関西若手芸人の登竜門 『第7回ytv漫才新人賞決定戦』今年の勝者は「霜降り明星」に!

2018.02.28

前身はそうそうたるメンバーが受賞した大レース

2月25日(日)、ナニワの若手お笑い芸人がしのぎを削る賞レース、『漫才Loversスペシャル 第7回ytv漫才新人賞決定戦』が開催&放送された。17年7月~18年1月にかけ、3回にわたる厳しい予選を勝ち抜いた6組が出場し、関西一"おもろい"若手の称号と賞金100万円を手に入れるべく、読売テレビの特設スタジオで激闘を繰り広げた。

参加資格は「関西で活動する芸歴10年目までの若手芸人」。開幕前、決定戦に駒を進めたプリマ旦那の野村尚平は、「地方でこんなに大きな賞レースがあるのは大阪だけ。若手にとっては、ほんまにありがたい。10年目の僕らはラストチャンスなんで、特にがんばらんと。やのに、緊張しすぎて、衣装の靴を忘れちゃって…」と、ポツリとこぼした。
番組MCは東野幸治と岡田結実
初回から皆勤賞で挑んでいる野村でさえも緊張してしまうのにはワケがある。今年で7回目と一見歴史の浅い賞レースだが、前進となる『上方お笑い大賞』では、演芸界初の文化勲章受章者、故・桂米朝を筆頭に、横山やすし・西川きよし、オール阪神・巨人ら、そうそうたるメンバーが大賞を受賞。若手が対象となって以降も、モンスターエンジンや銀シャリら、全国区で活躍する有望株を立て続けに輩出してきた。上方漫才の伝統、DNAを引き継ぐ本賞レースには、若手の登竜門的な枠を超えた重みと大きな価値があるのだ。

予選を勝ち抜いたのは、プリマ旦那に加え、ニッポンの社長、マユリカ、ネイビーズアフロ、霜降り明星、ロングコートダディの6組。ブレイク中のミキが予選で姿を消し、プリマ旦那を除く5組が決定戦初出場であることからも、厳しさとガチンコ加減がはっきりとわかる。第2回の覇者である銀シャリや、『上方お笑い大賞』の大賞を受賞したメッセンジャー、トミーズが舞台を温めたあと、戦いの火蓋が切って落とされた。
SP審査員:オール巨人、ハイヒール・リンゴ、塙宣之(ナイツ)、小籔千豊、木村祐一

フルスイングで魅せた霜降り明星が王者に!

トップバッターは独創的な笑いに定評のある、ニッポンの社長。ヒーローインタビューのインタビュアーに扮した辻の斜め上にエスカレートしていく質問に、すべて「そうですね」とケツが切れ味鋭く返す。果てはナゾナゾに突入する思わぬ展開に、審査員のナイツ・塙宣之も「大好き。100点に近い96点」と高評価。トップバッターの重圧を跳ねのけ、600満点中557点の高得点を叩き出した。
ニッポンの社長
2組目に登場した、クセのある漫才で魅了するマユリカは合格発表ネタで549点を獲得。続く、今回が最後の参戦となるプリマ旦那は、審査員のハイヒール・リンゴに「うますぎて、新人戦じゃないみたい」とツッコまれるなど、ベテラン臭が漂うほどの安定感がアダとなって544点に留まった。最終決戦に進めるのは上位2組のため、プリマ旦那はこの時点で早くも敗退が確定してしまった。
プリマ旦那
4組目には神戸大出身のインテリコンビ、ネイビーズアフロが登場し、ボケ・皆川のイラッとさせるキャラが炸裂する動物園デートネタを披露。初出場ながら予選会で最高得点をマークしたダークホースは、勢いそのままに564点のハイスコアを勝ち取った。
ネイビーズアフロ
昨年、大阪の某賞レースを制したV有力候補の霜降り明星は、地球に降り立った宇宙人ネタで勝負を挑む。司会を務めた東野幸治に「いや~、笑った、笑った」とつぶやかせるなど、前評判通りの実力を見せ付け、578点をマークした。独特のユルい世界観で爆笑を起こしたトリのロングコートダディの得点が伸びなかったため、霜降り明星がトップで、ネイビーズアフロが2位で最終決戦に駒を進めた。
霜降り明星
タイマンとなった最終決戦では、ネイビーズアフロが誕生日デート、霜降り明星が遊園地ネタで、ノーガードの殴り合い。ファーストラウンド同様、舞台上を動き回る音声さん泣かせのせいやのボケを、粗品のツッコミでキレイに落とす理想的なスタイルで、爆笑の渦を巻き起こした霜降り明星が最終決戦も圧倒。栄えある『7代目ytv漫才新人賞』の栄冠を完全勝利でつかみ取った。
放送終了後の優勝会見では、「お笑いを始めた時の目標が大きな賞レースで優勝することだったので、めちゃくちゃうれしいです」(粗品)と、喜びも最高潮に。しかし、「決定戦に出るには手(ネタ)見せと予選会を通過しないといけないんですけど、『M-1グランプリ』の3回戦と『ytv』の手見せに立て続けに落ちた時があって。生駒山(奈良)に登って、景色を眺めながら、もうやめようかと本気で悩んだこともありました。去年も『M-1』の優勝候補とまで言われたのに、準決勝で敗退して地獄を見ましたし」(せいや)と、しんみりと振り返るひと幕も。それでも前を向けたのは、「手見せに落ちたからって芸風を変えるのは違うやろうと。僕はそのへんはあんまりブレなかった」という粗品のポジティブさに救われ、「『ytv』からまたがんばろうと誓い合えた」(せいや)から。「これまでは合わせにいっていたところがあったんで。今回は2人ともフルスイングできたことが優勝に繋がったんだと思います。絶対に取りたかった『ytv』からの『M-1』。順番的にもこれがベスト。大きかったプレッシャーからも解放されて、今はほんまに最高です!」(せいや)。
関西の歴史ある賞レースで確固たる自信を得て、全国区へと羽ばたいていく若手が今年も。審査員の小籔千豊は「ファイナリストの全組がおもしろかった。層の厚さにびっくりしました」、審査員長のオール巨人は「新しい笑いもどんどん出てきてて。まだまだ先が、光が見えましたね」と総括。優勝した霜降り明星の活躍はもちろん、上方漫才のDNAを受け継ぎながら10年、20年と続いていくであろう『ytv漫才新人賞決定戦』の今後にも心底期待したくなる決定戦となった。

【文:兄弟エレキ】


執筆者プロフィール
兄弟エレキ 編集プロダクションの代表兼ライター。情報誌や芸能誌など、紙媒体を中心に執筆。お笑い関係では、ノンスタイル・井上の日めくりカレンダー「毎日ポジティブ」などを手がけている。
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