陰謀論にハマった人には反論より“共生”するしかない?“デジタルデトックス”が必要かも!

2023.03.10

陰謀論にハマった人には反論より“共生”するしかない?“デジタルデトックス”が必要かも!
©ytv
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3月5日放送の「そこまで言って委員会NP」は、話題の書籍を、著者をスタジオに招いて紹介する好評企画「そこまで読んでブックストア」の第3弾。番組内では4冊の書籍を取り上げたが、中でもタイムリーだったのが物江潤氏(著述家)の『デマ・陰謀論・カルト   スマホという宗教(新潮新書)』。スマホによりあらゆる言論にアクセスできるようになった今、デマや陰謀論、カルト宗教にハマる人が増えている。スマホ上で起きているデマ・陰謀論の拡散や、それを信じる人たちを含めた現象を“スマホ教”と定義し、その異様な状況を分析した本である。安倍元首相銃撃事件や、Qアノン(アメリカの極右勢力が流布した陰謀論とそれを信じる政治運動家たち)が中心となって起こしたアメリカ連邦議会襲撃事件、根拠に乏しい反コロナワクチン運動など、最近起こった社会を騒がす事件を考える上で参考になるテーマが論じられた。

著者である物江氏をスタジオにお招きし、論客たちにこの本の内容に共感できるかできないかを聞くと、論客のほとんどが「共感できる」と回答した。

岡部芳彦氏(ウクライナ研究会 会長・神戸学院大学教授)は「大いに共感できる」とした上で質問する。
「昨年2月24日のウクライナ侵攻以来、私は多くのメディアに出て解説した。すると一部の視聴者から脅迫状や、『さっきの話は間違っている』といった指摘・攻撃がたくさん来た。最初の頃は反論しようと思ったが、(話がまるで通じず)実際には不可能だった。まさにこの本の内容通り。お聞きしたいのは、そういった“いわれなき個人攻撃”に反応をすべきかどうか。」
物江氏は即答。
「まず、反論はダメですし、いわゆる“論破”は論外。指摘・攻撃してきた人が論破されて自分の意見を変えるかと言ったら、多分逆。今度は負けないようにさらにデータを集めて、自分なりのロジックを固めて再戦しようとなる。攻撃相手の考えを変えよう、沈静化させようと思うのなら、反論をするべきではない。」

門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)は「共感できない」と回答。
「物江さんは、著書で極端な例を出しすぎている点があると思う。権力者や大企業にとって都合の悪いことに対して“陰謀論”のレッテルを貼りさえすれば、 権力者らは追及から逃れられる時代が来ている。アメリカでは、陰謀論とされたものが、半年後に事実であったという事例もあるほど。権力者側が、巨悪や不正を隠すために“陰謀論”というレッテル貼りを故意に利用していることもあるのだ。この現象にも言及すれば、もっといい本になったと思う。」
物江氏は率直に受け止めてこう述べる。
「おっしゃる通り、陰謀論とされたものが実は事実だったとわかるケースもある。“スマホ教”の問題は、他者に自分の思想を押し付けてしまうこと。私たちにも他者から理解されない考えや、こだわりが絶対あると思う。それでも共生できているのは、他者にそれを無理やり押し付けたりしないからに尽きる。彼らは彼らであくまで親切心からネット上で、とても重要な事実を見つけたと思いこみ、家族や職場の人にその内容を必死に伝える。その必死さが他者から見れば、脅迫的に感じられたり、理解しがたい内容も多いので、“陰謀論者”として見られてしまう。(良かれと思って伝えているのに)“陰謀論者”扱いされた人は傷ついて居場所を失い、ますますネット上のコミュニティーに沈潜し、現実社会と隔離されていく。今日はこれだけは言いたいと思って来たのだが、そういった人たちと“共生する”ことが、これから大切だと思う。」

山口真由氏(信州大学 特任教授)は「共感できる」としつつ、「陰謀論とそうじゃないものの線引きはどうするのか」と質問。

物江氏は「率直に言って線引きはできないと思う。」とストレートな回答。
「いくら情報リテラシーを高めても、どれが正しくてどれが正しくないのかの判定は難しいし、フェイクニュースを流す側のテクノロジーが上がってきている。判別はできないが、あくまで全部“可能性の問題”だと受け止めるしかない。ある物事がいかに正しく見えても、それは暫定的な正しさでしかない、仮説にすぎないと認識すればいいと思う。」

ここで古舘伊知郎氏(フリーアナウンサー)が興味深いことを言い出した。
「スマホを見ていると、自分の興味に紐づいた情報が次々に出てくるからどんどん深みにハマる。だから、僕は“デジタルデトックス”を絶対やるべきだと思って、時々スマホを置いて見ないようにする。その代わり、普段は見たくないテレビ番組を見る。全然自分の嗜好性に紐づかないから、ぼーっと見て思考停止する。それでもやることなくなったら、読売新聞を手に取ります。」
番組議長・黒木千晶アナが「読売新聞なんですか?」と聞くとすかさず「(読売テレビだから)気をつかっているんですよ。」と答えて真剣に聞いていた全員が爆笑。古舘氏は続ける。
「『編集手帳(読売新聞一面にあるコラム)』には興味なかったりするのだが取りあえず読む。それも読み終わると今度は、広告が目に入ってくる。 仏壇のセールとか。カニの詰め合わせが通常3万8000円のところ1万2000円とか。興味ないんですよ?エーゲ海6泊8日の旅とか。でもそれをぼーっと見ていると、スマホで加熱した自分から離れられる。毒素を抜かないとダメ。」

これに笠井信輔氏(フリーアナウンサー)が、「それは意志が強いから」だと反論。笠井は自分の癌が発覚した時には、気持ちが弱くなり、スマホで調べて、癌が治るという治療法や薬の情報などにすがってしまったといい、「やっかいなのはそういった民間療法的な情報が、“すべてウソというわけではない”ということ。特に高学歴で高収入な人たちが、自分で仕入れた情報を元に、保険外の治療を要望することも多いらしい」と、“スマホ教”にはまるメカニズムを、自身の体験も踏まえて語る。物江氏は「『劇的に治った』というようなエモーショナルな話や、断片的な事実で構成された、(素人にとって)わかりやす過ぎるものは要注意」と警鐘を鳴らした。

その後は、竹田恒泰氏(作家)が古典的陰謀論である“M資金”にまつわる詐欺話をする人に遭遇した話や、大野裕之氏(劇作家)による、売れない俳優がハマったトンデモ陰謀論の話など、笑えるエピソードも展開されているので、ぜひ見逃し配信でご覧いただきたい。

デマや陰謀論にスマホでハマり、そうした考えから抜け出せない人は確かに増えたように思う。これに対して、物江氏が言う「共生」の考え方は重要だと感じた。そして古舘氏推奨の“デジタルデトックス”は、時々やったほうがいいのかもしれないとも感じた。
極めてタイムリーな議論だった。

【文:境治】
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