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中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【18】

キャラクターと努力の掛け算。アイパー滝沢という生き方。

2020.12.10

キャラクターと努力の掛け算。アイパー滝沢という生き方。
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ハードなルックスからは想像もつかない編み物を腕前を生かし、編み物・手芸系のオファーが相次いでいるアイパー滝沢さん(41)。2005年からお笑いコンビ「えんにち」として活動していましたが、17年に解散後はピン芸人に。今や手芸を取り上げた番組で講師を務めるなどオンリーワンの活動をしていますが、その根底にはキャラクターには不釣り合いな、かわいげと真面目さがありました。

―編み物を始めたきっかけは?

始めたのは7年ほど前でした。5連休が月に4回くらいあるような感じだったんで(笑)、どうしようかなと思って。

いろいろと考える中で、趣味や特技を生かして“釣り芸人”とか“キン肉マン芸人”とかそういう出方もあるなと。そこで、自分はナニ芸人なんだろうと思った時に、これが何もなかったんですよ。じゃ、そこを作ろうと思いまして。

もともとギターはやっていたんですけど、ギターを弾ける芸人さんはたくさんいる。となると、相当うまくないと目立たない。じゃ、ヘタでも何でも“オレがやってるだけで面白いもの”がないかなと。オレのキャラと真逆なものだとか。

そこで考えたのが“ブーケ作り”だったんですけど、調べると、お花代がかなり高くて…。ちょっとしたものを作るだけで何千円もかかる。そうなると、予算的に厳しい。他に何かないかなと考えて、思いついたのが編み物だったんです。

で、百円ショップに行ったら、毛糸や道具がズラリと揃ってたんです。これなら、気楽に始められる。そう思ってスタートしたんです。

―経験ゼロから始めてみて、いかがでしたか?

実際にやってみると、これがね、オレは意外に手先が器用だったみたいで(笑)。結構、うまく作れたんですよね。そして、やってるというだけで、みんながイジってくれるんですよ。

オレの見た目もあいまって、周りの反応がすげぇ良かったんです。「お前、すごいじゃないか」と。キャラクターがきれいにフリになっているというか。

ライブに出た時にも、編んだコースターをMCに勝手にプレゼントしたり(笑)。すると「なんやねん、これ!」とほぼ確実に、そこで笑いが生まれますし。

手ごたえといったら変ですけど、頑張ればリアクションがあると思うと、どんどん楽しくなっていきまして。そうなると、スキルも上がる。スキルが上がれば、もっと凝ったものも作れるようになってウケる。そんなサイクルが生まれて、今日に至るという感じです。

今もそうなんですけど、当初は任侠みたいなオレのキャラクターにで寄せた作品ばっかり作ってたんですよ。言っても、芸人が編んでるものなので、そこに何か笑いがないとオレがやってる意味がないと思って。

オレのイメージからの“チャカ(拳銃)カバー”とか“ドスケース”とか。あとは“釘バット専用釘カバー”も作りました。釘がむき出しだと怖いけど、こうやって釘一本一本にカバーをかぶせたら、持ち運ぶ時も危なくないしかわいいでしょと(笑)。
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―ケンカする時には、一本一本、釘から外してねと(笑)。

そうなんです(笑)。ただ、3~4年前に「キングコング」の西野さんに言われたんです。

「アイパーは編み物をやる時に、ボケてるやん。それは、要らんと思うねん。しっかりした大作というか、ボケずに良いものを編んでいた方が、それが大きなボケになるんやから」

まさに、西野さんは緻密な絵を描いて、すごいものを作り上げて、それが評価されている。芸人がそうやって世間に認められるというのが、壮大なボケであるというか。

実際、編み物を始めた頃に、ボケとかではなく、純粋に「こういうのを見たことがないな」と思って、編み物で日傘を作ったんです。毎年やっている個展でも展示したんですけど、それの評判がすごく良かったんです。

著名なニットデザイナーの広瀬光治さんとトークショーをしたことがあって、その時にも言っていただいたんです。「これを見て、いかにまじめに編み物に取り組んでいるかがよく分かりました」と。

日傘は、技術的にそんな難しいことはやってないんですけど、手間はかかりますし、編み物で日傘を作ろうという考えに意味を感じてもらったみたいでして。西野さんがおっしゃっているのは、この日傘みたいなことなんだろうなと。

―今も編み物関連のお仕事はたくさんされているんですかね?

編み物のワークショップだとか、百貨店の手芸コーナーでのイベントだとかにも呼んでもらってはいます。ただ、ほとんど僕の個人的な繋がりで呼んでもらっている仕事でして。

これが僕の課題なんでしょうけど、発信がうまくできていないのか、所属の吉本興業内で僕が編み物をやっていることが認知されていないという(笑)。

実は、ホビー大賞ユニーク賞という賞ももらっていて、というのがあって、そこでユニーク症をもらってるんですよ。あと、手芸の番組で講師もやらせてもらっているんですけど、それでも吉本内でなかなか認知度が高まらず…でして。

それでいうと吉本興業のマネージャー・中尾さんが10月に立ちあげたYouTubeチャンネル「よしもと中尾班YouTube劇場」がありまして、そこに出してもらっているんです。

毎回4組ほどが出演して、ネタを企画コーナーをやるんですけど、これは社員さんがやっているチャンネルなので“社内視聴率”も高いだろうし、なんとかここをきっかけに、社内の認知を高めたいと思っています(笑)。
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―今後、どのような活動をイメージしていますか?

「編み物といったら、アイパー」。そういう存在にはなりたいですね。もちろん、芸人が中心で、芸人としての一つの武器として編み物もあるわけですけど、編み物をするようになって、自分の枠が広がったことも感じています。だから、なんとか、皆さんに知ってもらえる存在になりたいなと。まず、吉本社内で知られるように頑張ります(笑)。

■取材後記
インタビュー冒頭、編み物を始めたきっかけを尋ねると、何とも照れくさそうな顔でこちらに尋ねてきました。

「オフィシャルな方がいいですかね?ま、オフィシャルといっても、僕が勝手に言ってるだけなんですけど、一応『刑務所にいた時に、刑務作業でやったのが始まり』という答えもあるんですけど…。ま、リアルな方がいいですねよね(笑)」

ややもすると、昨今のコンプライアンスの流れに逆行しているようにも見えるルックスとキャラ設定。しかし、インタビュー時ににじみ出てくるのは、圧倒的なかわいげでした。そして、編み物に向き合う真摯な姿勢。

かわいげと真面目さ。大切なものを兼ね備えているアイパーさん。あとは、本人も重ねて語ったように、認知だけ。

そこが成立すれば、本人が思い描くような未来が確実にやってくると僕は思っています。
執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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