令和元年に聞く テレビのここが好き!ここが嫌い!

2019.10.22

「若者のテレビ離れ」が叫ばれて久しいが、最近はそれに呼応するように、テレビ制作者たちは若者をターゲットにして番組づくりをするようにもなっている。やはり、未来ある若者たちにテレビを楽しんでほしいと各放送局は考えているようだ。

テレビ離れの言葉をやたら耳にするようになった数年前、「テレビのここが好き!ここが嫌い!」というアンケートを取り、記事にしたことがある(→2017年12月19日の記事)。

この頃、視聴者が嫌い! と挙げていたテレビの要素は、いわゆるCMをまたぐ“イライラ演出”や、どれもこれも主婦をターゲットにした番組ばかりといった“かたより”などが主だった。

しかし、テレビというものは視聴者の声につぶさに反応していくもの。多くの人が快く思っていないのなら、そういった演出や番組編成はどんどん変化していく。今、“イライラ演出”は少しずつ減っており、番組も各世代・嗜好性でターゲットを分けて多様性のあるプログラムになりつつある。

テレビは、あなたの声が変えるのだ。

そこで、今回も令和元年版「テレビのここが好き! ここが嫌い!」というアンケートを取ってみた。テレビをもっと身近に、楽しくするためのヒントが隠されているかもしれない。早速、見てみよう。

「テレビのここが嫌い!」マジメな話題とエンタメが混ざりすぎ?

「朝の忙しい時間に芸能人のファッションやトレンド情報をやるのはどうかと思う」(30代・男性)
「生活にあまり影響のない芸能スキャンダルを連日流しても、正直つまらない」(20代・女性)

いつからかニュースでも芸能やトレンド、グルメの話題が取り上げられるようになった。これらに対して、「もっと大切なニュースを流してほしい」という声は多い。元々は幅広い世代にニュースを観てもらおうと始まった流れだが、さすがに「お笑い芸能プロダクションの騒動を1ヶ月以上、報じたのにはうんざりした」(50代・男性)と、バランスを求める声は出ている。

「情報番組にアイドルが担当するお天気コーナーって必要なの?」(40代・女性)
「スポーツ中継に芸能人が応援団長と称して絡んでくるのはやめてほしい」(30代・男性)

専門性のない人が気象情報やスポーツを担当していることに対して、どうなの? というご意見。ニュースのスポーツコーナーで、アスリートにインタビューするのが「女子アナであることは構わないが、勉強不足で腹が立ってくる」(20代・男性)という声もあった。男性アスリートの場合、相手が女性インタビュアーだと口が軽やかになるという効果はあるかもしれないが、聞きたい本質に迫れないのは本末転倒だ。

「コメンテーターが怒りすぎ!」(40代・男性)
「コメンテーターに芸人やアイドルがいてもいいが、司会を含めテレビに映る人数が多すぎる」(50代・女性)
「事実報道以外のコメンテーターの感想が長すぎる」(20代・女性)

ワイドショーのコメンテーターに対する意見は多い。「噛みつくのが自分の役割だと思っているのかもしれないけど、朝からそれを見させられるのはキツイ」(40代・男性)という声だ。しかも、人数が多すぎて「必要な人だけでいい」と感じるようだ。

「お笑いの番組で、漫才やコントの時間よりも、審査員のコメント時間の方が長いのはどうかと思う」(40代・男性)

バラエティでもコメントする側に対して違和感はあるようだ。それより、「若手のお笑い芸人たちに少しでもネタを見せられる時間をつくってあげた方がいい」という意見だ。

じつは今、タレントの仕事の多くは“コメント”することにある。VTRへのコメント、食べ物へのコメント、スタジオで展開されたことへのコメント……決められた時間で、いかにポイントを押さえて伝えるか。これを求められている。

しかし、感想なんてものは人それぞれ。視聴者にとってもそれは同じだろう。同意できないコメントに対して「そういう意見もあるのか」と思うこともあれば、「聞いていられない……」と感じることも多いのかもしれない。芸人やアイドル、俳優らがコメンテーターをするようになり、なおさらそう感じるのかも。

