人気女優が8人共演!壮大なスケールの創業150周年CM に込められた資生堂のメッセージ

資生堂が今年で創業150周年を迎えた。長い歴史の中で世相や流行を取り入れたテレビCMをたくさん世に送り出している同社だが、その集大成とも呼べそうな作品が、今年1月より公開されている。一番長いバージョンで60秒もある大作だ。

150周年企業広告「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」60秒篇|資生堂

「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」そう題したテレビCMに出演するのは安藤サクラさん、池田エライザさん、石田ゆり子さん、小松菜奈さん、近藤華さん、長澤まさみさん、広瀬すずさん、前田美波里さん (※五十音順)の豪華女優陣。資生堂が彼女たちとともにCMに込めたメッセージの本質とは、どんなところにあるのか?その想いについて、株式会社資生堂グローバル広報部グループマネージャー・郷原朋子さんに伺った。

--テレビCMは150年前の資生堂創業当時の風景からはじまり、そこから昭和、平成、令和、そして未来へとつながる演出など、日本のテレビCMの歴史に残る壮大な作品となっています。準備期間や撮影などは、すごく時間がかかったのではないですか?

「制作までは半年以上にわたり、どのようなCMにするかという論議を重ねました。企画決定からは約4週間で撮影し、その後2~3週間ですべて完成していますが、このスケジュールは通常のCMとそれほど変わりません。制作にかかわるすべてのスタッフがスピード感を持って参加することで実現したと感じています」

--撮影時に一番苦労したことはどんな点でしたか?

「各シーンの時代設定を忠実に再現することですね。特に衣装や小道具に関しては古い文献を調べたり、資生堂資料館で細かいディテールまで確認する作業が大変でした」

石田ゆり子さんが資生堂創業当時に銀座を歩く女性の様子を再現。ヘアスタイルも、明治初期に既婚女性の髪形として一般的だった丸髷を結っている。
via ©ytv
--作品の流れは150年前から時系列で展開されるのではなく、過去と現在が行ったり来たりする演出になっていますね。

「どんな時代でも幸福を願い、前を向く人たちを150年の間ずっと、資生堂はビューティとイノベーションの力で応援してきました。その幸せを願う人々の想いは、時代を自在に超えてつながっていく。そんな願いを込めた演出になっています」

--時代を超えて……といえば、出演陣の中では前田美波里さんが18歳のころに出演した1966年の資生堂サマー・キャンペーン広告「太陽に愛されよう」を56年越しにオマージュしています。資生堂にとって前田美波里さんとはどのような存在なのでしょうか?

「当社は生涯を通じて一人ひとりの健康美を実現する『PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY(パーソナルビューティーウェルネスカンパニー) 』をビジョンとして掲げています。前田美波里さんに出演いただいた1966年のサマー・キャンペーンは、小麦色の肌の美しさという新しい価値観を提案して健康を女性美の中心に据えた、現在のビジョンの先駆けともいえます。
そして、今なお自信に満ち溢れた若々しく、年齢を超えた美しさを持つ前田美波里さんは、当社が目指す多様な美を体現くださっている方です」

1966年の資生堂サマー・キャンペーン広告をオマージュしつつ、バージョンアップを意識。前田美波里さんが砂浜で寝そべっている姿勢から立ち上がる一連のアクションを取り入れ、生涯にわたって美を進化させ続ける姿勢を表現。
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--もうひとつ、1982年のテレビCM『い・け・な・いルージュマジック 資生堂 ルア リップカラークリエイター』のオマージュを、安藤サクラさんが演じています。こちらのテレビCMも資生堂にとっては特別だったのですか?

「『資生堂 ルア』は当時の女性が求めるすっきりとしたモダンな感性や、調和の取れた美しさを体現したメイクアップブランドです。中心商品だった『ルア リップカラークリエイター』はパレット型で、自由な組み合わせでメイクすることができる商品でした。色も塗り方も自分の思いのままにできる楽しさや美しさを『口紅マジック』というプロモーションタイトルに込めています。
このプロモーションと連動した忌野清志郎さんと坂本龍一さんによるCMソング『い・け・な・い ルージュマジック』も当時大変話題となり、数ある当社のテレビCMの中でも印象深いCMのひとつです」

安藤サクラさん出演のこのシーンは「い・け・な・いルージュマジック 資生堂 ルア リップカラークリエイター」のオマージュ。メイクは80年代の特徴でもある太眉がポイント。
via ©ytv
--撮影時、監督が「その時代を生きいきと生活する人々を歌に乗せて表現してほしい」と、それぞれ出演者の裁量に任せたオーダーをしたと伺いしました。具体的にはどんな表現がありましたか?

「安藤サクラさんがオープンカーで片手を突き上げるポーズをしていますが、これはご自身の提案です。前田美波里さんが砂浜の上で踊るシーンも、前田さんがアイデアを盛り込みながらの撮影となっています。
石田ゆり子さんはウインクしていますが、実はもともと馬車に乗って微笑むだけの予定でした。これは監督が現場でカメラに向かったウインクをする演技を思いついて、すぐに石田さんも取り入れてくれました。おかげでとてもチャーミングなカットになったと思います」

--SNSではこちらのCMについて「資生堂にしか作れない素晴らしいCM!」など、かなりの反響があったようです。反響については狙い通りでしたか?

「コンセプトである『美しさとは、人のしあわせを願うこと。』をキーメッセージに、お客さま一人ひとりの生涯にわたる幸せに貢献する企業であり続けたいという、創業以来変わらない想いに共感するお声をいただけました。また、CMに出演いただいた方々が表現してくださっている多様の美についても、それぞれに好意的なコメントを多数頂戴し、とてもありがたく思っています」

【取材・文 高山 惠】