまったカメアシさん。「レベルが違います。まさかメガネが飛ぶとは。」と驚いていた。

「ドライブスルーでお金を出す時にヒューッと飛んでっちゃう」「部分カツラが飛んじゃったので拾ってつけた」などなど、群馬県民のからっ風生活は大変だ。そのため、家を建てる時も気をつけねばならない。「赤城おろしの影響を受けにくい住宅」を作ってくれる設計士さんによると「玄関を西側や北側には作らず、南側から入るようにします。砂埃が入るし、お子さんだと扉が開かない」のだそうだ。家の作り方までからっ風対応せねばならないのか。

また家々を見ていると、片側に背の高い木を並べて植えてあるお宅を見つけた。「かしぐね」と呼ぶそうだ。樫のくね=生垣のことで、言わば防風林。「庭師さんが枝を横にはるように整形してくれます。」以前、養蚕業を営んでいたお宅に多いという。上からの画像で確かめると、その一帯はかしぐねのお宅が並んでいた。
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聞けば聞くほど大変な群馬県民のからっ風ライフだが、悩まされているはずなのにみなさんが嬉々として語るのが不思議だ。そのことを聞くと「しょうがない、吹いちゃってるから」とこれまた楽しそうに語る。「ナウシカが空を飛ぶのと一緒、風の谷だから。」そうかなるほど、群馬は大きな風の谷で、みなさんからっ風に吹かれながらナウシカのように凛々しく生きているのだ。そう思うと、群馬県民が素敵な人々に思えてくる。でもあの強風の冬を越す自信はないなあ。

【文:境 治】
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