「ゲストが告知ありきの芸能人ばかり。珍しい女優などが出ていると何の告知だろうと思う」(50代・男性)
「女優さん俳優さんが、そんなに面白いことを言えなくても司会者が頑張ってヨイショしてる感じはイヤ」(20代・女性)

テレビ局や制作者の事情が見えたり、出演者の中での配慮が気分の良いものではなかったりするのも、所詮「そっち側の話」で視聴者ファーストではないと感じるようだ。

「テレビのここが好き!」ネットとテレビ、それぞれの良さを認識

続いては「ここが好き!」というポイントを挙げてもらった。

「あまり親しくない人と会話する際、テレビが会話の糸口になったりする」(30代・男性)
「ラグビーの話題で人と話せる。わからないルールを聞き合ったり」(50代・男性)
「ラグビーのルールを解説してくれるのはありがたい」(40代・女性)

職場や学校でラグビー中継の話題がコミュニケーションになっている様子がうかがえた。確かにスポーツ初心者にテレビ解説は役立つし、その上で一体感を味わえるのはテレビの同時性の魅力と言えるだろう。

「楽しみなドラマは1週間が待ち遠しい」(20代・女性)
「ドラマの話題は友達同士で盛り上がれる」(10代・女性)

配信ドラマで1話から最終話まで一気に観られる形式と違い、1週間待つことのメリットをあげる声があった。放送日までテレビがコミュニケーションの話題となり、SNSなどで反響を確認しながら期待を膨らませる。それが楽しみだという。

「世の中のことがだいたいわかる。本当に知りたければ、ネットや本で調べる必要があるが、入口にはなる」(30代・男性)
「軽減税率の説明が分かりやすかった。新聞だけでは頭に入ってこなかった」(40代・男性)
「大型台風の情報は、緊張感があって注意喚起になっていたと思う」(50代・男性)

社会の変化や気象・災害に対して、わかりやすく伝えていく。多くの人に呼びかける。これらはテレビが担わなければならない役割だろう。この部分への信頼は大きいようだ。

「忙しい日常の癒しになる。頭の休憩ができる」(20代・女性)
「好きな芸能人が出ていると、ただただうれしい」(30代・女性)
「歌番組では、好きな歌手の歌うところを生で見られる」(20代・女性)
「一流芸能人がずっと出ているので、つけっぱなしにしていると一人暮らしの部屋が華やかになる」(60代・男性)

テレビの娯楽性に関しては、前回のアンケートでも多くの人が評価していたが、やはり今回も高評価だった。確かにテレビって、そんなへんにいないイケメンや美女が次々に出てくる。そして、テレビに関してこんな声も――。

「全国ニュースで、時々、懐かしい自分の故郷の映像を見ることができる」(30代・男性)
「テレビって季節感がある」(40代・男性)

確かに。案外テレビって日本の叙情的なものを担っているのかもしれない。

多様な社会で、より共通体験を求める声が強まっている…?

今回のアンケート調査から感じられたことは、テレビに共通体験を求める視聴者の姿だ。今やネットをさわる人たちがほとんどの時代となった。我々は、多様な目的や嗜好で欲しい情報にアクセスしている。みんなバラバラでOK! という方向を拡大させているとも言える。

その反動だろうか。テレビには一体感や集団のつながりを求めているように思えた。そのわかりやすい例が、スポーツだ。感動でつながる。一方、多様性に寛容になれなくて自分とは違う意見や考えには、拒否感が生まれてしまう。それがテレビから巻き起こっている現状だ。
テレビは今、その良きバランスを探っている最中だろう。

テレビは、あなたの声で変わる。
2020年東京五輪・パラリンピックでは、多様性と一体感が生む新しい感動を期待したい。あなたもその一員だ。

【文:鈴木 しげき】
執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。
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