深夜番組『るてんのんてる』 漫才のツッコミ5人をスイッチで切り替え企画がガチで未来のテレビっぽかった!!

2022.05.10

深夜番組『るてんのんてる』 漫才のツッコミ5人をスイッチで切り替え企画がガチで未来のテレビっぽかった!!
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この4月から各テレビ局の深夜番組が果敢なチャレンジをしている。そんな中、フットボールアワーがMCをつとめる深夜番組『るてんのんてる』(読売テレビ・金曜日)が話題だ。25人の若手ディレクターが持ち回りで渾身の企画をフットボールアワーにぶつける番組だ。

今回は、その第1弾を担当した中屋敷亮ディレクターに話を聞いてみた。中屋敷氏は「未来のテレビ実験中」と題して、様々な実験企画を公開。中でも、“漫才のツッコミ5人をスイッチで切り替える”企画がツイッターなどで「凄い! めちゃくちゃオモロイ!」「ツッコミを選べる漫才めっちゃ良かった! 勿論HPで全動画見た〜!」「何回も見れる! このツッコミ変えるやつ」などと好評だ。

彼は未来のテレビをどう描いているのか?

【企画 : 藤生朋子 / 取材 : 鈴木しげき】

――早速、“ツッコミをスイッチで切り替える”企画について。これは、お笑いコンビ・アキナが基本形の漫才を披露する中、MCのフットボールアワー後藤さんが手元のスイッチを押すと、アキナ秋山が、からし蓮根・杉本、天才ピアニスト竹内、プラス・マイナス岩橋、野性爆弾ロッシーに入れ替わるというもの。大変好評でしたが、これはどんな発想から?

中屋敷 : 最近、音楽ライブなどでマルチアングルという技術をよく見かけますよね。ボタンを押したら、自分の好きな映像に切り替えられるというものです。一昨年の『ytv漫才新人賞』でお笑いコンビ・ビスケットブラザーズが優勝した時に、その特番の演出を担当させていただき、その中で“マルチアングル漫才”という企画をやったんです。

いろんな角度から二人の漫才を撮らせてもらって、時には意味のないカットも入れたりして(笑)。それが個人的に手応えを感じまして、なにか応用できないかなとずっと思っていて、今回のツッコミ切り替え企画につながりました。
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ツッコミ漫才イメージ
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ツッコミ漫才イメージ


――なるほど。しかしよくできていますね!

中屋敷 : 僕はツッコミの合いの手ひとつで漫才はガラリと変わると思っているので、そこの違いを表現できるんじゃないかと。いろんなパターンの漫才を楽しんでいただけたら。

――体験したフットボールアワーの後藤さんは「これを課金制にして、多く課金した人にはダウンタウン浜田さんのツッコミが選べるとかしたらヨシモトが食らいつく!」とか言ってましたよね(笑)。もともと、そういった広がりは見込んで?

中屋敷 : いや、そこまでは……(笑)。けど、MCの後藤さんも岩尾さんもさすがで、お二人に企画をぶつけるとそういうところまで広げてくださるのがありがたいですね。

――視聴者が「選べる」という楽しさ。これはテレビの未来の要素だと?

中屋敷 : そうですね。積極的に視聴してもらうためには、そういった要素も必要かと。ずっと、自分で体験する面白さというのをテレビに持ち込めないかと考えていました。そんな中で思いついた企画です。

“ツッコミを選べる漫才”は番組ホームページに載せていますので、ぜひ体験してみてください。本当に芸人さんたちの細かい上手さが味わえます。それぞれのフルバージョンも見応え十分ですから、ぜひ。
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――他にも“コンプラゼッタイ守るマン”という企画もイマドキですね。

中屋敷 : ここ数年、コンプライアンスの影響で「テレビが面白くなくなった」なんて声も聞かれるようになった中で、コンプライアンスを守ることで新たなエンタメが生まれないかと考えていました。

テレビは視聴者に向けて届けていますから、視聴者の声に耳を傾けるべきですし、いろんな意見がある以上、コンプライアンスを皮肉るわけではなく、むしろ前向きな時代の流れと捉えて、正義のヒーロードラマに仕上げてみました。あと、ドラマに挑戦してみたかったというのもありますね。
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――やはり、テレビ制作者として悩ましい現状は感じている?

