【特集】テレビの新人さんに聞く “報道記者”とはどんな仕事なの?

2022.02.18

【特集】テレビの新人さんに聞く “報道記者”とはどんな仕事なの?
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メディア環境がめまぐるしく変わる中、テレビもまた大きな変貌の中にいる。そんな今、テレビ局に入社して働く新人さんに話を聞いてみた。テレビ局とはどんな職場なのか? 仕事のやりがいは? なぜ今テレビなのか?

今回、登場してもらったのは、テレビ局の報道局で働く新人さん・神田貴央記者(読売テレビ2021年入社)。就活を控えている学生のみなさんには参考になるような質問もぶつけてみたので、そんな視点で読んでいただいてもいいかと思う。

テレビ局1年生はメディアの変貌に新たな可能性を見出しているようにみえた。

【企画 : 藤生朋子 / 取材 : 鈴木しげき】

――今、テレビ局のどんな部署にいるのですか?

報道局で内政を担当しています。主に大阪府の政治について取材する記者です。番組としては昼のニュースと夕方のニュース『かんさい情報ネットten.』に携わっています。

仕事の内容を簡単にいうと、日々の出来事から何をニュースにするかを決めて、実際に取材して原稿を書いて、それに基づいて画をつないで(=編集)、ニュースにするという流れです。

政治に関する出来事というのは、毎日幅広く起きているので、キャップという指揮を執る人から出された指示に従って取材をしていきます。具体的にいうと、吉村洋文大阪府知事が毎日“囲み取材”として府庁で取材に応じてくださっていますよね。そこへ出かけて、聞けた内容でニュースになるものがあればキャップに報告してニュースにしていく。そんな感じです。

――吉村知事にマイクを向けているマスコミの人たちがいますが、あの中に神田記者がいるんですね。

そうです。あの中のひとりです。昨年4月に入社して、研修を受けて6月に報道局に配属されましたので記者歴は約8ヶ月ですね。

――この仕事のおもしろさは?

吉村知事を取材するだけでなく、府庁で働く方すべてが取材対象なので、いろんな人に会うわけですが、そこで普段は知ることができない府政の裏側にふれることもできます。そこは興味深いですね。

また、職員の方たちがその時々の政策にのっとって、どんな気持ちで働いているのか。そのあたりも直に感じることができます。そういったことはニュースを伝える上で大事なことかなと思っています。

――これまで失敗は?

細かい失敗は挙げたらきりがありませんが(笑)、忘れられないのは松井一郎大阪市長の取材ですね。ご本人は「日本維新の会」の代表もやっておられますが、昨年秋に代表が新しく変わるかもしれないという話がありました。

その時、私が取材で「次は誰がいいですか?」と質問したんです。お考えになられていることを自分なりには想像しながら質問をしたのですが、松井市長から「キミは質問のレベルが低いね」と言われてしまって……。

つい最近まで大学生だった社会人1年目なので、そんなふうに打たれた経験もありませんし、その時はそのまま引き下がってしまったんです。「あー、ダメだ」と思っていたら、後日その受け答えを他局のワイド番組が取り上げまして、フリップでやりとりを再現されて、司会の方から「こんな質問されても市長は答えられないですよねぇ」とネタにされてしまいました……(苦笑)。

ここでの失敗は1回の質問で引き下がってしまったことで、そこは反省すべきポイントだと思っています。質問をぶつける一番の理由は話してほしいことがあるからで、その時は「他にできる人はいないんじゃないか」「またはこの人ならいいんじゃないか」とか、そういうことを引き出したかったのにただ質問してそのまま終わってしまったのは記者として大きな失敗だったと思います。

記者の先輩からは「ちゃんと質問の意図が伝われば、意味のある質問になったのでは」と言われました。「ただ一蹴されるだけの質問にはならなかったはずだ」と。

――アドバイスをもらえたと。

この体験で準備の大切さを痛感しました。こう質問した時に、こう切り返されたら、次はこう問い直すとか。それまではただ聞けば終わりだと思っていましたから(笑)。以降は準備をしっかりやって取材を行っています。

――ところで、なぜ就職にテレビ局を選んだのですか?

大学生の時、コールセンターでアルバイトをしていました。そこは事故を取り扱う自動車保険のコールセンターで、その頃、高齢ドライバーの交通事故をたくさん扱ったんですが、「これだけテレビのニュースで取り上げられているのになぜ一向に事故は減らないのかな?」と疑問に思いました。

ただ高齢者の事故を取り上げるだけでなく、もっと解決に向けた報道というのもあるんじゃないか……そんなことを考えるようになりました。事故を減らすために訴えかけていくような伝え方はないかなぁと。それで報道の仕事を目指すようになりました。

――報道の仕事がしたくてテレビ局を受けたんですね。

はい、就活では新聞社も受けていましたが、テレビ局が第一志望だったので、内定をもらえた読売テレビに入社しました。
入社式のあと、同期入社の仲間と
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入社式のあと、同期入社の仲間と

――今、「若者のテレビ離れ」なんてことも言われたりしていますが、テレビの置かれている状況をどう見ていますか?

確かにいろいろと言われていますけど、個人的には悲観していなくて、コンテンツとして家族みんなで楽しめるのはテレビの良いところだと思っています。報道に関しては、ネットメディアではむずかしい質の部分を維持できるのも良い点だと感じています。

収益についても新しいカタチを模索している最中で、テレビのあり方をみんなで考えながら次に進んでいる状態に期待しています。次は何が生まれるんだろうって。変わりつつあるのがおもしろいと感じていますね。

――テレビ局への就職はものすごい倍率だと聞きますが、面接のコツってあるんですか? 面接のときに高齢ドライバーの話はしました?

はい、話しました。面接官の方からは「やりたいことがすごく明確だね」と言われました。

コツっていうほどのものはよくわかりませんが、大事なのはわかりやすいことかなと思うんですね。ES(エントリーシート)にしろ、話にしろ。面接って学歴が高いとか頭の良さを見せつけるところではなくて、どちらかといえば、むずかしいこともわかりやすく伝えられる。そういうことが大事かなと。とくにテレビは老若男女が見るものですから、テレビ局の面接ではわかりやすく自分というものを伝えることを心がけました。

――なるほど、それは参考になりそう。では、最後に将来テレビでやりたいことを聞かせてください。

最近やりたいことが増えてきまして(笑)。今、最も興味あるのはドキュメンタリー制作です。社会を動かすような。

『こどもホスピス~娘と生きる最期の時間~』というドキュメンタリーがあって、YouTubeにも動画があがっていて、これを見た時は自分のつくっているものとレベルの差を思い知らされました。感動しましたし、こういうのがつくれたらいいなと切実に思いました。

映像って感情に訴えかけるチカラがあるので、視聴者の心を揺さぶるような、そんなドキュメンタリーを追求したいです。それで社会が良い方向に変わるように!
【神田貴央 プロフィール】
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【神田貴央 プロフィール】

読売テレビ報道局の記者。2021年入社。兵庫県出身。 学生時代は大学の学生自治寮の寮長を務め、まとめあげた経験を活かし、読売テレビに入社。6月の配属で希望通りの報道局へ配属され、大阪府政や自治体のコロナ対策、医療現場を取材し、生放送の中継などを行う。去年の第49回衆議院議員総選挙では、大阪選挙区を担当。担当区の情勢取材に奔走した。
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