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通勤も船、買物も船!瀬戸内海に住む人びとは、電車に乗るように船に乗る?!

境治 2020.05.01

通勤も船、買物も船!瀬戸内海に住む人びとは、電車に乗るように船に乗る?!
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船、というと一般的日本人にとっては旅のロマンを感じる、非日常的な乗り物だ。青森から冬景色の津軽海峡を渡る時には演歌が頭の中で流れ、沖縄で離島に渡る時にはハワイアンが聞こえる気がする。普段の通勤ラッシュを遠く離れて乗るのが船である。

ところが瀬戸内海の沿岸に住む人びとにとって船は日常。日ごろから当たり前のように乗るロマンも何もない存在だという。何しろ日本の旅客船の利用者数全国合計9,946万人のうち瀬戸内海の広島・岡山・愛媛・香川県民が3,108万人とおよそ3割を占める。これらの県民にとって船は普段使いの、生活に欠かせない乗り物らしい。
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瀬戸内海を地図で見ると、とにかく島の数が多い。その中に蜘蛛の巣のように張り巡らされた航路が130もあるそうだ。都会の地下鉄の路線より多いぞ。

広島県民のおばちゃんに船に乗るかと聞くと「乗るよ。生活に密着してるから乗るのよ。特別なもんじゃないの。バスに乗るんと一緒よ」とおっしゃるのだ。
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今度はおっちゃんに「船は旅行のイメージでは?」と聞くと、「足、足じゃいうの。」と、こともなげにおっしゃる。「あんたらが電車で会社に通勤すること思えばそれと一緒よ。ここに住んでみい、乗らざるを得んて!」都会に住むと電車や地下鉄に乗らないわけにはいかないが、それと同じだとまで言うのだ。えー?そこまでなの?
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これを確かめるべく、香川県の高松港に行ってみる。そこには通勤電車ならぬ通勤船を待つ人びとがズラーリと並んでいるではないか。船に並ぶと聞くと大きな荷物をカバンに入れた非日常的な旅姿の人びとをイメージするが、いかにも日常的な人びとが並んでいてちょっと変。スーツ姿のいかにもビジネスマンな香川県民の青年に聞くと「小豆島に仕事で月に24回くらい行きますね」と言う。彼はなんと、船の定期券を持っているぞ!
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そこへ待っていた通勤船が到着すると、どどーっと船を降りる人びとによる下船ラッシュが発生!続いて先ほどの待ってた人びとが乗船ラッシュ!乗船して船中の人びとを観察すると、本当に通勤電車同様、重たい顔で書類をチェックする人もいる。船旅ってもう少しウキウキするものじゃないの?
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また広島に戻って港に行くと、やはり通勤船が行き交っている。例えば江田島行きは朝6:30から夜は23:00前まで1日23便もある。やはり船を待つ通勤の人びとがいて、そこへ次々に船が到着!降りる人、乗る人で、港がまるで都会のラッシュアワーのホームみたいになっちゃった。こんな調子で一日中144便もの船が発着するそうだ。
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続いて広島県尾道市では港にいると大量の自転車学生たちがやって来た。ああ、この辺の学生さんたちかなあ、と思って見てるとなんと!全員そのまま船に乗り込んでいく!車に乗ったままフェリーに乗り込むように、自転車のまま船に乗るのだ。尾道水道を挟んだすぐ前にある向島に通学しているのだ。
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そんな風に海になじんで船に日常的に乗る瀬戸内海民には怖い海があるという。え?何がそんなに怖いのさ?と聞くと「日本海はめっちゃ怖かった!」とか「太平洋見たら、これ死ぬなあと思った」などと答える。は?あんなに海に慣れ親しんで暮らしてるのに何が怖いの?
口を揃えて言うのは、波が高い、海が荒い、ということ。
「瀬戸内海は琵琶湖より波静かだから」というのが彼らの言い分。
なるほど、瀬戸の夕凪とよく言うように、本州と四国に挟まれた瀬戸内海は波が荒れることはほとんどない。静かな凪が基本的な姿なのだ。
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優しい海に包まれて暮らす瀬戸内海民は、うらやましい。心穏やかに育ちそうだ。通勤電車より通勤船の方がリラックスできそうだし。船を足にする生活、いいなあ!

【文:境 治】
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