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「でって まんず はかはかでゅ」という日本人にわからない日本語

境治 2019.06.21

「でって まんず はかはかでゅ」という日本人にわからない日本語
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日本には各地各様の方言があって楽しい。わかりにくい方言としてはよく青森県の津軽弁が登場する。お年寄りの思い切りディープな津軽弁を聞いていると、フランス語にしか聞こえない。だが広い日本には、まだまだわかりにくい方言がある。山形県の庄内地方の方言は津軽弁並み、いやひょっとしたら津軽弁以上に難解かもしれない。津軽弁がフランス語に聞こえるとしたら、庄内弁は人間の言葉と思えないほどだ。大げさかもしれないが、筆者はそれくらいわからなかった。

では例文を見てみよう。

わだば ただばし いしぇこぐはげ でって まんず はかはかでゅ

ほらまったくわからない。わかりにくいを超えて完全にわからない。どこにもヒントがないクイズのようだ。日本語らしさがどこにも感じられないのだ。

庄内の皆さんに解説してもらうことで、この難解な文章が徐々にわかってくる。

まずさいしょの「わ」は二人称、「あなた」の意味だそうだ。筆者の妻は津軽出身で、この話をしたら「ええー?」と驚いた。津軽弁では「わ」は一人称、「わたし」の意味で正反対。日本人の直感としても「わ」はすぐ「わたし」につながるので、どちらかで言えば一人称と思いそうだ。だが庄内弁では「わ」は二人称。ほら、日本語離れしている。

次の「ただばし」は「しょっちゅう・いつも」の意味、「いしぇこぐはげ」は「調子に乗ってるから」の意味だそうだ。ここでも、ただ「お、おう」と言うしかない。「ああ、なるほどねー」とか「言われてみるとそうかー」とか、そういう気持ちはまったく湧かない。他の方言だと、「標準語のあの言葉の変形だな」とか何か納得する要素があるものだが、庄内弁の場合は「そういう意味だというなら、そういう意味なのでしょうね」と黙って受けとめるしかない。
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後半はどうだろう。「でって まんず」は「本当に」という意味だという。いや、ちょっとそれはないなと思う。だって「でって」と「まんず」と二つくらい言葉が重なっている感じだ。庄内人の発音も「でってまんず」とひとかたまりにはなってない気がする。それが「本当に」の意味だというのは、ちょっとざっくりしてないか。どういう文法なのか、まったく見えてこない。

最後の「はかはかでゅ」は「ヒヤヒヤする」の意味だそうだ。これは「はかはか」がヒヤヒヤで、そこに「でゅ」がくっついている。「でゅ」とは「という」が縮まった言葉らしいのだが、縮めるにしてもなぜ「という」が「でゅ」になるというのか。「でゅ」という語尾はどこか日本語のルールを逸脱している気がする。これには妻が、津軽弁の「びょん」だね、と納得していたが、「びょん」だって「でゅ」と同じくらいおかしいからな!
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つまり全体としては「あなたはいつも調子に乗って本当にヒヤヒヤする」との意味になる。庄内の人びとが、そういう意味だというのだから、そうなのだろう。そうなのですね、と言うしかない。
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「はかはかでゅ」は、応用として「まぐまぐでゅ=気持ち悪い」「しこもこでゅ=そわそわする」とかいろいろあるらしいが、応用と言われても「まぐまぐ」も「しこもこ」もおかしな言葉としか思えないので応用しようもない。

やはり庄内弁は津軽弁をはるかに超える難解さだった。とてもじゃないが日本語には思えない。だからと言ってどこの国の言葉とも似ておらず、これはもう宇宙人語のレベルではないだろうか。庄内の人たちはひょっとしてどこか遠い星からやって来たのではないか。そんな思いにかられる「秘密のケンミンSHOW」のケンミン語講座であった。

【文:境 治】
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