中屋敷 : 最近は、テレビ業界で番組を評価するものさしが視聴率だけでなく、いろんな指標ではかるようになりつつあります。

特にキー局では、そういった影響で若手のチャレンジ枠やコント番組などが増えてきたと思うのですが、読売テレビは比較的に長寿番組が多く、情報番組も充実しているほうで、どうしても若手制作者のチャレンジが難しいのかなと感じる面がありました。

そんな中、今回の『るてんのんてる』の枠を設けてもらって、この番組は今までのように視聴率だけにこだわらなくていいと言われているんです。

――では、この番組は何を指標に?

中屋敷 : ひとつは民放公式テレビ配信サービスTVerやytv MyDo!での再生回数ですね。こういうものはいきなり伸びるわけではないので、じわじわと積み重ねていければなぁと思っています。

あとは個人的に、視聴者の記憶に残ることですね。“ツッコミを選べる漫才”ですと、「番組ホームページで何パターンも試した」とか「何十回も見ました」とか言ってくださる方が多かったりして、そういうのはとてもうれしいですね。まずは、ディレクターが表現したいものを作ることが大事かと。そうでなきゃ視聴者の方々に刺さらないと思います。

――フットボールアワーは若手ディレクターたちの企画にどう向き合っていますか?
収録風景
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収録風景


中屋敷 : 若い頃からテレビの世界で百戦錬磨の方なので、作り手の気持ちをよく分かっていらっしゃるなと感じます。腹を割って話してくださるので、時には「ここの演出はやりすぎちゃうか!?」とかもあります(笑)。企画に対してガチの意見を言ってくださるので、そこは他の番組にはない魅力になっているのかなと。

後藤さんはしっかり突っ込んでくれますし、岩尾さんはポジティブな発想で前向きにつつみこんでくれます。おかげで、ディレクターも思いっきりバットが振れます。お二人に見せたい! というのがモチベーションになりますから。

――読売テレビは伝統的に深夜枠で尖っている印象がありますよね?

中屋敷 : 入社したての頃は、上司との飲み会でよく『11PM』や『EXテレビ』(編集部注: いずれも伝説の深夜番組です)など昔、担当していた番組の話を聞きましたね。

今回、僕も自由な枠をやらせてもらうにあたり、ライブラリーで当時の深夜番組を改めて見返しましたが、自由にやっている印象はもちろんですが、それ以上に作り手の芯のようなものを強く感じました。

――中屋敷ディレクターの個人的な感想として、昔の読売テレビ深夜枠で印象的だったもの、衝撃的だったものって?

中屋敷 : 大先輩の方が担当した『EXテレビ』で「低俗の限界」という企画がありまして、これなどはとんでもないなと思いましたね(笑)。上岡龍太郎さんと島田紳助さんがフツーにトークしているのですが、まぁスゴイです。

その企画に限ったことではありませんが、先輩たちの番組を観ていると、我々はこういうものがやりたいんだ!っていう芯の部分があって、それがちゃんとエンタメに昇華されているんです。そういうところを見習って今回、僕も挑戦させていただきました。

――最後にテレビの未来はどうなっていくと思いますか? また、どうなっていきたいですか?

中屋敷 : 今回、『るてんのんてる』の第1回で若い人たちに街頭インタビューしました。その中で「好きな番組やコンテンツを自由に楽しみたいのに、テレビはなぜその時間しかやってないの?」という、リアルタイム視聴に対してネガティブな声がありました。

ちょうどリアルタイム配信がはじまったりして、地上波とネットの区別もなくなりつつある方向も見えてきましたが、テレビにはふたつの方向があるように思います。ひとつは、やはりリアルタイムで見るもの。報道やスポーツ、バラエティーで言えば『M-1グランプリ』などのイベント性の高いもの。これらはみんなで見て楽しみたいですよね。ふたつめは、視聴者の方が自ら探して選んで見る番組、そういった方向もあると思います。これはNetflixやYouTube……すべてのコンテンツと競争するカタチになりますね。

“ツッコミを選べる漫才”などはテレビ発で、他にも拡張していけるのではと期待しているのですが、そういったテレビ発のものを選んでもらえるように僕ら制作者は頑張りたいと思います。
【中屋敷亮 プロフィール】
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【中屋敷亮 プロフィール】

読売テレビのディレクター・プロデューサー。2014年入社。担当番組は『あさパラS』『漫才Lovers』『ytv漫才新人賞』『平成紅梅亭』『黄金列伝』『るてんのんてる』など。
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