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影山貴彦のウエストサイドTV【14】

テレビよ、今こそ大いなる「のりしろ」となれ!

影山貴彦 2020.04.24

 新型コロナウイルスの影響から、ZOOMをはじめとする、いわゆる「テレビ会議」のシステムを導入する組織・企業が急増しているようです。私の勤務する大学も春学期(前期)の間は、対面の講義を行わないことが先だって決まり、オンライン授業をする教員も増えてきました。

 数日前、教員同士の情報交換を「テレビ会議」で行いました。60分の予定でしたが、気がつけば、たっぷり90分間が過ぎていました。皆さんそれぞれに、リモート授業ならではの工夫や苦労を語り合い、とても有意義な時間でした。

 そこで複数の先生から出たのが、「オンライン授業って、疲れますよね」という言葉です。中には徹夜で日々講義の資料作りをして疲れている先生もいらっしゃるのですが、その疲れとは別に、実は「オンライン」そのものに疲れの原因があるのではないか、と私は漠然と感じ始めていました。教員側が疲れるわけですから、学生たちも間違いなく疲れるのは明白です。親しき同僚の先生が、「毎日メチャメチャしんどいです!」と口にしている学生が結構いると教えてくれました。

 そんなやり取りをしていると、イギリスのBBCがつい先日、興味深いニュースを伝えました。「テレビでの通話は対面で話すよりも集中力が要る」、「相手の意図を読み取るのも難しいため、余分なエネルギーを使う」とするアメリカの研究者が出した分析結果を紹介したのです。そうそう!!と、私は思わず大きく頷いていました。ちなみに、こうした疲れを軽減するには、モニターを少し離れた場所に置いたり、カメラをオフにして音声のみの参加にすることが効果的だとのことです。そういえば、先日のゼミを「テレビ会議」で行った際は、茶目っ気あふれる教え子のひとりが、部屋にあるホワイトタイガーのぬいぐるみをカメラの前に置いて参加し、一同の爆笑を誘っていました。もちろん、ほどなく本人が顔出ししたのですが。こういうのもひとつのアイディアなのでしょう。何事も、発展途上の時には試行錯誤がなされるものです。今は疲れると思っていても、様々な工夫を凝らすことで、やがて疲れをさほど感じなくなるものかもしれません。

 在宅でリモート勤務をしていると、とかくオンとオフの区別がなくなりがちです。本来なら家と会社を移動する間にコンビニに立ち寄り、お気に入りの店の新商品を手に取りつつ、気の合う仲間と上司の悪口を肴に、会社帰りに食事をしたりするのです。そんなとても有意義な、いわば「のりしろ」の時間を今はなかなか持つことができないのです。「ドラえもん」の素晴らしいグッズのひとつ、「どこでもドア」は便利なようでありながら、実際にあると必ずしもいいことばかりではないのかもしれませんね。私たちを人間らしくさせてくれているのは、「のりしろ」でないかとさえ思うのです。

 テレビ、特にエンターテイメント番組の数々は、私たちの生活の中にあって、飛び切り大事な「のりしろ」です。ですが、そのテレビが今ピンチです。山中伸弥教授は、「新型コロナウイルスと戦うのでなく、共存すること」の大切さをテレビで唱えていました。どうやら長期戦を覚悟しなければならない時が来ているようです。これからをみんなで乗り切るためにも、テレビには是非「今」を踏まえた「名番組」を新たに生み出して欲しいと思うのです。再放送、総集編も結構です。もちろんそれもありでしょう。でも、それだけに留まらない新たなるテレビの挑戦を視聴者は心から待っているのです。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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