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放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

今、テレビはドキュメンタリーが面白い! のはナゼか?

鈴木しげき 2019.07.14

私はテレビの企画構成を生業にしているのですが、ときどき依頼を受けて制作会社やクリエーターの学校で企画講義のようなことをします。
その際に若手クリエーターの企画書をたくさん見せていただくことがあって、ここ数年、彼らの企画にこんな傾向があるように感じています。

「最近の若手ディレクターはドキュメント志向の人が増えたなあ」

昔はドキュメンタリーって一番不人気だったような気がします。男子はだいたい笑えるバラエティー、女子はドラマ、そんな感じでした。
ところが今は“アンテナ感度いいです”系の若者こそがドキュメンタリーに興味を示す。

確かに各局で話題のドキュメンタリーは多い。『プロフェッショナル 仕事の流儀』『ドキュメント72時間』『情熱大陸』『ザ・ノンフィクション』『ノーナレ』『のぞき見ドキュメント 100カメ』『空港ピアノ・駅ピアノ』……etc。
これらの番組はいずれも“ながら見”に向きません。見る時はそれなりにしっかりと見なきゃ楽しめない。心の中で「へぇ」とか「おぉ!」とか「あは(笑)」なんて思いながら観ているはず。要は引き込まれているわけです。
テレビのディレクターに従事している、または志望している人たちは当然テレビが好きですから、テレビ鑑賞している時に引き込まれ率の高いものに魅かれるのは理解できます。
今のバラエティーや情報番組ではあまりそんな体験はできないのかもしれませんね。
それでドキュメント志向になっているのかも。

ドキュメンタリーの強みが異彩に映る今のテレビ

今のゴールデン・プライムタイム(テレビ視聴における午後7時から午後11時まで)は、ほとんどがバラエティー、ドラマ、ニュースなどで埋められています。
バラエティーは娯楽系だろうが情報系だろうが、画面の中は文字だらけ。ナレーションも丁寧で、一人でも多くの人に観てもらおうと涙ぐましい工夫を凝らしています。
そんな中、ドキュメンタリーの分野はちょっと違います。やりすぎとも思える丁寧演出とは逆方向に向かっているものすらあります。
ナレーションがないとか、画面の文字は最低限とか、妙な間を残すとか。
ドラマも画面の情報量が増える傾向にある中、ドキュメンタリーだけはまだ画が語る雄弁さをじっくり感じてもらおうという気概があるのかもしれません。ま、リアリティーの強みってやつですかね。持っちゃう。
視聴者としては、感じ取ろうと自らの感覚を起動させたぶん、心への刺さり方は鋭角的になるわけです。だから、感性の鋭い若者たちはドキュメント志向に走るのかもしれませんね。

テレビに過激さは求めてないが、予定調和はイヤ

ちょっとタレントさんの話をさせてください。番組をつくる時にタレントさんほど重宝する人たちはいません。なにせテレビの作法が身についている方たちですから、制作者がなにかを強調させたい時は「えぇッ!?」や「うわぁ!」とかリアクションしてくれますし、盛り上げたい時は気の利いた発言でその場を沸かせる、なんてことができちゃうわけです。こんなありがたい存在はない。彼らの頭の回転の速さはスゴイ。ですからタレントさんを起用すれば、番組は、まあ面白くはなります。
が、今の視聴者はこれに慣れている(笑)。

ところが、ドキュメンタリーは取材対象がタレントになることもありますが、今の流行りはクリエーター、フリーランサー、起業家、企業の会社員、そして一般の人たちです。彼らを追いかけるドキュメンタリーにはタレントのようなおさまりのよさはなく、そこにリアリティーを感じます。

昔、お笑い芸人が世の中のセンスを一変させたり、ミュージシャンが古い価値をなぎ倒してその中からスターが生まれたように、今は一般の社会から若者が憧れるスターが出ている印象でしょうか。堀江貴文さんとかそんな人たちです。

こんな人たちもテレビに出る時は、テレビの作法を身につけながら出ていると思うのですが、やはりタレントさんと違うのは発言がときどき予定調和から外れていく点です。「だってこうでしょ!」なんてことを言うわけです(もちろん時と場所は選んでると思いますが)。
テレビはそういう瞬間こそ視聴者の耳目を集めますから、今の時代、芸能人より自由で面白い存在に映るのかもしれません(あと、学びの対象になってるのかなぁ?)。いろんな意味でドキュメント的な存在とでも言いましょうか(あいまいな言い方……笑)。ハミ出すからリアリティーを感じられる。そんなふうに思います。

テレビをドキュメント的な視点で見てみよう

最近ある調査で「好きなテレビのジャンル」を聞いたものがありました。結果は、ドキュメンタリーがニュースに次いで第2位。ドラマ、バラエティー、スポーツを押さえて堂々の第2位です。が、これは視聴率と比例した結果ではありません。実際のドキュメンタリー番組は決して視聴率が高いわけではないのです。
ところが、観た人には刺さっている。観た後に残るものがある。だから上記のような結果が出るのでしょうね。

そもそもテレビは大なり小なりドキュメント要素が入るものです。そしてそんなものが実際にウケている。高齢者を中心に支持されている『ポツンと一軒家』はほぼドキュメンタリーですし、女子を中心に人気の『幸せ!ボンビーガール』も東京の物件探しドキュメンタリーです。

日本中を笑わせている『踊る!さんま御殿!!』も、お笑い大怪獣・明石家さんまさんが笑いに挑む姿を追ったドキュメンタリーという見方もできます。あの番組、最初に御殿の主人部屋からトークスタジオに向かっていくさんまさんの様子が映りますよね。「当御殿の主人、明石家さんまです!」とか言われながら。あの時、歩いているさんまさんがだんだん本気の顔になっていく。あれ、ドキュメント的演出です。さり気なくオンになる瞬間を見せている。
そして番組の最後。トークが終わると、さんまさんは主人部屋に戻り、ノドを潤すため飲み物をゴクリと飲む(あの瞬間のさんまさんがカッコイイ!)。オフになっていく瞬間を見せています。
すごくドキュメント的な見せ方をしていますよね。さんまさんの仕事人としての真摯さを伝える効果がありそうです。

もうちょっと視聴者に任せてもいいかも……

テレビからコント番組が減って久しいですが、お笑い芸人がコントのネタで競い合い、優勝を決める大会が毎年開催されています。このイベントはテレビ番組の企画でもあります。
これなど、完全にドキュメント。スタジオで繰り広げられるドキュメントです。
出場する芸人たちの真剣さ、熱量、そして面白さを視聴者は感じ取ろうと観ている。
ちょっと前のお笑いバラエティーがやりすぎ、悪ふざけと批判されがちだったのに対し、この手のお笑いコンテストは真剣勝負のドキュメントとして視聴者からの関心は大きい。リアリティーがあり、好感が持てるのでしょうね。

ドキュメント的な見方ができるというのは、余計な飾りを取ったリアルをボンッと置いている状態と言えます。そのぶん、視聴者は自らの感覚を発動させようとする。
今のテレビ、わかりやすく丁寧になりがちですが、一方でもうちょっと視聴者に任せてもいいのかもしれません。そんな番組の方がテレビ体験としては新鮮なようです。

【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。
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