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道浦俊彦のことばのことばかり【9】

イランの大統領は『ロウハニ』か?『ロハニ』か?

道浦俊彦 2019.06.18

安倍首相が、日本の総理大臣としては福田赳夫元首相以来「41年ぶり」に、6月12日からイランを訪問しました。現地では、ロウハニ大統領をはじめハメネイ師にも会いました。

41年前…1978年(昭和53年)と言うと、私は高校2年生でした。イラン革命の頃、「ホメイニ師」という名前を初めて知って、「『師』って何やねん?」と思っていましたね。そういえば先日、元・キャンディーズの伊藤蘭さんが、やはり「41年ぶり」にコンサートを開いたと。キャンディーズ解散の年でもありました、1978年は、そんな年でした。それ以来かあ。

さて、このイランの大統領の名前を、テレビでは、日本テレビやNHK・TBS・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京も、
「ロウハニ大統領」
とお伝えしていますが、新聞は
(毎日・日経・産経)=「ロウハニ大統領」
(読売・朝日)   =「ロハニ大統領」
と2つに分かれています。

つまり、なぜか読売新聞と朝日新聞だけ「『ウ』が入る」のですね。
グーグル検索では(6月12日)、
「ロウハニ大統領」=6万9900件
「ロハニ大統領」 =  4000件
と圧倒的に「ロウハニ」でした。

「ロイター通信」も、「ロウハニ」でした。でも「ウィキペディア」は、「ロウハーニー」
でした。「ハリポタ」のヒロイン「ハーマイオニー」みたいです。

「朝日新聞」は「紙」のほうの夕刊の記事では、「ロハニ」だったのに、ネットの「朝日新聞DIGITAL」では、自社の記事ではなく「ロイター通信」の記事を載せているために、「ロウハニ」
でした。こんなこともあるの?「ロイター」の記事を載せる時には「朝日新聞」の編集権が及ばないということなんでしょうけどね。「朝日新聞DIGITAL」でも自社記事は、「ロハニ」でした。なんで「ロイター通信」の記事を載せたのだろう?

いずれにせよ、同じ人物のカタカナ表記が異なると「別人」に思えてしまうので、困りますね。似たような例は、もう20年前のことになりますが、プーチン大統領が登場した時にもありました。2000年1月1日(元日)の朝刊、エリツィン大統領辞任を受け、後継として大統領代行に指名されたのは、当時首相だったプーチン氏。当時の報道を見ると「プーチン」「プチン」両方の表記がありました。

新聞だと
(読売・毎日)=「プーチン」
(朝日・産経・日経)=「プチン」
放送局も確認できた中では、
(NHK)=「プーチン」
(日本テレビ・テレビ朝日)=「プチン」
で報じていました。

ロシアの大統領は頻繁にニュースに登場するから、近々表記の統一が問題になるのではないか?と思っていたら、2000年1月末に、それまで「プチン」としてきた共同通信と朝日新聞が「プーチン」に変えました。さらに2000年2月10日に私が確認したところ、日本経済新聞と産経新聞も「プチン」から「プーチン」に変えていたため、全国紙は全部「プーチン」に統一されました。

イランは、ロシアほど頻繁にニュースに出て来ないので、統一されるかどうかは微妙でしょうね。同じ中東(サウジアラビアですが)出身の、あの「ビンラディン」も、「ビンラーディン」と統一されないままでしたしね。

(文:道浦 俊彦)

【執筆者プロフィール】
道浦 俊彦(みちうら・としひこ)
1961年三重県生まれ。1984年読売テレビにアナウンサーとして入社。現在は報道局専門部長で『情報ライブ ミヤネ屋』でテロップや原稿のチェックを担当するかたわら、98年から日本新聞協会新聞用語懇談会委員。著書に『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)、『スープのさめない距離~辞書に載らない言い回し56』(小学館)、『最新!平成ことば事情』(ぎょうせい)など。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)では2006年版から「日本語事情」の項目を執筆している。読売テレビのホームページ上でブログ「新・ことば事情」「道浦俊彦の読書日記」を連載中。趣味は男声合唱、読書、テニス、サッカー、飲酒(ワイン他)など。スペイン好き。
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