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人口減少中の島根県で、ものすごく人が集まる石見神楽って何なのそれ?

2018.10.26

人口減少はこれから日本中を襲う大問題。中でも島根県は、すでに大正時代の人口を下回っており、2180年には県民が一人もいなくなり消滅するとまで言われている。

ところが人が少ないはずの島根県の西側、石見地方では毎夜のようにどこにいたんだというくらい人が大勢集まってある催しをするという。それが、石見神楽だ。

神楽って、日本の伝統芸能のひとつであり、他県でもお祭りがあると通りで派手に神輿や山車が練り歩く一方で、神社の小さな舞台でしずしずと舞っている、あれのこと?そうなのだが、そうではない!

我々の知る神楽と、同じといえば同じだが全然違う。なにしろ、派手!大蛇が出てきたり鬼が踊ったり火を吹いたり煙が出たり。大パフォーマンスを繰り広げるのだ。

その独特な面白さは、番組の映像を見てもらうしかない。まず演目が30種類以上あり、いくつもの“社中”と呼ばれるチームが得意演目を持っている。「大蛇(おろち)」はスサノオノミコトがヤマタノオロチを倒す演目、神と鬼が闘う「鍾馗(しょうき)」や「塵輪(じんりん)」、悪狐が出てくる「黒塚」などなどなど。多くは勧善懲悪で、キャラの立った悪役がまた魅力的だ。

神楽というと、お年寄りが楽しんでいるイメージだが、石見神楽は老若男女、誰もが楽しむ芸能だ。鬼や大蛇が客席に乱入し、子どもたちを脅しに来る。小さな子どもだと本気で怖くてトラウマになってしまいそうだ。小学生くらいになると、「大蛇」が好きな演目だなどと、いっちょ前のことを言う。若者たちも神楽が大好き。ヤンキー諸君も暴走したりなどせず、神楽の話で夢中。もちろんどこかの社中に入って演じる側になりたがる。「石見神楽はシルクドソレイユ超えだ」などとちょっと大げさすぎる、威勢のいいことも言う。

神社が本拠地なのは間違いないが、請われればどこへでも行って演じる。スーパーの目玉イベントとして、居酒屋の賑やかしとして、ホテルの宴会で、とにかく呼ばれたところで舞うのだ。そのどこにでも子どもたちが必ずいて、夜遅くなってもワーキャー叫んで楽しんでいる。生活の中に神楽が溶け込んでいる。

島根の将来を我々は心配したが、ひょっとすると全然大丈夫なのかもしれない。だって地域がひとつになれる文化を、年齢関係なく共有しているのだから。いまは少し人口が減ってしまっているかもしれないが、こんなに楽しくて奥深い芸能をみんなで楽しむことができる地域は、住みやすいに決まっている。石見神楽を楽しんでいるうちに、ここで暮らして神楽とともに生きたいと移住してくる人も出てくるんじゃないだろうか。そんな風に人を呼ぶのが、温泉でも特産品でも歴史ある建物でもなく、いま生きている人びとが踊る芸能だというのは、なんて素敵なことだと思う。

とりあえず、行ってみたいぞ島根県。間近で石見神楽を見てみたい。「秘密のケンミンSHOW」に、また知らなかった秘密を教えてもらった!

【文:境 治】
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