『ブラックリベンジ』でドラマ初監修!元・週刊文春エース記者の中村竜太郎氏に聞く(前編)

2017.11.06

週刊誌の編集部を舞台に、スキャンダルをめぐる復讐劇を描く連続ドラマ『ブラックリベンジ』(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜23:59〜)。このドラマの監修を務めているのが、元『週刊文春』記者の中村竜太郎氏だ。

最近はテレビの情報番組でもお馴染みだが、中村氏は約20年間、『週刊文春』の記者として活躍。これまで「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞を3回、同賞のスクープ賞を2回、企画賞を1回受賞するなど、数々のスクープをモノにしてきた。

そんな中村氏が監修するドラマ『ブラックリベンジ』は、木村多江演じる今宮沙織が、ねつ造スキャンダルで自殺に追い込まれた夫の無念を晴らすため、週刊誌記者となって今度はスキャンダルで夫を陥れた者たちに復讐していくストーリー。“ゲス”発言を連発する登場人物と、衝撃的かつ先の読めない展開がネットを中心に大きな話題を呼んでいる。

今回「読みテレ」では、中村氏にインタビュー取材ができる機会を得た。そこで、ドラマ『ブラックリベンジ』の話とともに、週刊誌が連発するスクープ報道の裏側について聞いてみた。
読みテレ : 今回、ドラマ初監修ですね。話が来たときはすんなり引き受けようと?

中村竜太郎(以下、中村) : そうですね。読売テレビの福田浩之プロデューサーから話をいただいた時は、単純に面白いなっていうのがありました。時代的にアップトゥデートな話題って気がしたので、これはぜひ関わりたいと思いましたね。

読みテレ : 確かに旬な題材ですよね。

中村 : ベッキーさんの話題以降、“文春砲”と騒がれ注目されていたこともあるんですけど、それ以前から、週刊誌という媒体の特色として、大手メディアが報じないこと、新聞やテレビが取りこぼしていることや(事情があって)書けないことがすごく増えてきていて、そんな中で唯一(思いきって)できるっていうのが週刊誌なんですよ。

読みテレ : ええ。

中村 : これまで世間的な見方っていうのは、私もよく現場で言われたんですけど、「週刊誌の書いてることはデタラメでしょ?」とか「嘘ばっかり書いてるんだ」っていうのがイメージとしてあったと思うんです。けど、きちんと取材をして、それが社会的な影響力を及ぼすっていうことが徐々に(世の中で)積み上がっていって、週刊誌が世間を動かすスクープを出してるってことがようやく認知され始めた。

読みテレ : それはもうしっかりと。

中村 : ここ数年、「ちゃんと取材してるんだ」って世間の人たちはわかってきたんですよね。

読みテレ : 福田プロデューサーにお聞きしますが、中村さんに監修をお願いしようと思ったのはなぜですか?

福田プロデューサー : 以前に、僕が読売テレビの『クギズケ!』という時事ネタを扱う情報番組を担当することになったのですが、それまでずっとドラマをやっていたので、あまりワイドショーとかスキャンダルみたいなものって縁がなかったんですよ。スキャンダルって、例えば有名人が不倫しているのを読者が見て面白がる、そういうものだと思っていたんですね。けど、改めて番組を担当した時に、その裏にネタ元がいて、ネタ元はその情報を記者に提供するのが一つの復讐の手段としてやっていると知って、すごく今っぽくて面白いなと。それがまずきっかけです。

読みテレ : その番組に中村さんは出演されていたんですね。では、具体的に「監修」とはどういうことをされるんですか?

中村 : プロデューサーと脚本家の方がお話をされて、台本を組み立てていくわけですけども、私が読んで「記者たちはこの言葉遣いは普通しませんよ」と指摘したり、あとはセットですね。編集部のセットを組むときに「この感じは違います。もっと散らかってますよ」とか。
「ブラックリベンジ」福田浩之プロデューサー(左)と中村竜太郎氏
読みテレ : あの「週刊星流」編集部のシーンの雰囲気は、中村さんの経験が生かされているんですね。ところで 『文春』時代の中村さんはとても忙しかったそうですね。

中村 : ええ。子供の運動会に行ってるときも、突然ネタ元の人から呼び出しがあったり。記念日にレストランへ行っても原稿が仕上がらなくて、その場で書いててデザートの時にやっと終わったり、そんなことはありましたね。

読みテレ : スクープをとるために張り込みってするんですか?

中村 : 『文春』の場合はそこまで張り込んだりとかは……。最近は(他では)多いようですけれど、私はそこまでしないですね。

読みテレ : ではなぜ中村さんはそんなにスクープがとれるんですか?

中村 :自分では自覚はないですよ。結果としてジャーナリズム賞など、いろいろとらせていただきましたけども、そうですね……人脈を増やすとか人付き合いをマメにするとか、そういうことだと思いますね。私と知り合った人って、私がどういう仕事をしているか知っているわけですし、そこからおもしろい話があれば「こんな話あるから聞いてくれない?」と、つながっていく。

読みテレ : 今、SNSで情報が氾濫していますよね。タレコミみたいなものは多いんですか?

中村 : 私、古い世代なんで苦手なんですよ。SNSでネタをとってきてスクープしたことはまずないんです。

読みテレ : そうなんですか!?

中村 : ええ。(SNSが)得意な人はいいと思うんですよ、インスタグラムとかTwitterとか。私も独立してからビジネスツールとして始めるようになりましたけど、基本は対面でお会いすることでしか信じてないので。

読みテレ : 対面で会うと。

中村 : ネタを集めるのであれば、だいたいキーパーソンみたいな人がいたりしますね。「政治ネタだったらこの人が詳しそうだな」とか。『文春』の場合は、あらゆるジャンル……政治、経済、スポーツ、芸能、社会ネタ、皇室、全部まんべんなくやってるんです。ですから、例えば選挙のネタで、あの選挙区に関してだったらあの人が詳しそうだっていうネタ元を持ってるんです。で、その人に聞く。「今こういう状況ですよ」とベーシックな情報は教えてもらって、そこから自分の中で「こういう切り口で行ったらスクープになるんじゃないか」と見つける。あとは、取材に行って、そこからまた新たな真相を知る人に接触できたり。運よく聞けたら、それがスクープに繋がることはありますね。

読みテレ : 人と人とが繋がっていくことでスクープに近づいていくって感じなんですね。

中村 : SNSのツールも発信しているのは人間ですからね。裏をとるとなったら、ネタ元の人にたどり着かない限りは聞けないですし。「ネットにこういうことが書かれてありました」って言って、それが間違ってたら訴えられてアウトです。自分自身の信頼性にも関わってきますし、ひいては雑誌全体、出版社全体の名誉も著しく棄損することになるわけですからね。


週刊誌に情報提供する人にはさまざまな目的があるだろう。それがたとえ復讐だとしても、そこに信頼が築かれていないと“確かな情報”にはならないと中村さんは考えているようだ。ドラマ『ブラックリベンジ』はあくまでフィクションだが、随所に中村さんの実体験が反映されている。今後のドラマの展開にも注目だ。

<※このインタビューは後編につづきます>

【構成:牛窪 梨花】
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