読売テレビがお届けする、テレビを楽しむ読み物メディア

道浦俊彦のことばのことばかり【8】

アクセントは?字体は?「令和」に生じた2つの疑問

道浦俊彦 2019.05.13

4月1日に新しい元号が「令和」に変わって1か月。ついに「平成」が終わって「令和元年」がスタートしました。

「令和」という元号が発表された時に、2つの疑問が呈されました。

(1)アクセントは「レ」が高い「頭高アクセント」で「レ\イワ」か?それとも「イワ」が高くなる「平板アクセント」の「レ/イワ」か?という問題。

(2)「令和」の「令」の字の字体。最後の1画が縦にサーッと筆を払うのか?それともカタカナの「マ」のように書くのか?

字体に関してはもう一つ、「令」の上の「八」みたいなところの下の1画は、「、(点)」なのか?「一(横棒)」なのか?という問題もありますが、それはあまり議論されませんでした。字体についての答えは、2つとも「どちらも正解」です。「手書き字体」か「印刷字体」かという違いです。

(1)のアクセントの問題は、特に視聴者や読者の皆さんの関心を集めたようで、朝日新聞や産経新聞でも、各テレビ局のアナウンス部の意見を取材したりしていましたから、記事をお読みになった方もいらっしゃるでしょう。

結果的には、元号を発表した菅官房長官や安倍首相のアクセントに引かれて、
「レ\イワ」
と最初の「レ」が高く「イ」で下がる「頭高アクセント」で読む・話す人が多いようですが、テレビ局ではTBSだけが「レ/イワ」という「平板アクセント」を第1にして、2番目のアクセントが「レ\イワ」としたようですね。

私個人としては、宮内庁が言っている通り、「どちらでも良い」という意見です。個人的には今は「レ\イワ」と言っていますが、「レ/イワ」と言うこともあります。最初の頃はまだ珍しいので「強調」するために「頭高アクセント」で「レ\イワ」と言っていても、慣れて来たら「平板アクセント」で「レ/イワ」という人が増えて来ると思っています。「昭和」のアクセントも、「ショ/ーワ」「ショ\ーワ」の2種類が『NHK日本語発音アクセント新辞典』に載っています。平成28年(2016)5月に出たこの辞典には、残念ながら「令和」のアクセントは載っていませんが。

実はもう一つ、アクセントの問題があって、それは「レイワ」か「レーワ」か、つまり「二重母音」にするか「長音」にするかという問題なのですが、これはよっぽど気を付けて聞かないと気付かないし、最初は「レイ」と「二重母音」で言っていても、慣れて来ると「レー」と「長音」で伸ばすようになると思います。

いずれにせよ「令和」の時代が進むにつれて、「正解」は表れて来ると思いますが、今回、私が一連の流れの中で感じたことは、「答えを1つだと思っていて、その正解を求める風潮」についてです。

ここでご説明したように、アクセントについても字体についても、答えは「1つ」ではないのですが、質問をしてくる人たちは、「答えは1つしかない。どちらかが正解で、どちらかが間違い」と思い込んでいるように思えます。

こういった「白か黒か」という2分論は、「便宜上、とりあえず白か黒かに分けるもの」ですが、実は、その白と黒に挟まれたほとんどの部分は、「グレー」です。「限りなく白に近いグレー」もあれば「限りなく黒に近いグレー」もあるのです。「グラデ―ション」ですね。だから、「どちらとも言えない」という寛容さ・ゆとりを持った答えもあると思うのですが、どうも最近は、「どちらか1つしかない」という不寛容な考え方が主流のようです。

「令和」が「不寛容=イントレランス」な時代に、ならなければいいのですが・・・。
(文:道浦 俊彦)

【執筆者プロフィール】
道浦 俊彦(みちうら・としひこ)
1961年三重県生まれ。1984年読売テレビにアナウンサーとして入社。現在は報道局専門部長で『情報ライブ ミヤネ屋』でテロップや原稿のチェックを担当するかたわら、98年から日本新聞協会新聞用語懇談会委員。著書に『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)、『スープのさめない距離~辞書に載らない言い回し56』(小学館)、『最新!平成ことば事情』(ぎょうせい)など。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)では2006年版から「日本語事情」の項目を執筆している。読売テレビのホームページ上でブログ「新・ことば事情」「道浦俊彦の読書日記」を連載中。趣味は男声合唱、読書、テニス、サッカー、飲酒(ワイン他)など。スペイン好き。
読みテレ 公式SNSアカウント
この記事を共有する