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ドラマ解説者・木村隆志氏も「忖度なし」の太鼓判!スペシャルドラマ『天才を育てた女房』の魅力

2018.02.16

昨年11月の放送発表時、「あの岡潔がついにドラマ化される」と聞いて、「早く完パケ(編集が終わり放送できる状態の映像)が見たい」、そう思っていました。これはドラマ解説の仕事をしている特権なのですが、「放送前に1日でも早く見たい」と感じたのです。

岡潔は世界を驚かせた天才数学者で、文化勲章を受章したほか、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹、朝永振一郎の恩師。さらに、ドラマ『ガリレオ』で湯川学(福山雅治)が見せた「突然、道端で石を拾い、数式を書きはじめる」などの行動を本当にやっていた変人ぶりでも知られています。

しかし、単なる偉人伝に留まらず、しっかりエンタメに昇華させるのが日本のドラマ。実話をもとに再構成したストーリーとなっており、「岡潔の偉業を称えつつ、妻・みちにも脚光を当てることで、日本人の琴線にふれる物語にしよう」というのです。

苦しい状況でもほほ笑ましい夫婦像

主なあらすじは、「大正13年夏、小山みち(天海祐希)は大阪で岡潔(佐々木蔵之介)と出会い、互いに特別な思いを抱くようになり結婚。しかし、潔は数学に打ち込むばかりで家計は苦しく、上司の京大教授に逆らうなど、日に日に追い込まれていく。誰からも認められず、苦しい日々が続く中、みちはどのように潔を支えていくのか」という夫婦の物語。
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これを見て、「『ゲゲゲの女房』『マッサン』『わろてんか』とか、朝ドラのような物語?」と思うかもしれませんが、確かに時代背景とドラマの構造は似ています。……というより、朝ドラの題材にできるほど波乱万丈の物語を凝縮した贅沢な2時間ドラマと言えるでしょう。

だからこそ物語のテンポは実に軽快。みちと潔は出会いのシーンから約15分で結婚したほか、留学、出産、戦争などの大きな出来事が次々に起きていきます。しかし、当作が描きたいのは、あくまでも夫婦のキャラクターと絆。みちのエネルギッシュなのに、自然体で軽やかな人柄は「天海さんにピッタリ」であり、潔のどこかかわいらしい奇人変人さは「佐々木さんならでは」と感じさせる説得力がありました。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、夫婦の絆を感じさせるシーンが目白押し。どんな場面でも、みちは潔を「きよっさん」、潔はみちを「みっちゃん」と呼び合うなど、苦しい状況下でもほほ笑ましさを感じさせる夫婦なのです。

美しさと懐かしさが同居した映像美

共演陣も、潔の数少ない親友で彼を支える秋月康夫に生瀬勝久さん、潔の上司にあたる京都大学教授・木下則雅に立川談春さん、天才棋士・阪田三吉に笹野高史さん、阪田の妻・阪田コユウに泉ピン子さん、潔の父・岡寛治に寺田農さん、みちの姉・北村みよしに萬田久子さんなど名優ぞろい。
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前述したように、朝ドラのような世界観を持ちつつ、キャストの面では大河ドラマのような豪華さもあるのです。これらのベテラン俳優たちが要所で、みちや潔に声をかけ、人情物語としての品質を担保。助け合いながら生きていた当時の人々を彷彿させます。

そして、同作を語る上で忘れてはいけないのは、映像の美しさ。大正から昭和にかけての古き良き日本の風景に、やわらかな光と影を描き出した映像には、誰もがノスタルジーを感じる美しさと懐かしさが同居しています。

NHK制作の朝ドラならこの点を追求しておしまいですが、エンタメ性を加えて視聴ターゲット層を広げるのが民放のスタンス。「潔が何かの理論を見つけたとき、黒板や夜空に数式やグラフが浮かび上がる」などの演出が、ファンタジックな美しさを加えていました。

その他、和洋交えたBGM、生瀬勝久さんや内場勝則さんら関西にルーツを持つキャストなど、終始「古風だけど軽妙」な世界観で、2時間がアッという間。放送前ゆえに、やんわりとしか書けませんが、クライマックスシーンで見せた、みちの大胆な行動は感動必至で、天海さんがドラマではひさびさの感情あふれる演技を披露しています。

天才を“育んだ”偉大なる妻の物語

『天才を育てた女房』というタイトルには、「そもそも天才は育てられるものではなく、生まれながらのもの」というツッコミがあるかもしれません。ましてや「妻が大人である夫を育てたの?」と疑問を抱く人もいるでしょう。

しかし、当作には、「みちが潔の天才を“育てた”のではなく“育んだ”のだろう」と思わせる説得力がありました。その点では、もしかしたらNHK大阪放送局の人々は、「しまった!読売テレビに朝ドラのいいネタを取られてしまった」と感じるかもしれません。

夫婦の波乱万丈物語に期待するのはもちろん、共演歴の多い天海さんと佐々木さんの名コンビ目当てで見るもよし、天海さんや泉ピン子さんらが放つ名言にクローズアップするもよし。多彩な見方ができるだけに、「忖度なしでおすすめ」と言い切れる作品です。

【文:木村 隆志】
執筆者プロフィール
木村 隆志 コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(2台での同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
◆番組情報
金曜ロードSHOW! 特別企画
読売テレビ開局60年スペシャルドラマ
『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~』
2月23日(金)よる9時 放送

読売テレビ開局60年スペシャルドラマ 「天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~」予告動画

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