「おめげのしゃでがつくったとーみぎ」という、外国語ではなく茨城弁

2018.06.22

もしあなたが誰かに「おめげのしゃでがつくったとーみぎ、いしけーからかっぽっぺよ」と言われたらどう思うだろうか?きっと日本語ではないようだが何語だろうと謎に思うだろう。だがこれも立派な日本語、ただし茨城弁である。

6月21日放送の「秘密のケンミンSHOW」では「ケンミン語講座」で茨城弁を学んだ。そのテキストが上記の文章だ。もちろん、他県民にはまったく意味がわからない。これを畑仕事をする年配夫婦に聞くと「これ標準語だっぺ?」と冗談か本気かわからないことを言いつつ解説してくれた。
「おめ」とは「おまえ」のこと、と言われるとなるほどと思うが、「げ=家」だというのは予想外だった。つまり「おめげ」とは「おまえの家の」という意味だ。

「しゃで」とは「弟」のことで、「舎弟」の訛った読み方。えー?「舎弟」ってその筋の人の言葉でしょ?と思ってしまうが、そもそもは血の繋がった弟のことだったようだ。

そして「とーみぎ」とは「とうもろこし」のこと。なるほど「とうきび」が訛ったのだろう。

前半をつなげると「おまえの家の弟が作ったとうもろこし」と言っていることがわかる。

後半は水戸駅にいたヤング茨城レディーたちに教わる。彼女たちにとってはごく普通の茨城弁らしい。方言をお年寄りしか使わない県もあるが、ここでは若い世代の間でも茨城弁が現役なのだ。

「いしけー」とは「いしこい=出来が悪い」ということ。この言葉は「かなり良くない」ことに使うものだそうで、物に使うと「ボロボロ・故障している」人に使うと「しょうもない・ブサイク」といった意味になる。なんだか、とっても悪い言葉みたい。

「かっぽっぺよ」は動詞「かっぽる」が変化したもので、「捨てる」の意味。「かっぽっぺよ」だと「捨てようよ」の意味になるわけだ。

ディレクターが茨城レディーたちに「お姉さん方、最近何をかっぽりました?」と聞くと「男でしょ」と即答して「ひゃーっはっは」と高笑い。「やべえこれぜってー会社にバレる」と言いつつ陽気で楽しそうだ。

というわけで後半は「出来が悪いから捨てようよ」と言っているのがわかった。

もう一度全体を見てみよう。
「おめげのしゃでがつくったとーみぎ、いしけーからかっぽっぺよ」
その意味は・・・
「おまえの家の弟が作ったとうもろこし、出来が悪いから捨てようよ」ということだ。
説明されるとなるほど、とわかる。最初まったくわからなかったのに日本の方言は不思議だ。
スタジオでは茨城出身のデーブ大久保が解説してくれた。
「東京から実家まで124kmで帰れるんですよ。なんでこんなに違うんですかね?茨城県民からしたらこんなコーナーにしちゃっていいんですかってくらい普通ですから」と言うので一同爆笑。

確かに茨城って東京のすぐ近くなのにここまで言葉が違うのは不思議な気がする。それに老若男女みんなが普通に茨城弁を使っているのも楽しい。そして他県の知らない方言を学ぶのは面白い。日本はこんなに豊かな文化を持つのだなとあらためて認識させられた。

【文:境 治】
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