他県民には全然わからん?!戦車までデコる、名古屋市民の金シャチ愛!

2017.11.27

金鯱(シャチ)と言えば、名古屋城のてっぺんに飾られた金色のシャチホコで、名古屋市民が熱烈に愛している街のシンボルだ。ということを知ってはいたが、11月23日に放送された『秘密のケンミンSHOW』の2時間スペシャルであらためてその熱愛ぶりを見ると、他県民の理解を大きく飛び越えていてどうしたらいいかわからなくなってしまった。

映像にでてくる名古屋の街は、ほんとうにシャチホコだらけ。タクシーにバス、鉄道にもマンホールにも、あちこちにシャチのマークが伝染病のように広がっている。何の思い入れもない他県民からすると、呆れるばかりだ。

そしてこの時まで知らなかったのだが、名古屋のJリーグチーム「名古屋グランパスエイト」のグランパスとはシャチのことだ。キャラクターはパンダ状のイルカかと思ったらシャチだという。えー!そうだったのか!

若鯱屋というカレーうどんのチェーン店があり、人気メニューはエビフライを金シャチ状に盛った金シャチカレーうどん。明治安田生命・名古屋東支社には金鯱営業部(きんこえいぎょうぶ)という信じられない名称の部署があり、全国屈指の実績だという。「ここに来ると決まった時には武者震いするといいます」と紹介してくれるのだが、震えるのは別の意味ではないだろうか。

さらに名古屋市内の某所で見つけたのは株式会社シャチラインと株式会社シャチという、Wシャチカンパニー。どういう発想かじっくり聞いてみたい。そしてそして、ハンコメーカーとして超一流企業の株式会社シャチハタは名古屋が本社で、“鯱の旗印”が名前の由来だと知ると、頭の中で何かが崩れ落ちる音がした。

そこまで好きか、大好きなのか、シャチホコが。でもやっぱり、好きだからっていくらなんでもそこまでやるか、というレポートが続いてだんだん途方に暮れてくる。

極め付けは、自衛隊。陸上自衛隊守口駐屯地に行くと、門柱にも建物にも制服にも鯱がいる。それを誇らしげに語る隊員達にはもう何も言えない。そしてなんと!戦車の砲台に金シャチがデコられているのを見てしまうと、もう白旗を揚げるしかない。降参だ!この際名古屋中をシャチで埋め尽くすなりなんなりしてください。

ぼう然として見ていると番組はスタジオに戻り、今回初出演のプロ棋士“ひふみん”こと加藤一二三が愛知県ネタをフォローしたいのか・・・
「藤井聡太は瀬戸市出身の愛知県民ですからね、これから彼は名人にもなる秀才ですからね・・・」と言い出すので、藤井聡太にもシャチホコがらみのネタがあるのかと思ったら
「いちおう藤井聡太さんのことも紹介しておきました」と終わってしまい、何が言いたかったかよくわからなかった。

名古屋市民のシャチホコ愛は最後まで他県民には理解できないものだったが、どこの県民にもその県なりの熱愛アイテムはあるものだ。そしてそれらもシャチホコ同様、他県民にはよくわからない。そういう、理屈にはならない愛を生むのが県民性なのだろう。それがまた「県民」という文化の奥の深さである。『ケンミンSHOW』が十周年を迎えてなおネタがつきそうにないのも、その奥の深さに 支えられているからだと言えそうだ。
【文:境 治】
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