【グッと!地球便】妻子を日本に残し、メキシコでボクシングトレーナーとしてスラムの子どもたちのために奮闘する夫へ届ける家族の想い
2024.06.10
メキシコでボクシングトレーナーとして奮闘する渡邊大将(だいち)さん(32)へ、大阪府の母・尚美さん(60)、妻・千絵さん(39)、息子・眞羽くん(10カ月)が届けたおもいとは―。
「ボクシングチャンピオンの聖地」で、プロを目指すスラムの子どもたちを無償で指導
大将さんの拠点は、首都・メキシコシティ。住まいは武者修行に来たボクサーや格闘家が泊まる日本人専用のペンションで、1年前からここで暮らしながら地元のボクシングジムでトレーナーをしている。さらに現地で「ホセ・メデル杯」という大会を主催。大将さんがメキシコ政府とかけあい、レフェリーの手配や賞品の準備など運営のすべてを担って開催にこぎつけた大会だ。そして2回目となる今年の開催が間もなく迫っていた。
そんな大将さんの妻・千絵さんは一緒にメキシコで暮らしていたが、出産のため1人で帰国。現在は日本で息子・眞羽くんを育てている。また、母の尚美さんは「あまり安全な町ではないと聞いているので、どんな暮らしぶりなのかなって…」とメキシコでの息子の生活を気に掛けている。
ジムがあるテピートという町は、これまで数々の世界王者を生み出した「ボクシングチャンピオンの聖地」。だが一方でメキシコ最大のスラム街としても知られ、治安が悪く危険なエリアでもある。大将さんが働く「マラカナジム」は、そんなテピートのど真ん中にある政府管理の施設。数多くのチャンピオンや殿堂入りのボクサーを輩出した名ジムであり、現在は22歳から6歳まで約30人がプロを目指している。練習生のほとんどは、テピートに住むスラムの子どもたち。どの家も家計が苦しく、家業を手伝いながらジムに通う子が大半で、大将さんが期待をかける17歳のドノバン選手も弟と共に両親の仕事を手伝っている。「みんなこういう町から抜け出して、ボクシングでお金をつかんで、家族を助けたいというモチベーションのために頑張っている。なので力を貸したくなるんですよね」と大将さんは練習生への想いを語る。
18歳でボクシング大国メキシコへ武者修行
大将さんがここまで入れ込む理由は、自身の過去の経歴にある。中学時代から筋金入りの不良少年で、喧嘩を繰り返していた。そして母には大反対されたが、18歳でボクシング大国であるメキシコへ武者修行。日本でプロデビューし、6年間戦うも網膜剥離になり29歳で引退した。結婚後、再びメキシコへ渡りトレーナーの資格を取得。そこで出会ったのがスラムの子どもたちで、大将さんは無償でトレーナーを引き受けている。今は幼い我が子とは遠く離れ、異国の子どもたちのそばにいるという状況。「自分勝手な理由でこっちに来てるから寂しいとは言えないですけど、寂しいですね」と大将さんは本音を漏らす。
迎えたホセ・メデル杯当日。会場のマラカナジムにはメキシコシティのボクシングチームの選手たちと関係者、家族など300人近くが集まった。大将さんはセコンドとしてリング下から声を張り上げる。教え子であるドノバン選手をはじめ、ジムの子ども達も力一杯戦い、最後は大将さんを胴上げ。第2回大会は無事、幕を閉じた。
テピートで孤軍奮闘する夫へ、妻からの届け物は―
徐々にテピートで知られるようになり、地元には欠かせない指導者になりつつある大将さん。スラムの子どもたちのために孤軍奮闘する夫へ、日本で離れて暮らす妻からの届け物は手作りのカレンダー。そこには、日々成長する息子を映した写真がたくさん貼られていた。最後のページにはねぎらいの言葉と共に、「1日も早く、3人で暮らせる環境を作ろう!」「眞羽も私も大将くん大好きです」とのメッセージが。愛を感じる届け物に思わず涙があふれる大将さん。実は「子どもが生まれてから、どうモチベーションを持つのか毎日悩んでいた。だって僕にとっての一番の幸せは家族といることですから。僕は本当の幸せを地球の反対側に置いてきて、どうしようもない環境で戦っているやつらを這い上がらせるためにきつい思いをしていると、何やってるんやろなって…」と告白する。だが妻子の想いに触れ、「今の道を突き進んで、時間がかかると思うけど迎えに行こうと思います」と力強く決意を伝えるのだった。
