多発する自然災害にキャスターたちはどう向き合う?「情報ライブ ミヤネ屋」宮根誠司・蓬莱大介に聞く

2019.12.02

多発する自然災害にキャスターたちはどう向き合う?「情報ライブ ミヤネ屋」宮根誠司・蓬莱大介に聞く
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近年、世界中で想像をはるかに超える自然災害が続いています。
今年も、強い勢力を保った台風が次々と猛威を振るい、日本各地に甚大な被害をもたらしました。また、地震も各地で頻繁に起こり、南海トラフ地震や首都圏を襲う直下型地震など未曽有の災害が、いつ起こっても不思議ではない状況です。

平日午後帯の生放送「情報ライブミヤネ屋」でも、これまで多くの自然災害を報じてきました。同番組のメインキャスターを13年間務める宮根誠司さんと、天気情報をわかりやすく伝える、気象予報士で防災士でもある蓬莱大介さん。台風や地震など多発する自然災害を前に、お二人はどう向き合っているのか、お聞きしました。

なお、このインタビューは、大型台風が相次いだ直前、10月初旬に行われたものです。

(取材/文:中野純子 企画構成:藤生朋子)
――大型台風による被害はもちろん、地震だと近年では熊本地震がありましたし、北海道胆振東部地震、大阪府北部地震など、大きな被害が出る自然災害が相次いでいます。
宮根誠司氏(以下M):『ミヤネ屋』は放送が始まって13年になりますが、自然災害が年々増えています。僕たちは今、「50年に一度」「経験したことのない」と呼ばれるような災害を、年に何度も経験しています。蓬莱さんと一緒に災害への注意喚起をお伝えしていますが、想像を超える大きな被害が続いていますね。

蓬莱大介(以下H):それは感じますね。各地で大きな被害が出ています。東京からの全国放送だと、関東で起きた災害は大々的に報じますが、地域によっては大きく報じない場合もあります。でも『ミヤネ屋』は、大阪から全国放送しているので、北海道でも東北でも関東でも九州でも沖縄でも、報じるトーンは基本的に同じ。特に危険が迫っている時は、どの地域の災害でも時間を多く取って報じますよね。
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M:それ、めちゃくちゃ大事なことです。
H:宮根さんは、番組の中で天気情報をいつも大切にしようとしてくれますよね。気象情報の尺が10分の予定だったとしても、大型台風が近づいていたりすると、本番直前のメイク室で話すんです。「今回の台風は危険です」って、時間にすると2、3分。でもその時、宮根さんが僕の思いを感じ取ってくれて、あえて二人で気象情報の尺を伸ばして丁寧に報じることがあります。それはすごくありがたいですね。

M:被災地へ取材に行かせていただき、現状を目の当たりにしてきていますので特にそういう気持ちは強いです。自然災害は人命に関わるので、時間を割いて、丁寧に伝えていくのはとても大切なこと。「皆さんに注意していただけるよう、しっかりお伝えしよう」と心がけていますね。
――「予想できる台風」と、「予想できない地震」で、報じ方に違いはあるのでしょうか?
M:とても難しいですね。台風でも、想定を超える被害が起きていますから。ということは、これからも僕たちが想像できない大きな台風が来る可能性があるということです。地震の場合も、僕らが報じることが全てではないこともあります。南海トラフ地震の可能性も言われていますが、実際に地震が来た時、我々の想定がすべて当てはまるのか?一人でも多くの命を救えるのか?それは正直、誰にもわからないこと。だからこそ日々、様々なことへの備えが必要だと感じます。
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H:気象予報士の立場からお話すると、地震は不意打ちですが台風は上陸時期が予想できますので、段階を踏んで伝え方を選んでいます。例えば上陸前日ですと「家から出ないでください」と警戒を促す強い言葉を使いますが、3日前ならば、窓ガラスの補強やベランダの片付けといった、今から備えられる防災情報をスタジオの皆さんでトークするとか。その日に効果的な注意喚起は何なのか、僕だけではなく、宮根さんもコメンテーターも含めて、皆さんと一体になって掛け合いしながら伝えているという感じです。

M:NHKさんと民放の違いは、スタジオで掛け合いしていることだと思うんです。民放ならではのわかりやすい災害情報の伝え方は意識していますね。僕の中では、テレビをご覧になっている皆さんと同じ目線で、なおかつ軽易でわかりやすく。あえて専門用語を使わず、体感的に、というのは意識しています。

H:僕は皆さんの質問を受ける側なので、けっこう大変で(笑)。掛け合いにもちろん台本はないですし、特に宮根さんは、大阪のおばちゃんのような感じで聞いてこられるから(笑)。何でも答えられるように普段から勉強していますが、それでも予想を超える質問がくることがあるので…。

M:「わからんかったら、その場で調べて!」って言いますね(笑)。素朴な疑問は、フレキシブルに対応した方がいいかなと。
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H: でも普段から、こうした掛け合いをすることで「何を聞かれても答えられるようにしておこう」とすごく準備するようになりました。災害報道を突然2時間やると決まっても、日頃から鍛えていただいているおかげで動じなくなりましたね。でも、そうなれたのもここ数年のことで…。『ミヤネ屋』を担当して最初の5年は、ホンマに大変でした…。

M:初めて聞いた!(笑)それは優しさでもあるんですよ。僕は蓬莱大介をスターにしたいんです。スターになるというのは、視聴者の方々の信頼を獲得するということ。「誰かのお天気」じゃなくて「“蓬莱さん”のお天気」と言ってもらえるようになることが大事だと思っています。

H:それは本当にありがたいです。そのことを知るまでは「なんでそんなこと聞くんやろ…」と思ってました(笑)。

M:でもね、気象予報士の仕事って本当に大変だと思うんです。日本だけではなく、世界中の異常気象を見ていて、つくづくそう感じます。地球温暖化も進んでいますし、気象予報士の勉強には終わりがないですね。
――これからの災害報道、『ミヤネ屋』はどのような姿勢で伝えていきますか?
M:まずは今起こっていることを、最大限お伝えする、ということ。そしてもう一つは、『ミヤネ屋』はくだけたこともやっていますが、いざという時はしっかり情報を伝える、常に頼りにされる番組でありたいです。

H:やはり、僕も「視聴者の皆さんのために」という思いです。生放送中、危険な台風が近づいている時に、スタッフが「次のコーナーへ」というカンペを出したとしても、さらに時間を割いてもらうことがあるんです。でも宮根さんもスタッフもそれを受け止めてくれるので、本当に信頼しています。
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M:『ミヤネ屋』は本当にそういう番組で、そうなるために視聴者の皆さんの日常に溶け込んだ“おなじみさん”でないといけないと思うんです。被災地へ取材に行かせていただいた時に、僕をはじめ、蓬莱さんやリポーターが、被災地の方に「よく来てくれた」「今の状況を伝えてほしい」と言ってもらえる信頼感は絶対に失っちゃいけない。それが、『ミヤネ屋』の責任じゃないかなと僕は思っています。
【書籍紹介】

『空がおしえてくれること』(幻冬舎)
蓬莱大介 著
1400円+税
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蓬莱さんが、約2年の歳月を費やして書き上げた1冊。
気象予報士になって10年、毎日天気のことばかり考えている蓬莱さんが、
空や自然をどうおもしろがっているのか、最近の異常気象について思うこと、そしてテレビでは言えないような裏側も!? コミカルに綴られた蓬莱さんの本音をぜひ!
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