竹中平蔵VSそこまで言って委員会論客 白熱討論! 「ベーシックインカムに正義はあるか」!?

2023.02.16

竹中平蔵VSそこまで言って委員会論客 白熱討論! 「ベーシックインカムに正義はあるか」!?
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2月12日放送の「そこまで言って委員会NP」は様々な話題について「正義か、正義ではないか」を議論した。最後の話題は『ベーシックインカム』。全ての国民に対して、無条件で最低限の生活ができるように、現金を給付する制度で、究極のセーフティネットとして世界で議論になってきた。まだ実現した国はない(フィンランドでは2017年から2018年に実証実験を実施)が、竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)はかねてから『所得制限付きベーシックインカム』構想(国民全員に給付金を支給しつつ、マイナンバーと連携し、所得が一定額以上の人は後ほど返還する)を掲げ、日本での制度化を唱えている。そこで番組では、「ベーシックインカムは正義かどうか」を議論したのだが、当然のごとく竹中氏と他の論客たちが対決する構図になった。

番組議長・黒木千晶アナも「こんなに竹中さんのことをコケにする番組もない。」と茶化してみせたが、当の竹中氏は「みんな私の本を読んでないという証明ですね。」と余裕を見せる。

唯一「正義」と回答したRaMu氏(タレント)はこう主張。
「若者の“○○離れ”を、物欲がない、趣味がないと大人は言うが、そもそもお金がないから物欲が生まれないだけ。例えば月に10万円確実にもらえるのであれば、生活に余裕が持てる。自分に投資もできるし、資格を取ったり趣味に使ったりもできる。お金がもらえるからといって、仕事をしなくていいという思考に一概にはならないと思う。」
RaMu氏以外のパネリストは「正義ではない」と回答。
山口真由氏(信州大学特任教授)も批判する。
「イソップ童話の『アリとキリギリス』はどうなるのか。ベーシックインカムが導入されれば、真面目な人がアリのように汗水流して働いて、キリギリスのような人にお金を送り続けるのが正義だということになる。」
竹中氏は時代の変化を訴える。
「極端な例として、『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.Kローリング氏を挙げたい。彼女は『ハリー・ポッター』を、生活保護をもらいながら書いたという。それが結果的に世界最大級のエンターテインメントになった。アーティストの活動は、“仕事”なのか?それとも“趣味”なのか?線引きが難しい。しかし現実には働かざるを得ない人が多いので、そういう人に対して分配の正義を実現するのが、ベーシックインカムの形なんです。」ベーシックインカムによる若者やアーティストへの支援が、結果的に大きな国益をもたらす可能性があるということだろう。
しかし、萱野稔人氏(哲学者・津田塾大学総合政策学部教授)は強く批判する。
「今の話にだまされちゃダメだ。所得制限をする限り、ベーシックインカムとは言えない。制限を設けず一律に、生活に最低限必要なお金を給付する制度がベーシックインカム。この制度の狙いは、年金や生活保護などの社会保障の予算を整理し、削減していくところにある。広く薄く配るのがベーシックインカムなので、本当に困っている人たちに集中的に給付ができない。すると多くの人が結局損をするのではないか」
竹中氏は落ち着いて反論。
「本当に必要な人にだけ、お金を出す方が絶対に効率的なのは確かだ。だが、そんなことは現実的にできない。政府が国民一人一人に対して、どのぐらい困っているか、働く意思があるかなどを把握することはできない。学習院大学の鈴木亘教授がある試算をした。配偶者控除と扶養者控除をなくすだけで約50兆円削減でき、基礎年金給付の国庫負担分の約23兆円も不要になる。他の不要になるものも足し合わせると99兆円ぐらいの財源が確保でき、1人あたり7万円ほどは給付できる。7万円で最低限の生活はできないが、少しベーシックインカム的なことをやって、実験も重ねて、100年がかりで制度を作っていくというふうにしたら良い。」

豊田真由子氏(元厚労省・元衆議院議員)は「そんなにいい制度ならどこか他の国が導入しているのでは?」と疑問を呈しつつ、現状の社会保険制度を擁護する。
「ベーシックインカム推進論者は、医療保険や雇用保険の廃止も主張している。社会保険は、大勢でリスクをシェアすることで、万が一の時に少ない保険料でたくさんの給付をもらえる、人類が作り出した素晴らしく有効な仕組み。これをぶった切って現金給付に移行をすると、その額面通りの効果しか得られない。現在、都市部で14万円ぐらいもらえている生活保護がもし7万円になったとしたら、貧困は解決しない。」ベーシックインカムには、実現可能性も制度のメリットも感じられないという。

竹田恒泰氏(作家)は別の切り口で懸念を述べる。
「日本人と欧米人は労働に関する価値観が全然違う。旧約聖書ではアダムとイブが“禁断の実”を食べてしまい“罰”を受ける。欧米では労働とは、神から与えられた罰なのだ。他方、日本では『古事記』を読むと、天照大神が機織り小屋を経営している。神様が働いてるんですよ。全然違う。働かなくてもお金をもらえることが、日本人の労働観をどう変えてしまうのかわからない。」

黒木アナが最後にまた野村アナに振る。
「皆さん正義ではないとおっしゃっている中で、野村明大政策秘書の答えを見ましょう。」
野村アナが示した画面には「竹中正義」とある。
「高中正義(ギタリスト)みたいになったが、竹中先生のお話はいつもストンと腑に落ちるので、朝の番組(朝生ワイド す・またん!)で私は分かりやすく解説をしようと試みるのだが、実際にやってみるとうまくいかない。」
せっかくの野村アナの竹中氏擁護の話だったのに、竹中氏は「うまく解説できない理由は簡単。勉強不足。」となぜか野村アナをディスって終わった。

竹中氏の考えへの個人的な感想は置いておいても、このベーシックインカムという制度については、議論する意義があると思うが、皆さんはどうだろう。
本気で貧困問題を解決するには、これくらい大胆な施策を検討しないといけない気もするのだが・・・。

【文:境治】
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