「ボクシングチャンピオンの聖地」で、プロを目指すスラムの子どもたちを無償で指導
大将さんの拠点は、首都・メキシコシティ。住まいは武者修行に来たボクサーや格闘家が泊まる日本人専用のペンションで、1年前からここで暮らしながら地元のボクシングジムでトレーナーをしている。さらに現地で「ホセ・メデル杯」という大会を主催。大将さんがメキシコ政府とかけあい、レフェリーの手配や賞品の準備など運営のすべてを担って開催にこぎつけた大会だ。そして2回目となる今年の開催が間もなく迫っていた。
そんな大将さんの妻・千絵さんは一緒にメキシコで暮らしていたが、出産のため1人で帰国。現在は日本で息子・眞羽くんを育てている。また、母の尚美さんは「あまり安全な町ではないと聞いているので、どんな暮らしぶりなのかなって…」とメキシコでの息子の生活を気に掛けている。
ジムがあるテピートという町は、これまで数々の世界王者を生み出した「ボクシングチャンピオンの聖地」。だが一方でメキシコ最大のスラム街としても知られ、治安が悪く危険なエリアでもある。大将さんが働く「マラカナジム」は、そんなテピートのど真ん中にある政府管理の施設。数多くのチャンピオンや殿堂入りのボクサーを輩出した名ジムであり、現在は22歳から6歳まで約30人がプロを目指している。練習生のほとんどは、テピートに住むスラムの子どもたち。どの家も家計が苦しく、家業を手伝いながらジムに通う子が大半で、大将さんが期待をかける17歳のドノバン選手も弟と共に両親の仕事を手伝っている。「みんなこういう町から抜け出して、ボクシングでお金をつかんで、家族を助けたいというモチベーションのために頑張っている。なので力を貸したくなるんですよね」と大将さんは練習生への想いを語る。
18歳でボクシング大国メキシコへ武者修行
大将さんがここまで入れ込む理由は、自身の過去の経歴にある。中学時代から筋金入りの不良少年で、喧嘩を繰り返していた。そして母には大反対されたが、18歳でボクシング大国であるメキシコへ武者修行。日本でプロデビューし、6年間戦うも網膜剥離になり29歳で引退した。結婚後、再びメキシコへ渡りトレーナーの資格を取得。そこで出会ったのがスラムの子どもたちで、大将さんは無償でトレーナーを引き受けている。今は幼い我が子とは遠く離れ、異国の子どもたちのそばにいるという状況。「自分勝手な理由でこっちに来てるから寂しいとは言えないですけど、寂しいですね」と大将さんは本音を漏らす。
迎えたホセ・メデル杯当日。会場のマラカナジムにはメキシコシティのボクシングチームの選手たちと関係者、家族など300人近くが集まった。大将さんはセコンドとしてリング下から声を張り上げる。教え子であるドノバン選手をはじめ、ジムの子ども達も力一杯戦い、最後は大将さんを胴上げ。第2回大会は無事、幕を閉じた。
テピートで孤軍奮闘する夫へ、妻からの届け物は―
徐々にテピートで知られるようになり、地元には欠かせない指導者になりつつある大将さん。スラムの子どもたちのために孤軍奮闘する夫へ、日本で離れて暮らす妻からの届け物は手作りのカレンダー。そこには、日々成長する息子を映した写真がたくさん貼られていた。最後のページにはねぎらいの言葉と共に、「1日も早く、3人で暮らせる環境を作ろう!」「眞羽も私も大将くん大好きです」とのメッセージが。愛を感じる届け物に思わず涙があふれる大将さん。実は「子どもが生まれてから、どうモチベーションを持つのか毎日悩んでいた。だって僕にとっての一番の幸せは家族といることですから。僕は本当の幸せを地球の反対側に置いてきて、どうしようもない環境で戦っているやつらを這い上がらせるためにきつい思いをしていると、何やってるんやろなって…」と告白する。だが妻子の想いに触れ、「今の道を突き進んで、時間がかかると思うけど迎えに行こうと思います」と力強く決意を伝えるのだった。
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